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第六章
第173話 ポージングにらめっこ・3
それぞれのポーズが決まると、次はルシファーとリリムによるお手本である。
流石道化を演じることを厭わないルシファーは、タコ踊りのポーズを堂々と披露。
一方のリリムはこの高難易度ポーズにどう挑むのか――否、これはリリムにとって決して難しいものではなかった。
身体の柔らかさには自信のあるリリム。百八十度開脚を悠々とこなし、指定のポーズをドヤ顔で容易くやってのけた。
「ふっふーん、ボクにできないポーズを候補に入れるわけないでしょー」
「……では、お二人にはこちらのポーズをやって頂きましょう」
早速動作に入ったのは梢である。こちらもリリムに劣らぬ柔軟性が自慢。腰を下ろしてすらっと長い脚を百八十度開き、手本通り上体を床につける。そして決め手は顔を上げてドヤ顔と、手本の完璧な再現だ。
このゲームでは体操競技等とは違って、ポーズの難易度が高ければ高得点になるといったことは一切無い。高難易度ポーズを引くことはハズレでしかないのだが、梢にとっては些細なことだ。
一方の一馬も、手足をふにゃふにゃに動かしてタコ踊りのポーズで静止。相変わらず表情筋の死んだ真顔で面白ポーズをする姿はシュールである。梢は笑いを堪えて、指示通りのドヤ顔を維持していた。
カウントが終わると、採点に入る。
「大井君は4点としておきましょうか。ポーズの再現度は前回よりも良いですが、相変わらず表情が残念です」
「梢ちゃんは、5点満点! これは流石得意分野だけあるねー」
「と、いうわけで合計は9点です。これに勝つためには、二人とも満点を出す必要があります」
(よし、行ける!)
梢はグッとガッツポーズ。
茂徳と杏の前に、それぞれテーブルとカードが再び出現した。
茂徳のAは昭和のギャグマンガを彷彿とさせる、片足と両手を上げたオーバーリアクションな驚きポーズ。勿論顔芸も込みである。
杏のAは前屈みになり二の腕で胸を挟んで寄せるグラビア風のセクシーポーズだ。
「俺はこのAでいいぜ」
「私も……Aでいいです」
今回はどちらもAのポーズを了承した。満点を取る必要がある以上、物理的にできないポーズがBで出てくる可能性を考慮すれば妥当な判断だろう。
相手の様子を見守る梢は、茂徳から漂わす空気が変わったことを察していた。
(あのチャラ男が最後までやる気無しでいてくれたら楽に勝てるんだろうけど……恋咲先輩が一体何を吹き込んだか)
ルシファーとリリムは、それぞれ手本のポーズを見せる。
美しい顔を大胆に崩して顔芸込みの驚きポーズを披露するルシファー。
そしてリリムはといえば、この本来巨乳がすることを前提としたポーズを無理して真似しているような状態であった。
二の腕で胸を寄せているはずが、寄せる胸が無いがためにただそれっぽい位置に腕を置いているだけ。本来谷間を強調するセクシーポーズのはずが、むしろ平たさを際立たせていた。
「恋咲おめー自分にできないポーズは入れてないんじゃなかったのか」
「できてるもん! できてるもん!!!」
茂徳に馬鹿にされたリリムは繰り返し言って強調するも、ちょっと涙目になっていた。
「えー、ではお二人にはこのポーズをやって頂きましょう」
顔芸を維持したまま淡々と事務的に進行するルシファーはシュールな光景である。一馬といいここにいる男どもはまったく腹筋に悪い。
茂徳はとりあえずポーズだけ真似してみるが、片足立ちでバランスをとりながらポーズを維持するのはなかなか難しかった。
対する杏はBを選んだら先程の梢のポーズのような自分にできないポーズが来るかと思ってAにしたものの、やはりこんな胸の大きさをひけらかすようなポーズには抵抗があった。
