脱衣ゲームでカップル成立 ~史上最強の淫魔、光堕ちしてキューピッドになる~

平良野アロウ

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第六章

第172話 ポージングにらめっこ・2

「私は……Bでお願いします」

 運動神経の悪い杏にとって、高度なバランス感覚を要するAのポーズは無理がある。よって迷わずBを選んだ。
 そのパートナーである茂徳は、かったるそうにポケットに手を突っ込んで舌打ち。

「Aでいいよ俺は」
「では、柚木さんのBのカードをオープンします」

 表に向けられたBのカード。その絵柄を見て、杏はぎょっとさせられた。
 ピクトグラムの人物は、明らかにM字開脚をしているのである。

「ではここで、私とリリムがお手本をお見せ致しましょう。シンプルな絵柄で描かれたカードだけでは、正確なポーズを把握し辛いですからね」

 そう言ってルシファーは床に座って腰を曲げ、イラスト通りのVの字バランスを綺麗な姿勢で披露。タンクトップにタイツ姿の体操選手風コスチュームで来たのはこのためである。
 その横でピンクのレオタード姿のリリムは床に座って後ろ側に掌をつき、両脚をぱっくり開いてのM字開脚。まるで見せつけているかのようなちょっと不敵な笑みが、幼さの中にそこはかとなく色気を感じさせる。

「大山寺君は私の、柚木さんはリリムのポーズを真似して頂きましょう。ただし自分のパートナーから見てこのポーズになるように向きを調節して下さい」
(ええー……私こんなポーズ恥ずかしすぎてできないですよぉ……)

 見ているだけでも赤面してくるようなはしたないポーズをやれと言われて、杏は身震いした。

(でも、勝てばカップル成立……大山寺さんは、私一人を愛してくれるようになるんです)

 ルシファーの天使の加護には、たった一人の恋人や配偶者以外との性行為ができなくなる効果が付与されている。
 これにより淫魔や性犯罪者からの被害を受けることを防げるのが主な目的であるが、副次的な効果として浮気不倫の防止にもなっている。
 ルシファーの狙いとはこれで茂徳を一人の恋人に縛り付けることであった。そして杏はその相手として相応しいと判断したのである。

 覚悟を決めた杏は床に腰を下ろす。脚はぴったり閉じたまま、手本に倣って後ろに手を置く。そしてゆっくりと、躊躇いの感情を体に表すように脚を開いていった。
 ぱっかーんと開けた脚の間に見えるは純白のショーツと指で突っつきたくなるお股である。茂徳の視線はその一点に向けられた。

「あ、あの……見ないでください……あまり……」
「そうだよ大山寺君、早くポーズとりなよ」
「ちっ、うっせーな……」

 茂徳は渋々ながら自分もルシファーのポーズをとった。だが顔が横向きになる関係上、せっかくのパンツが見られないことになる。
 ポーズの再現なんか知ったことかと言わんばかりに、茂徳の顔は手本を無視して杏の方を向いていた。ポーズ自体も腕や脚がまっすぐ伸びておらず、かなりだらけたものである。
 十秒のカウントが始まると、茂徳はすぐにポーズを解いて杏と向き合いだらしなく座りながらパンツを凝視した。

(えっ?)

 突然の行動に、杏は戸惑う。だけどもあくまで勝つ気でいる杏は恥ずかしくてもポーズを解かず静止していた。

「あいつゲーム放棄してんだけど、どーすんの先生」
「まあ、なるようになるさ。とりあえず採点に移ろう」

 十秒が経過して終了のブザーが鳴ると、杏はすぐに脚を閉じて座り方を変えスカートを押さえた。

「ではまず大山寺君、0点。そもそもまともにポーズをとる気が無い時点で論外です」
「杏ちゃんはー、3点! まあまあ頑張ってたけど、脚の開き方が足りないかなー。あと表情も違ってたよね。はわはわしてる感じもそれはそれでえっちだったけどね」
「と、いうわけで合計は10点満点中3点です。大井君、河内さんペアはこれを超える点数を出す必要があります。まあ、よほどのことがなければこれ以下というのは出す方が難しいと思いますがね。では、カードをお配り致しましょう」

