脱衣ゲームでカップル成立 ~史上最強の淫魔、光堕ちしてキューピッドになる~

平良野アロウ

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第六章

第215話 愛の天使、キューピッドのルシファー

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 綿環高校の調理室。刃が領域にいる間殆ど一人でお菓子を作り続けていた凛華は、やっと刃が戻ってきてくれたことに安堵していた。

「あっ、星影君! それに佐奈も?」

 扉を開けた刃の隣に佐奈がいたことに、凛華は首を傾げる。

「凛華。実はねー、私星影君と付き合うことにしたんだー」
「え、そうなの? 念願の初彼氏じゃん」
「というわけで、私もお菓子作り手伝わせてもらうねー」

 そう言って佐奈は調理室に常備されている貸しエプロンを着け始める。

「三鷹さんなら俺と違って戦力になりそうだな。あ、星影君おめでとう」

 凛華の手伝いには来たもののやれることが碌になくて殆ど見ているだけだった龍之介がそう言った。刃は照れくさそうに薄ら笑いを浮かべて頭を掻く。

「大丈夫、龍之介君が見ててくれるだけでいつも以上に気合いが入るんだから。いてくれて感謝してるよ」
「そ、そっか」

 いつもストレートに好意を伝えてくる凛華に、龍之介はたじろぐばかりであった。
 その様子を見ていた佐奈は人差し指を下唇に当てて小首を傾げると、刃の方に顔を向ける。

「もしかして星影君も、私が見ててあげると気合い入るのかな?」
「えっ、あ、そうだね! 俺もそうだよ!」

 あざと可愛く話を振られて、気取ったことは何も言えず裏返った声でとりあえず肯定するのみ。これが陰キャの限界である。

「よーし、それじゃあ頑張ろう!」
「あ、うん。俺が抜けてた分の遅れも取り戻さないとね」
「ファイトだよ星影君!」

 佐奈の応援で刃は百人力。これでもうお菓子作りは万全だ。


 一方で、メイド&執事喫茶への改装も大詰めに入った二年B組の教室では。

「というわけで、俺ら付き合うことになったから」

 付き合って早々馴れ馴れしくも宏美の肩に腕を回し、純一はクラスの皆に交際を発表。同級生一同から拍手で祝福を受けた。

「どうなることかとハラハラしてたけど、やっとかよお前」
「それについては返す言葉も無い……」

 大地にどつかれて気まずそうにする純一を、宏美は軽く小突く。
 一方で美奈は、笑顔でサムズアップ。

「おめでとう宏美。ほんと良かったよ。あたしも安心した」
「ごめんね心配かけさせて。ほら、あたし達のことはこのくらいにして作業戻ろ」

 流石にこうして大々的に祝われるのには気恥ずかしさを感じて、宏美は皆に作業復帰を促した。
 するとそこで気になることを呟いた男が一人。チャラ男の大山寺茂徳である。

「そういや桃井が本宮を好きになったって話はどうなったよ?」

 空気を壊す発言にその場は一瞬凍り付いたが、そこは美奈がすかさずフォロー。

「純一を妬かせたかったんでしょ? そのくらいわかるよ」

 そう言って宏美の顔を見ると、美奈の意図を受け取った宏美は頷いた。

「でもそれはそれで利用された本宮が不憫なような……」

 一点、注目を浴びたのは隅っこで響子と二人作業を続けていた茂である。
 純一と宏美が注目を浴びているのをいいことに自分達は何か報告するでもなくいたわけだが、こうなってはちゃんと言うしかない。

「あー、それは気にしないでいいよ。結果的にそれで僕も響子と付き合うことができたわけだし……」
「え、マジ!? こっちもカップル成立!?」

 先程佐奈も教室を出て行く前に刃との交際を発表していたため、これで本日三組目が発表されたことになる。

「当日ならともかく前日にこんだけできるとは……随分仕事してるな例のキューピッド」

 そう言ったのは同じくルシファーにカップル成立させてもらった一人である代々木当真。この成立ラッシュからそう推測していたのは、彼に限らなかった。
 そしてその例のキューピッドはといえば。



 瞼を上げたルシファーの瞳に映るのは、白い天井。ここが学校の保健室であることは、すぐに気が付いた。
 いつの間にかルシファーは保健室のベッドに寝かされていたようであった。