なかなかポーズに入らない杏であるが、それにより割を食うのは前もってポーズをとっていた茂徳である。
「おい、早くしろよ! いつまで俺にこんな格好させる気だ!」
「は、はい!」
片足を上げた体勢が辛い茂徳に怒られて、杏は慌ててポーズをとった。
下着姿でむぎゅっと両側から寄せた胸はその柔らかさを存分に見せつける。茂徳の視線は深い谷間へと吸い寄せられ、ポーズと合わせてさながらおっぱいに驚いているような様相。
テンカウントが済むと、採点が始まった。
「まずは杏ちゃんから。5点満点! 超セクシーだったよ! 羨ましいくらいに!」
一先ず杏の方は良い結果が出た。杏はほっと一息つく。これで茂徳の結果次第では勝ちも見えてくる。
「次に大山寺君。まあまあ頑張っていましたが、ポーズ中に体が何度も動いていました。よって3点。合計8点で、大井君、河内さんペアの勝利です」
が、次のルシファーの発表によってその期待は容易く砕かれた。
「では柚木さん、もう一枚脱いで頂きましょう」
「は、はい……」
杏はすぐにスカートを下ろし、純白のショーツを露にする。
先程のM字開脚とはまた違った角度から見るパンツ。茂徳はつい顔がにやけてしまった。
連勝によりハンデを帳消しにした梢が、今度は一安心。だけどもすぐに、その表情は険しくなった。
(とりあえず今回は勝ったけど、まだ油断はできない。何よりあのチャラ男がやる気になったこと……恋咲先輩、あたしの恋を叶えてあげるとか言っといて向こうの手助けしてるし。大井君はあの無表情のせいで表情の再現に問題ありだし……あたしが頑張らなきゃ)
かくして三回戦が始まる。今回は茂徳と杏の先攻である。
茂徳のAは右腕一本で体を支えて両脚と左腕を放射状に広げた曲芸のような逆立ちポーズ。
杏のAは脚を前後に百八十度開いて床につけ、腕をそれぞれ上と横に伸ばしたポーズ。
「こんなもんできるか! BだB!」
「私も、こんなに脚が開けないのでBにします……」
今回はどちらも物理的にできないポーズであった。両方のBのカードが同時に表に向く。
茂徳のBはシンプルに正座。辛いといえば辛いが、物理的にできないというほどではないポーズだ。
杏のBは背中を向けて身体を捻って振り返り、右手は腰に当て左手は顔の横でピースしたアイドルのような可愛らしいポーズ。
(よかった、今回はいやらしい感じのじゃない……)
杏がほっとする中で、ルシファーとリリムは手本を見せる。
精悍な決め顔でピシッと綺麗に正座するルシファーの姿は、非常に決まって見える。ここまで散々面白ポーズでふざけ倒してきたこの男だが、こういうまともな格好をするとやはり超弩級の美男子であることを実感させられる。
そしてもう一方。こちらも無難に可愛いポーズで、多少の複雑さこそあれど両足をしっかり地につけていて安定感もあり、難しいと言えるほどではない。だがリリムは、そこにとんでもないものをぶっこんできた。
杏達に背中を向けたリリムは、少しお尻に食い込みつつあったレオタードに指を入れて直そうとする仕草を見せた。だがその後の動きは、予想だにしないものであった。
食い込みを直すどころか、むしろその逆。レオタードを指で後ろ側に引っ張り、より深くお尻に食い込ませたのである。
Tバック気味にお尻の大部分を露出させたその格好で、リリムは改めて指定のポーズをとる。これは杏を困惑させた。
(えっ、もしかしてあの食い込みもやらないといけないんですか? 表情の再現が評価に含まれることを考えると……でもここまで着ているものの状態が評価に含まれたことは……カードの絵にだって服は描かれてないですし……)
こんな下品ではしたない行為、やらずに済むのであればそうしたいのは当然だ。だがそれが評価に含まれるというのなら話は別。勝つためならやらざるを得ないのが当然である。