 一馬と梢の前に、山札を載せた丸テーブルが現れた。梢は先程の二年生ペアの行ったゲームを観察した上で考える。

(さっきのを見てわかったことが二つある。一つはポーズの再現度には顔の表情まで含まれること。これはちょっとマズいかも……だって大井君、表情筋死んでるんだもん!」

 一馬は感情に乏しく表情の変化が少ない陰キャ男子である。運動神経は良いためポーズに関しては問題ないと思われていたが、ここに大きな躓き所ができてしまった。
 だがわかったことというのは、悪い所ばかりではない。

(もう一つが、女子にセクシーポーズやらせて男子がそっち見ちゃうように誘導する可能性が高いこと。これで男子のポーズが崩れるトラップなわけだけど……性欲枯れてんじゃないのってくらいの大井君だからこの点は大丈夫! ……いや、これ喜んでいいとこ? あたしの下着姿見ても無反応ってそれむしろ脈無しってことじゃないの!? いやでもどっちみち勝てさえすれば大井君はあたしを好きになってくれるわけだし……)

 ちなみに杏も梢もそう思い込んでいるが、ゲームに勝てば片想いの相手であるパートナーが自分を好きになるというというのは間違いである。そういう洗脳的な手段でカップルを成立させるのは、ルシファーの脱衣ゲームでは行っていない。
 だがそうやって思い込まれていた方がやる気を引き出せるので、ルシファーにとっては都合が良いのだ。騙しているような形にはなるが、今後もルシファーは積極的にそうであるかのように思い込ませていく方針だ。

 山札の上から二枚がテーブルに置かれ、一枚が表に向けられる。
 梢のAは笑顔で両手ギャルピース。体勢もきつくないし普通に可愛い当たりポーズだ。
 一馬のAは両腕でSの字を描くようにして拳を額の上と顎の下に持っていく、所謂お猿のポーズ。顔も歯を剥き出しにしたウッキッキーと言わんばかりの表情である。

「あたしはAで」
「……僕はBで」

 一馬のBのカードが表に向けられ、その絵柄は内股になって両拳を顎の下に持っていったぶりっ子ポーズ。これが女子だったならまだ普通に可愛いで済んだが、男子のこれはなかなかキツい。

「ではお二人のポーズが決まったようなので、我々が手本をお見せ致します。大井君は私の、河内さんはリリムのポーズを真似して頂きます」

 そう事務的なアナウンスをしながらルシファーは、カードのデフォルメされたイラスト通りに瞳をキラキラさせながら堂々とぶりっ子ポーズ。
 あまりにギャップのありすぎるその姿に一同は唖然とし、隣であざと可愛くギャルピースしているリリムが目に入らなくなるほどだ。
 梢は自分が手本にすべき方がどちらかを思い出し、慌ててリリムの方に顔を向けた。

(とにかくやらなきゃ。このポーズなら簡単だし)

 一馬と向き合って早速可愛いギャルピースを笑顔で披露。逆に拍子抜けするほど何の苦も無い――かに思えた。
 対する一馬の指定されたポーズは、茂徳のものと違って正面を向いていた。
 好きな人に下着姿を直視されながら、可愛くポーズをとる。しかも今日に限って、下着は上下不揃いだ。
 上ははっきし言って子供っぽい縞ブラだし、下は履きやすいけどお洒落さに欠けるシンプルなグレー。これは好きな人にお見せできる下着姿とは到底かけ離れたものである。

(ヤバ……これ想像以上に恥ずかしい……)

 羞恥心が笑顔を崩していくが、まだカウントが始まる前なのは幸いであった。
 一馬の反応はといえば、相変わらずの無表情。梢の恥じらいなんて意にも介さぬ様子で、自分のポーズをとり始めていた。
 案の定真顔でぶりっ子ポーズをするシュールな光景を見せられて、梢は顔が引き攣った。
 そうした矢先にカウントが始まり、梢は慌てて手本通りの笑顔を維持しようと努める。

(そういうことか……男子にとっては女子のセクシーポーズをついつい見てしまうのがトラップなら、女子にとっては男子の面白ポーズを見て笑ってしまうのがトラップ。しかも大井君の場合無表情なせいで余計にシュールさ増してるし!)