 ふと、下半身に違和感を覚えた。下着の中に手を入れて、陰部に付着した液体を人差し指に取る。色は透明、少なくとも精液ではない。
 それをとりあえず口に含んでみると、ルシファーのよく知る味だった。唾液と愛液が混ざっており、いずれもリリムのものだ。ルシファーの回復のために好意に及んでいたと見える。
 だがそこで一つ疑問が浮かんだ。上背があって体重もそれ相応にあるルシファーを、リリムの腕力ではベッドの上まで持ち上げるのは不可能だ。一体誰が、と考えた拍子。

「気が付かれましたか」

 カーテンが開き、男子生徒から声をかけられた。ルシファー以上の長身を持つこの男は二階堂篤、二年B組の保健委員だ。
 ルシファーは咄嗟に、掌を自身の頬に当てた。若さ溢れる肌つや。黒羽崇ではない、ルシファーの姿のままだ。

「キューピッドのルシファーさん、ですよね」
「……君が私をここまで運んだのですか?」
「はい。貴方が倒れているのを同級生の恋咲が見つけて、保健委員の俺が運び寝かせました。貴方がここで寝ていることは、俺と恋咲しか知りません」
「そうですか。助かりました。運んで頂いたことも、秘密にして頂いたことも」
「いえ、構いませんよ。こちらこそ、その節はどうもありがとうございました。もしも貴方と会うことがなければ、きっと今もひなとはただの幼馴染のままだったと思います」
「お役に立てて何よりです。では私はすべきことがありますのでこれで。私のことは何卒秘密のままでお願いしますよ」

 会話を早々に切り上げてルシファーが姿を消すと、篤はびっくり仰天していた。
 尤も、ルシファーはただ人間から姿を見えなくしただけである。その状態で壁をすり抜けて、こっそり保健室を出て行った。向かった先は、リリムのいる被服室である。
 リリムは一人黙々と、制作を続けていた。既に大半の衣装は出来上がっており、作業は大詰めに入っていた。

「おいリリム」
「あっ先生! よかった、目が覚めたんだ!」
「お陰様でこうして空も飛べるようにまで回復したわけだが、ところで」
「だいじょーぶだよ。二階堂君は口堅いし、先生のこと言いふらしたりしないと思うよ」
「二階堂のことは俺も信頼している。それよりもだ」
「あ、二階堂君のいる時にはえっちしてないよ? 席外した隙にこっそりと」
「……保健室のベッドでそういう行為をすることについては、非常事態故に目を瞑ろう。お前はこのまま作業を続けていてくれ。俺は暫くここで休んでいる」

 ルシファーは手近にあった椅子に腰を下ろし、いつになくだらけた姿勢をとりながらリリムの作業を見学した。
 衣装職人としてのリリムは、ルシファーも一目置くほど。普段のおちゃらけた様子は見られず、机に向かう姿は真剣そのものだ。
 そんな彼女も同級生が様子を見に来ればいつものフレンドリーな様子に早変わりし、キャピキャピした調子で軽く話しつつ出来上がった衣装を手渡していく。その微笑ましい光景を、ルシファーは静かに見守っていた。



 全ての衣装が完成したら、ルシファーは黒羽崇の姿となり衣装の入った段ボール箱を抱えて何事もなかったかのように被服室から出てきた。そうしてリリムと共に二年B組の教室に戻ったのである。
 すっかり様変わりした教室に目を奪われていたリリムだが、はっとして黒羽の置いた段ボールから衣装を取り出しそれぞれ着る人に配っていく。

「みんなお待たせー。さあさあ残りのみんなも試着してー。直すとこあったら遠慮なく言ってねー」

 きっちり本日中に全て完成させて、修正に必要な時間に余裕も持たせているのは流石と言わざるを得ない。
 そうして修正要望があった衣装を改めて被服室で直して、また試着してもらって明日必要な準備は全て完了。これにて本日はお開きとなった。