杏が思い悩む一方で、パートナーの茂徳はまた別の考えを。
(恋咲の奴、乳はまっ平だがケツはまあまあいい感じなんだよな。そういやあいつ転校初日にビッチぶってた癖して俺のナンパは拒否ってんだよな。今は彼氏いるって話だが……そもそも何でここにいてあの自称天使のアシスタントやってんのかってことも含めてよくわからん奴だぜ……まあ、傍から見りゃあ俺も大概だろうが)
そう思いながら、茂徳はピシッと背筋を伸ばして両拳を膝に置き正座していた。見た目だけならば彼も大変な美男子である。しかし格好がチャラいため正座が似合う男とは言い難かった。
問題の杏は、まだもじもじしていた。だけどそろそろ決めなくては、また茂徳に怒られてしまう。ましてや現在茂徳は正座中であり、いずれ足が痺れてきて文句を言うことは目に見えていた。
そこで杏がとった行動は。
「あっ、あの、質問があるんですが……」
「残念ですが質問は受け付けていません」
採点の対象になるか訊こうとしたものの、ルシファーに一蹴された。
こうなっては致し方なし。杏は覚悟を決めて、ショーツの布を内側に引っ張りお尻へと食い込ませた。その恰好で茂徳にお尻を向け、恥じらいに耐えながら身体を捻って振り返れば茂徳はニヤリと笑みがこぼれている。
(うう……恥ずかしいです……)
腰に手を当て顔の横でピースしたら、カウントが始まる。その間ずっとパンツを食い込ませたお尻を、しゃがんだ姿勢故に顔が丁度いい位置にある茂徳にガン見されているのである。
カウントが終わるや否や、杏はすぐさまお尻から布を引っ張り出して元に戻した。
「では評価に入ります。大山寺君、5点。今回は非常によくできていました」
意外なほど綺麗な正座に、ルシファーは太鼓判を押す。杏のお尻を見てニヤニヤしていた茂徳であるが、カウントが始まったらきりっとした表情に変わっていた。
「そして杏ちゃん……1点! 右手と左手間違っちゃってるねー。正しくは右手が腰で左手がピース。杏ちゃんは右手がピースで左手が腰になっちゃってるよ」
「あっ、あああ……」
お尻の恥ずかしさでそっちに意識が回らず、うっかり手を逆にしていたことに杏は気付かされた。杏の呻くような声が響く。
「ちなみにお尻に食い込ませたのはボクがやりたくてやっただけなので評価とは一切関係ありません! 杏ちゃんのお尻はとてもえっちだったけどね!」
「えええ……」
そして少しでも評価を上げるため恥を忍んでやった行為も、全く無意味に恥をかいただけに終わる。踏んだり蹴ったりの結果に、杏はがっくりと両手を床についた。
「というわけで、合計は6点です」
「ごっ、ごめんなさい大山寺さん!」
「ああ、まあその分俺が点取ったからいいよ」
「そうですか……ところで足、痺れてはいませんか?」
「大丈夫だ。慣れてっからな」
そう言ったところでどういうわけか茂徳ははっとして、ばつが悪そうに杏から顔を背けた。
「では大井君、河内さんペアの番に入りましょう」
(よし、相手の自滅! でもチャラ男の方は満点取ってるわけだし、合計6点は決して勝ち確と言えるような点ではないよね……)
梢はあくまでも慎重さを崩さず、冷静に状況を見る。両者同点、互いにここで負けたら残り一枚となるこの一戦が、今後の展開を左右することは間違いない。
緊張の中で、カードが捲られる。
一馬のAはひどくシンプル。脚を肩幅に開いて両手を腰に当てただけの、大当たりとも言うべき超低難易度ポーズ。しかも顔も真顔で済むものだ。
対する梢のAは、膝立ちになって口の前に拳を二つ、何か棒状の物を持っているかのように置いたポーズ。一見何を意味しているか分かり辛いが、実は耳年増な梢はこれを見てピンときた。
(これ……ちんちん咥える時のポーズ! しかも大井君のポーズもセットでそれっぽくなってる!)
