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18 勝手にしてください。ね?
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「まあ良い。取り敢えず、この鍵をやるからここの図書室でトゥヤルについて少しは学んでおけ。まだ時間があるからな。」
そして、割と錆びている(あとボロ、、、いやなんでもない)鍵と小さな紙を手渡された。
紙には、いくつもある四角と細い線で何かが書かれていた。
、、、分かった、地図だ。
「王子、なんで先程は渡してくださらなかったのですか!」
「お前が困っている顔を見るのが楽しいからだ。」
、、、ヤバい人がここにいます!治安騎士の皆さん、、、って、いなかったんだった。。。
地図を頼りに行けば、すぐに目当ての図書室の場所は分かった。
今にして思うが、神殿にあった本に探検家のセルフィオ・フェルナン・ミレレスのことが書いてあったが、彼のような探検家はすごい。迷っても私のように半分パニック気味になることすらなく冷静にいることができるのだから。
ある意味、そこは見習いたい。
図書室の内部は、昼なのに暗かった。明かりをつけると、室内の惨状が分かった。
ホコリだらけだし、机や椅子には本がうず高く積まれて崩れそうだ。本棚からも本がはみ出し、ひどいものでは床に落ちている。
、、、本に対する冒涜とみなしていいよね?というより、これが王子の所有船なら掃除もしっかりしましょう。わたしに任せないで勝手にやってくださいよ。ね?
本がこれ以上こんな劣悪な場所に置かれていることが許せないので、ここはMade inわたしの魔術具の出番、っと。
「スタート・アップ」
服のポケットにあった小さな箱のような魔術具を取り出してから唱える。すると、とりあえず室内にあった誇りが全て箱の中に消え去った。部屋はきれいになった。反対に、箱の中は見たくないほど汚いんだろうけど。
少しは地面がきれいになったから良し。わたしは汚いところはもちろん嫌だ。貴族出身だとかきれいな神殿にいたからだとかそういうのではなくて。それは断じて違う。たぶん。
さて、残ったそこら中に散らばっている本を手でいちいち戻していくだけの体力と忍耐力と心の余裕が現在のわたしにはないので、それは後で王子に前述の理由のとおりやっていただくことにする。ただ、床に落ちているのは可哀想なので拾ったりはするけど。
椅子と机、両方を綺麗にして最低限の衛生的な部屋を作るのにどれくらいかかったのだろうか。気持ち的には鐘一つ分くらいかかった気がする。
わたしは、机においてあったひときわ重厚そうな本を手に取る。キラキラで豪華だが、錆びている。錆びていなかったらきれいなのに。題名らしき物は書いてあるものの、わたしには読めない。おそらく、向こうの言語を使っているのだろう。残念だ。それでも、読んでみないことにはわからない。
一ページ目。
そこで、文字の種類が激変した。
表紙と同じ、わたしには読めない文字から、わたしの知っているノヴォメアの文字へと。
確かに、変化していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
聖典~現代トゥヤル神聖語訳版~
第一条 創世神の降臨
はじめに、創世神アイベルクがこの世界に降り立った時は、この海とその他の島々は魔の戦乱の時代の中にありました。その戦乱という汚れは甚だしいもので、人々は他人から奪い、自分のものにすることを何よりの幸福である、と歪んだ価値観を持つようになりました。そして、一つ物を手に入れた瞬間から、また違うものを欲しがるようになるのです。
これを愚かに思ったアイベルク神は汚れていた海と島々を押し流し、果ては海の底に沈めてしまわれたのです。そしてそこにいた人間に、平和を説かれたのです。
もちろん、ほとんどの人間はそれを聞き入れようともしませんでした。当然の結果です。
神はお怒りになり、この人間たちを殺してしまわれました。
しかし、愚かでない人間もまたいたのです。
彼らはアイベルク神を敬い、回心したのです。
アイベルク神は六つのことを彼らに課しました。
一、すべてのものが平等であること。
一、感謝の心を持つこと。
一、人間を信じること。
一、盗みなどの罪をしないこと。
一、週のうちの一つの日を必ず休みにし、その日は家で聖典を読むこと。
一、神と預言者を敬うこと。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まだまだ続いているはずだが、わたしは読みたくなくなった。
、、、なんというか、うん。感想を言いにくい神話だ。強いて言うなら、残虐?いや、ノヴォメアの聖典も最高神が争いの神と不幸の女神と残虐の神が手を組んで反乱を起こした(しかも人間を操って)ときに、とてもとても大きい巨大なドラゴンを呼んで全員虐殺してたけど。神話って意外と残虐エピソードが多いんだよね。
わたしの持っている聖典は、神の色々な話とか、神が原初に定めた「賢人」にのみ伝えた特別な魔法と魔法陣、聖呪をまとめたものだ。けれど、この聖典はおそらく違う。多分、ちょっと見ただけでそういうのではなさそうだとわかる。じゃあ何が書いてあるの、というのは考えたくない。
というより、わたしがここへ連れてこられたらしい理由ってこれだったんだ。へ~。
わたしが大きなため息を付いた瞬間、上からあの王子の声がした。
「おい、あともう少しで到着だ。本にどうせハマっているのだろうから、そろそろ戻ってこい。置いて行くぞ」
あれ、おいていって困るのは王子じゃなくて?