 本日は部活動も無しで、ホームルーム後即下校。ルシファーは生徒達を見送った後職員室に戻って教師としての今日中にすべき仕事を一通り終わらせた後の帰宅となる。その間リリムは普通に下校する素振りを見せた後こっそりと姿を消して職員室へ行き、ルシファーが終わるのを待った。そうして二人一緒に、空から下校である。
 高級マンションの最上階へ、エレベーターも使わず帰宅。玄関の扉をすり抜けて入ると、リリムはルシファーを心配そうに見上げた。

「先生、飛ぶのしんどくなかった?」
「多少な」
「クラスのみんなも心配してたよ? 黒羽先生顔色悪いって」
「やれやれ、あまり皆に心配をかけさせるわけにもいかないからな。明日は健康体で登校せねば」
「そのためにも、ね」

 聞きたかった言葉を引き出したと言わんばかりに、リリムの瞳が輝いた。
 右手は制服のスカートをたくし上げ、それによって露出した下着――レイエルに壊されてしまった紐パンに代わって穿いた幼げでありつつも清楚な印象を感じさせる白無地ぱんつを左手の親指で下ろしアンダーヘアを露にする。人間への擬態を解いて髪の色を黒から赤に戻すに従って、下の毛も鮮やかな赤に染まった。

「せんせ、えっちしよ?」

 上目遣いで、あざとく懇願。ルシファーはツインテールに結われた頭をぽんぽんと撫でてやると、リリムをひょいと抱えて無言で寝室へと足を進めた。
 ベッドに腰を下ろしたルシファーは自分の体調を確認するように軽く腕を回す。その視線の先ではリリムが早々に制服を脱いですっぽんぽんになっていた。

「ほらほら先生ちんちん出して。ボクがフェラしたげる」

 学校の保健室ではすぐに篤が戻ってきたため中途半端に終わってしまい、リリムにとっても生殺しの欲求不満だった。いよいよここからは思う存分楽しめる――そう思った矢先のことだった。

「待てリリム、客人だ」

 寝室の壁をすり抜けて、ショートカットの銀髪に切れ長の目をした女性が姿を現した。その背には純白の翼。

「久しいな。部下の彼とは順調そうで何よりだ」

 天使兵セレナ・ルメール、二十七歳。彼女もまた、ルシファーの脱衣ゲームによってカップル成立した者の一人だ。
 ルシファーの瞳には、彼女が昨晩部下兼恋人のアゼルとたっぷり楽しんでいたことがはっきりと視えていた。

「貴様何を視た!? いやそれよりもだ……取り込み中のところすまない。時間を置いた方がよかったか」
「いや、構わない。そちらも急ぎの用事があるのだろう」

 セレナはすっぽんぽんのリリムを見て頬を染めた。リリムはとりあえず制服のブラウスだけ着ておく。リリムの背丈ならば、ボタンを閉めればとりあえずこれで陰部まで隠せる。

「……では用件を伝えよう。先程アゼルを含む私の隊がこの街上空にあるルナティエル一派のアジトに突入し、構成員四名を拘束した。ルナティエルに関しては死亡を確認。お前の仕業だろうルシファー」
「いかにも。まあお前達には隠し通せないか。殺しちゃ何か不味かったか? 大方これもそっちのお偉いさん連中の狙い通りなのだろう。ルナティエルは天界最上位の熾天使だからな、強固な階級社会である天界じゃまともに裁判にかけて罪を問うこともできまい。だから俺と戦わせて謀殺した。違うか?」
「……回答は控えさせてもらう」

 セレナの表情を見れば、それが概ね当たっていることは察せた。

「ねー、まだ終わんないのー?」

 と、そこでリリムが痺れを切らした様子。まだ僅かしか経っていないのに、いよいよこれからというところでお預けを喰らったものだから短気になるのも致し方なし。

「……では報告と事情聴取も済んだので私はこれにて」

 セレナの方も速くここから去りたいと感じていることが、表情や声色からひしひしと伝わってきた。
 背を向けて飛び立つセレナだったが、ルシファーはそれを呼び止める。

「待て。ルナティエルの手下達についてだが、彼女達はルナティエルに騙されていた被害者でもある。寛大な措置を頼む」
「上に伝えておこう」

 そうしてようやくセレナが去るや否や、リリムは待ちきれないとばかりにブラウスを脱ぎ捨て再び一糸纏わぬ姿に。そしてルシファーも脱がしにかかった。
 明日の文化祭に備えて、熱い夜が始まる。
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