明らかに狙っているとしか思えないこの組み合わせ。梢はつい実際に自分が一馬のを咥える光景を想像してしまい、顔からボッと火を噴いた。
「俺はAでいい」
「あたしはBで!」
ポーズ自体は簡単であるものの、露骨に性行為を彷彿とさせるポーズは流石に抵抗があった。
Bのカードが捲られると、梢は顔を引き攣らせた。
Bから出てきた絵柄というのが、床に腰を下ろして右手は自分の股間に触れ、左手は自分の胸に触れているポーズなのである。
先程のが二人でする性行為を彷彿させるポーズなら、今回は一人でする性行為を彷彿させるポーズだ。露骨に羞恥心を煽ってくるポーズの連続に、嫌な気にさせられてしまう。
「では、お手本をお見せ致しましょう」
(あーあ残念、先生のちんちんしゃぶるポーズやりたかったのになー)
ルシファーはちょっとの動きで簡単にポーズをとった。
そしてリリムはといえば、レオタードに浮き出た割れ目に右手の指先を当て、左手は自分の平たい胸の先っぽに指先を当てている。そこに惚けたような顔を合わせて、あまりにも露骨すぎるとても人様には見せられないポーズが出来上がっていた。
「恋咲先輩!? いくらなんでもこれはなくないですか!? ていうか先輩もちょっとくらい羞恥心持ってください!」
「えー? 今質問ダメってことになってるしー」
「では、お二人はこちらのポーズをとってください」
強引にゲームを進行させられ、梢の抗議は封殺。
一馬は普通に指定のポーズをとるだけで済んだが、問題は梢である。
(待って待って、無理無理無理。ましてや大井君の前でだなんてー!)
とりあえず座ってはみたものの、とても指定のポーズをとる気にはなれず。
とにかくやらねばと思って股間に手を伸ばそうとするも、火照った体がそれを拒否しようと動くのを拒む。
「やっぱ無理! こんなのできないってー!」
「では棄権ということで宜しいですね」
「もうそれでいいから!」
「では採点致します。大井君は5点。河内さんは棄権につき0点。よって合計5点となり、大山寺君、柚木さんペアの勝利です」
「や、やっと勝った……」
びくびくしていた杏は、ここでようやく一息つくことができた。
だがその一方で心中穏やかではないのは梢である。
「では河内さん、一枚脱いで頂きましょう」
「あ……うう……」
恥ずかしすぎるポーズを回避したが、その先に待っているのは男子も見ている前で下着を脱ぐという恥ずかしすぎる行為。もう結果が出た後で、どっちがマシだったか考えて後悔してしまう。
「ちなみに脱がない場合は、私が魔法で脱がせます」
「脱ぐから! ちゃんと脱ぐからー!」
梢は腰を下ろしたままで、グレーのショーツを下ろし脚から抜いた。
「おおっ、梢ちゃん下からいった!」
「実況しないでください!」
梢は脚をぴったり閉じて両手で股間を押さえながら立ち上がる。前をバッチリ隠しても、一馬の方からはぷりんと形の良いお尻が丸見え。小麦色の肌に程よい肉付きがレオタード映えする美尻である。
お尻を隠すように前を向くが、それはそれで手だけで下腹部を隠した下半身裸の姿を見られるわけであり、目を回しそうになるほど恥ずかしい。
(お尻見られたお尻見られたお尻見られたっっ!! ていうか好きな人になら裸を見られても嫌ってほどじゃないって思ってたけど、いざ見られたらやっぱ無茶苦茶恥ずかしいっ!!)
ちょっと泣きそうになりながら一馬の方を見てみれば、あちらはこちらをまっすぐ見ている。しかしやはり表情の変化は見られなかった。
(何でこの状況でそんな真顔なの!?)