 このゲームのタイトルににらめっこの名を関している意味を、梢は理解した。笑ったら負け。にらめっことはそういうゲームである。
 顔だけ笑いながら笑いを堪える奇妙な状況だが、やっている当人は必死なので。
 プルプル震えながらもなんとか十秒耐えきり、梢はポーズを解いて肘を抱えながらしゃがんだ。

「では採点を致しましょう。まず大井君、3点。ポーズはまあまあよくできていますが、表情が再現できていません」
「梢ちゃん、4点。ちょっと笑っちゃってたとこはあったけど、頑張ってたよー」
「ということで、合計は7点。3対7で、一戦目は大井君、河内さんペアの勝利です」
(よし、勝った!)

 梢は小さくガッツポーズ。だがすぐに冷静になった。

(とりあえず今回は勝ったけど……油断はできないよね。ハンデの分まだこっちが負けてるわけだし)

 一同の視線は、杏の方に向いていた。杏はおどおどしながらも、ブラウスのボタンを外し始める。

(ホントに脱ぐんだ……って、大井君もあっち見てる!? まさか大井君は巨乳好き!? だからあたしにも恋咲先輩にも反応しなかったってこと!?)

 梢の中に、一つの疑念が生じた。だけども梢はそれで挫けるような女ではない。

(でも諦めない! 絶対勝って大井君を振り向かせてみせるんだから!)

 それでむしろ気合いが入るという、なかなかの傑物である。

 梢の嫉妬と決意はいざ知らず、脱衣ゲーム二度目となる杏は最初の服を脱ぎ終えていた。
 露になった純白のブラを申し訳程度に手で隠しつつもじもじと身をよじる姿は、見ている梢でさえドキドキしてしまうほど扇情的だ。
 杏と付き合う気は無いつもりである茂徳も、それはそれとして杏の脱衣シーンや下着姿はニヤニヤしながらガン見していた。
 そんな茂徳の様子を見たリリムは、こっそりと茂徳に話しかけに行った。

「ねえねえ大山寺君」
「何だよ恋咲」
「杏ちゃんのカラダ、超セクシーだよねぇ。あの子とえっちしたいって思わない?」
「体だけの割り切った関係で済むならな。カップル成立とかはマジ勘弁だわ」
(むー、なかなか強敵だなー)

 百戦錬磨のヤリチンチャラ男は、そこらの童貞のようにスケベ心で軽く落ちるものではない。
 だがリリムには、ここから逆転に持ち込める秘策があった。

「あのルシファー先生はねー、人を一生えっちできなくする魔法が使えるんだよね。女の子を泣かせる悪い男は、もしゲームで負けたら去勢させられちゃうかもよー?」
「は? いやいやいや待て」

 途端、茂徳は目を見開いて動揺し始めた。こちらの秘策は、上手いこと彼の感情を揺さぶれたようだ。

(去勢させられるか重い女と付き合うかの二択だと!? ふざけやがって……あのド貧乳め後で覚悟しとけよ)

 なお、この領域から出る際にルシファーのアシスタントが恋咲凛々夢であることは記憶から消されるため、どんなに恨みを買ってもリリムが復讐されることはない。
 ルシファーの横に戻ってきたリリムは、してやったり顔でルシファーを見上げた。その頭を無言でぽんぽんしてやった後、ルシファーはゲームの進行に戻る。

「では第二回戦を始めましょうか。今回は大井君と河内さんが先攻です」

 一度消えていたテーブルが再び現れ、その上の山札からカード二枚が自動で引かれた。
 一馬のAはまるでタコ踊りのように、手足をふにゃふにゃに曲げたポーズ。
 梢のAは相手にお尻を向けて前屈みになり、お尻の穴を突き出すように両手でお尻を左右に開いたポーズである。

「俺はAでいいよ」
「あたしはBで!」

 パンツは穿いた状態とはいえ、流石にAのポーズは許容できず。梢は即座にBを選択した。
 表に向けられたBの絵柄は、床に腰を下ろして百八十度開脚した上で更に上体をぴったり床につけ両腕を広げるという、非常に優れた柔軟性が無ければ絶対不可能な超高難易度ポーズ。
 だが梢はむしろ、既に勝ったと言わんばかりに口角を上げていた。

「やったラッキー、こういうの大得意なんだよね」
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