ますます泣きそうになる梢であった。
流石道化を演じることを厭わないルシファーは、タコ踊りのポーズを堂々と披露。
一方のリリムはこの高難易度ポーズにどう挑むのか――否、これはリリムにとって決して難しいものではなかった。
身体の柔らかさには自信のあるリリム。百八十度開脚を悠々とこなし、指定のポーズをドヤ顔で容易くやってのけた。
「ふっふーん、ボクにできないポーズを候補に入れるわけないでしょー」
「……では、お二人にはこちらのポーズをやって頂きましょう」
早速動作に入ったのは梢である。こちらもリリムに劣らぬ柔軟性が自慢。腰を下ろしてすらっと長い脚を百八十度開き、手本通り上体を床につける。そして決め手は顔を上げてドヤ顔と、手本の完璧な再現だ。
このゲームでは体操競技等とは違って、ポーズの難易度が高ければ高得点になるといったことは一切無い。高難易度ポーズを引くことはハズレでしかないのだが、梢にとっては些細なことだ。
一方の一馬も、手足をふにゃふにゃに動かしてタコ踊りのポーズで静止。相変わらず表情筋の死んだ真顔で面白ポーズをする姿はシュールである。梢は笑いを堪えて、指示通りのドヤ顔を維持していた。
カウントが終わると、採点に入る。
「大井君は4点としておきましょうか。ポーズの再現度は前回よりも良いですが、相変わらず表情が残念です」
「梢ちゃんは、5点満点! これは流石得意分野だけあるねー」
「と、いうわけで合計は9点です。これに勝つためには、二人とも満点を出す必要があります」
(よし、行ける!)
梢はグッとガッツポーズ。
茂徳と杏の前に、それぞれテーブルとカードが再び出現した。
茂徳のAは昭和のギャグマンガを彷彿とさせる、片足と両手を上げたオーバーリアクションな驚きポーズ。勿論顔芸も込みである。
杏のAは前屈みになり二の腕で胸を挟んで寄せるグラビア風のセクシーポーズだ。
「俺はこのAでいいぜ」
「私も……Aでいいです」
今回はどちらもAのポーズを了承した。満点を取る必要がある以上、物理的にできないポーズがBで出てくる可能性を考慮すれば妥当な判断だろう。
相手の様子を見守る梢は、茂徳から漂わす空気が変わったことを察していた。
(あのチャラ男が最後までやる気無しでいてくれたら楽に勝てるんだろうけど……恋咲先輩が一体何を吹き込んだか)
ルシファーとリリムは、それぞれ手本のポーズを見せる。
美しい顔を大胆に崩して顔芸込みの驚きポーズを披露するルシファー。
そしてリリムはといえば、この本来巨乳がすることを前提としたポーズを無理して真似しているような状態であった。
二の腕で胸を寄せているはずが、寄せる胸が無いがためにただそれっぽい位置に腕を置いているだけ。本来谷間を強調するセクシーポーズのはずが、むしろ平たさを際立たせていた。
「恋咲おめー自分にできないポーズは入れてないんじゃなかったのか」
「できてるもん! できてるもん!!!」
茂徳に馬鹿にされたリリムは繰り返し言って強調するも、ちょっと涙目になっていた。
「えー、ではお二人にはこのポーズをやって頂きましょう」
顔芸を維持したまま淡々と事務的に進行するルシファーはシュールな光景である。一馬といいここにいる男どもはまったく腹筋に悪い。
茂徳はとりあえずポーズだけ真似してみるが、片足立ちでバランスをとりながらポーズを維持するのはなかなか難しかった。
対する杏はBを選んだら先程の梢のポーズのような自分にできないポーズが来るかと思ってAにしたものの、やはりこんな胸の大きさをひけらかすようなポーズには抵抗があった。
なかなかポーズに入らない杏であるが、それにより割を食うのは前もってポーズをとっていた茂徳である。
「おい、早くしろよ! いつまで俺にこんな格好させる気だ!」
「は、はい!」
片足を上げた体勢が辛い茂徳に怒られて、杏は慌ててポーズをとった。
下着姿でむぎゅっと両側から寄せた胸はその柔らかさを存分に見せつける。茂徳の視線は深い谷間へと吸い寄せられ、ポーズと合わせてさながらおっぱいに驚いているような様相。
テンカウントが済むと、採点が始まった。
「まずは杏ちゃんから。5点満点! 超セクシーだったよ! 羨ましいくらいに!」
一先ず杏の方は良い結果が出た。杏はほっと一息つく。これで茂徳の結果次第では勝ちも見えてくる。
「次に大山寺君。まあまあ頑張っていましたが、ポーズ中に体が何度も動いていました。よって3点。合計8点で、大井君、河内さんペアの勝利です」
が、次のルシファーの発表によってその期待は容易く砕かれた。
「では柚木さん、もう一枚脱いで頂きましょう」
「は、はい……」
杏はすぐにスカートを下ろし、純白のショーツを露にする。
先程のM字開脚とはまた違った角度から見るパンツ。茂徳はつい顔がにやけてしまった。
連勝によりハンデを帳消しにした梢が、今度は一安心。だけどもすぐに、その表情は険しくなった。
(とりあえず今回は勝ったけど、まだ油断はできない。何よりあのチャラ男がやる気になったこと……恋咲先輩、あたしの恋を叶えてあげるとか言っといて向こうの手助けしてるし。大井君はあの無表情のせいで表情の再現に問題ありだし……あたしが頑張らなきゃ)
かくして三回戦が始まる。今回は茂徳と杏の先攻である。
茂徳のAは右腕一本で体を支えて両脚と左腕を放射状に広げた曲芸のような逆立ちポーズ。
杏のAは脚を前後に百八十度開いて床につけ、腕をそれぞれ上と横に伸ばしたポーズ。
「こんなもんできるか! BだB!」
「私も、こんなに脚が開けないのでBにします……」
今回はどちらも物理的にできないポーズであった。両方のBのカードが同時に表に向く。
茂徳のBはシンプルに正座。辛いといえば辛いが、物理的にできないというほどではないポーズだ。
杏のBは背中を向けて身体を捻って振り返り、右手は腰に当て左手は顔の横でピースしたアイドルのような可愛らしいポーズ。
(よかった、今回はいやらしい感じのじゃない……)
杏がほっとする中で、ルシファーとリリムは手本を見せる。
精悍な決め顔でピシッと綺麗に正座するルシファーの姿は、非常に決まって見える。ここまで散々面白ポーズでふざけ倒してきたこの男だが、こういうまともな格好をするとやはり超弩級の美男子であることを実感させられる。
そしてもう一方。こちらも無難に可愛いポーズで、多少の複雑さこそあれど両足をしっかり地につけていて安定感もあり、難しいと言えるほどではない。だがリリムは、そこにとんでもないものをぶっこんできた。
杏達に背中を向けたリリムは、少しお尻に食い込みつつあったレオタードに指を入れて直そうとする仕草を見せた。だがその後の動きは、予想だにしないものであった。
食い込みを直すどころか、むしろその逆。レオタードを指で後ろ側に引っ張り、より深くお尻に食い込ませたのである。
Tバック気味にお尻の大部分を露出させたその格好で、リリムは改めて指定のポーズをとる。これは杏を困惑させた。
(えっ、もしかしてあの食い込みもやらないといけないんですか? 表情の再現が評価に含まれることを考えると……でもここまで着ているものの状態が評価に含まれたことは……カードの絵にだって服は描かれてないですし……)
こんな下品ではしたない行為、やらずに済むのであればそうしたいのは当然だ。だがそれが評価に含まれるというのなら話は別。勝つためならやらざるを得ないのが当然である。
杏が思い悩む一方で、パートナーの茂徳はまた別の考えを。
(恋咲の奴、乳はまっ平だがケツはまあまあいい感じなんだよな。そういやあいつ転校初日にビッチぶってた癖して俺のナンパは拒否ってんだよな。今は彼氏いるって話だが……そもそも何でここにいてあの自称天使のアシスタントやってんのかってことも含めてよくわからん奴だぜ……まあ、傍から見りゃあ俺も大概だろうが)
そう思いながら、茂徳はピシッと背筋を伸ばして両拳を膝に置き正座していた。見た目だけならば彼も大変な美男子である。しかし格好がチャラいため正座が似合う男とは言い難かった。
問題の杏は、まだもじもじしていた。だけどそろそろ決めなくては、また茂徳に怒られてしまう。ましてや現在茂徳は正座中であり、いずれ足が痺れてきて文句を言うことは目に見えていた。
そこで杏がとった行動は。
「あっ、あの、質問があるんですが……」
「残念ですが質問は受け付けていません」
採点の対象になるか訊こうとしたものの、ルシファーに一蹴された。
こうなっては致し方なし。杏は覚悟を決めて、ショーツの布を内側に引っ張りお尻へと食い込ませた。その恰好で茂徳にお尻を向け、恥じらいに耐えながら身体を捻って振り返れば茂徳はニヤリと笑みがこぼれている。
(うう……恥ずかしいです……)
腰に手を当て顔の横でピースしたら、カウントが始まる。その間ずっとパンツを食い込ませたお尻を、しゃがんだ姿勢故に顔が丁度いい位置にある茂徳にガン見されているのである。
カウントが終わるや否や、杏はすぐさまお尻から布を引っ張り出して元に戻した。
「では評価に入ります。大山寺君、5点。今回は非常によくできていました」
意外なほど綺麗な正座に、ルシファーは太鼓判を押す。杏のお尻を見てニヤニヤしていた茂徳であるが、カウントが始まったらきりっとした表情に変わっていた。
「そして杏ちゃん……1点! 右手と左手間違っちゃってるねー。正しくは右手が腰で左手がピース。杏ちゃんは右手がピースで左手が腰になっちゃってるよ」
「あっ、あああ……」
お尻の恥ずかしさでそっちに意識が回らず、うっかり手を逆にしていたことに杏は気付かされた。杏の呻くような声が響く。
「ちなみにお尻に食い込ませたのはボクがやりたくてやっただけなので評価とは一切関係ありません! 杏ちゃんのお尻はとてもえっちだったけどね!」
「えええ……」
そして少しでも評価を上げるため恥を忍んでやった行為も、全く無意味に恥をかいただけに終わる。踏んだり蹴ったりの結果に、杏はがっくりと両手を床についた。
「というわけで、合計は6点です」
「ごっ、ごめんなさい大山寺さん!」
「ああ、まあその分俺が点取ったからいいよ」
「そうですか……ところで足、痺れてはいませんか?」
「大丈夫だ。慣れてっからな」
そう言ったところでどういうわけか茂徳ははっとして、ばつが悪そうに杏から顔を背けた。
「では大井君、河内さんペアの番に入りましょう」
(よし、相手の自滅! でもチャラ男の方は満点取ってるわけだし、合計6点は決して勝ち確と言えるような点ではないよね……)
梢はあくまでも慎重さを崩さず、冷静に状況を見る。両者同点、互いにここで負けたら残り一枚となるこの一戦が、今後の展開を左右することは間違いない。
緊張の中で、カードが捲られる。
一馬のAはひどくシンプル。脚を肩幅に開いて両手を腰に当てただけの、大当たりとも言うべき超低難易度ポーズ。しかも顔も真顔で済むものだ。
対する梢のAは、膝立ちになって口の前に拳を二つ、何か棒状の物を持っているかのように置いたポーズ。一見何を意味しているか分かり辛いが、実は耳年増な梢はこれを見てピンときた。
(これ……ちんちん咥える時のポーズ! しかも大井君のポーズもセットでそれっぽくなってる!)
明らかに狙っているとしか思えないこの組み合わせ。梢はつい実際に自分が一馬のを咥える光景を想像してしまい、顔からボッと火を噴いた。
「俺はAでいい」
「あたしはBで!」
ポーズ自体は簡単であるものの、露骨に性行為を彷彿とさせるポーズは流石に抵抗があった。
Bのカードが捲られると、梢は顔を引き攣らせた。
Bから出てきた絵柄というのが、床に腰を下ろして右手は自分の股間に触れ、左手は自分の胸に触れているポーズなのである。
先程のが二人でする性行為を彷彿させるポーズなら、今回は一人でする性行為を彷彿させるポーズだ。露骨に羞恥心を煽ってくるポーズの連続に、嫌な気にさせられてしまう。
「では、お手本をお見せ致しましょう」
(あーあ残念、先生のちんちんしゃぶるポーズやりたかったのになー)
ルシファーはちょっとの動きで簡単にポーズをとった。
そしてリリムはといえば、レオタードに浮き出た割れ目に右手の指先を当て、左手は自分の平たい胸の先っぽに指先を当てている。そこに惚けたような顔を合わせて、あまりにも露骨すぎるとても人様には見せられないポーズが出来上がっていた。
「恋咲先輩!? いくらなんでもこれはなくないですか!? ていうか先輩もちょっとくらい羞恥心持ってください!」
「えー? 今質問ダメってことになってるしー」
「では、お二人はこちらのポーズをとってください」
強引にゲームを進行させられ、梢の抗議は封殺。
一馬は普通に指定のポーズをとるだけで済んだが、問題は梢である。
(待って待って、無理無理無理。ましてや大井君の前でだなんてー!)
とりあえず座ってはみたものの、とても指定のポーズをとる気にはなれず。
とにかくやらねばと思って股間に手を伸ばそうとするも、火照った体がそれを拒否しようと動くのを拒む。
「やっぱ無理! こんなのできないってー!」
「では棄権ということで宜しいですね」
「もうそれでいいから!」
「では採点致します。大井君は5点。河内さんは棄権につき0点。よって合計5点となり、大山寺君、柚木さんペアの勝利です」
「や、やっと勝った……」
びくびくしていた杏は、ここでようやく一息つくことができた。
だがその一方で心中穏やかではないのは梢である。
「では河内さん、一枚脱いで頂きましょう」
「あ……うう……」
恥ずかしすぎるポーズを回避したが、その先に待っているのは男子も見ている前で下着を脱ぐという恥ずかしすぎる行為。もう結果が出た後で、どっちがマシだったか考えて後悔してしまう。
「ちなみに脱がない場合は、私が魔法で脱がせます」
「脱ぐから! ちゃんと脱ぐからー!」
梢は腰を下ろしたままで、グレーのショーツを下ろし脚から抜いた。
「おおっ、梢ちゃん下からいった!」
「実況しないでください!」
梢は脚をぴったり閉じて両手で股間を押さえながら立ち上がる。前をバッチリ隠しても、一馬の方からはぷりんと形の良いお尻が丸見え。小麦色の肌に程よい肉付きがレオタード映えする美尻である。
お尻を隠すように前を向くが、それはそれで手だけで下腹部を隠した下半身裸の姿を見られるわけであり、目を回しそうになるほど恥ずかしい。
(お尻見られたお尻見られたお尻見られたっっ!! ていうか好きな人になら裸を見られても嫌ってほどじゃないって思ってたけど、いざ見られたらやっぱ無茶苦茶恥ずかしいっ!!)
ちょっと泣きそうになりながら一馬の方を見てみれば、あちらはこちらをまっすぐ見ている。しかしやはり表情の変化は見られなかった。
(何でこの状況でそんな真顔なの!?)
ますます泣きそうになる梢であった。
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