しかも、なんで文字が一瞬にして私の読めるものへと変わったの?
疑問がいっぱいだ。
そして、割と錆びている(あとボロ、、、いやなんでもない)鍵と小さな紙を手渡された。
紙には、いくつもある四角と細い線で何かが書かれていた。
、、、分かった、地図だ。
「王子、なんで先程は渡してくださらなかったのですか!」
「お前が困っている顔を見るのが楽しいからだ。」
、、、ヤバい人がここにいます!治安騎士の皆さん、、、って、いなかったんだった。。。
地図を頼りに行けば、すぐに目当ての図書室の場所は分かった。
今にして思うが、神殿にあった本に探検家のセルフィオ・フェルナン・ミレレスのことが書いてあったが、彼のような探検家はすごい。迷っても私のように半分パニック気味になることすらなく冷静にいることができるのだから。
ある意味、そこは見習いたい。
図書室の内部は、昼なのに暗かった。明かりをつけると、室内の惨状が分かった。
ホコリだらけだし、机や椅子には本がうず高く積まれて崩れそうだ。本棚からも本がはみ出し、ひどいものでは床に落ちている。
、、、本に対する冒涜とみなしていいよね?というより、これが王子の所有船なら掃除もしっかりしましょう。わたしに任せないで勝手にやってくださいよ。ね?
本がこれ以上こんな劣悪な場所に置かれていることが許せないので、ここはMade inわたしの魔術具の出番、っと。
「スタート・アップ」
服のポケットにあった小さな箱のような魔術具を取り出してから唱える。すると、とりあえず室内にあった誇りが全て箱の中に消え去った。部屋はきれいになった。反対に、箱の中は見たくないほど汚いんだろうけど。
少しは地面がきれいになったから良し。わたしは汚いところはもちろん嫌だ。貴族出身だとかきれいな神殿にいたからだとかそういうのではなくて。それは断じて違う。たぶん。
さて、残ったそこら中に散らばっている本を手でいちいち戻していくだけの体力と忍耐力と心の余裕が現在のわたしにはないので、それは後で王子に前述の理由のとおりやっていただくことにする。ただ、床に落ちているのは可哀想なので拾ったりはするけど。
椅子と机、両方を綺麗にして最低限の衛生的な部屋を作るのにどれくらいかかったのだろうか。気持ち的には鐘一つ分くらいかかった気がする。
わたしは、机においてあったひときわ重厚そうな本を手に取る。キラキラで豪華だが、錆びている。錆びていなかったらきれいなのに。題名らしき物は書いてあるものの、わたしには読めない。おそらく、向こうの言語を使っているのだろう。残念だ。それでも、読んでみないことにはわからない。
一ページ目。
そこで、文字の種類が激変した。
表紙と同じ、わたしには読めない文字から、わたしの知っているノヴォメアの文字へと。
確かに、変化していた。
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聖典~現代トゥヤル神聖語訳版~
第一条 創世神の降臨
はじめに、創世神アイベルクがこの世界に降り立った時は、この海とその他の島々は魔の戦乱の時代の中にありました。その戦乱という汚れは甚だしいもので、人々は他人から奪い、自分のものにすることを何よりの幸福である、と歪んだ価値観を持つようになりました。そして、一つ物を手に入れた瞬間から、また違うものを欲しがるようになるのです。
これを愚かに思ったアイベルク神は汚れていた海と島々を押し流し、果ては海の底に沈めてしまわれたのです。そしてそこにいた人間に、平和を説かれたのです。
もちろん、ほとんどの人間はそれを聞き入れようともしませんでした。当然の結果です。
神はお怒りになり、この人間たちを殺してしまわれました。
しかし、愚かでない人間もまたいたのです。
彼らはアイベルク神を敬い、回心したのです。
アイベルク神は六つのことを彼らに課しました。
一、すべてのものが平等であること。
一、感謝の心を持つこと。
一、人間を信じること。
一、盗みなどの罪をしないこと。
一、週のうちの一つの日を必ず休みにし、その日は家で聖典を読むこと。
一、神と預言者を敬うこと。
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まだまだ続いているはずだが、わたしは読みたくなくなった。
、、、なんというか、うん。感想を言いにくい神話だ。強いて言うなら、残虐?いや、ノヴォメアの聖典も最高神が争いの神と不幸の女神と残虐の神が手を組んで反乱を起こした(しかも人間を操って)ときに、とてもとても大きい巨大なドラゴンを呼んで全員虐殺してたけど。神話って意外と残虐エピソードが多いんだよね。
わたしの持っている聖典は、神の色々な話とか、神が原初に定めた「賢人」にのみ伝えた特別な魔法と魔法陣、聖呪をまとめたものだ。けれど、この聖典はおそらく違う。多分、ちょっと見ただけでそういうのではなさそうだとわかる。じゃあ何が書いてあるの、というのは考えたくない。
というより、わたしがここへ連れてこられたらしい理由ってこれだったんだ。へ~。
わたしが大きなため息を付いた瞬間、上からあの王子の声がした。
「おい、あともう少しで到着だ。本にどうせハマっているのだろうから、そろそろ戻ってこい。置いて行くぞ」
あれ、おいていって困るのは王子じゃなくて?
しかも、なんで文字が一瞬にして私の読めるものへと変わったの?
疑問がいっぱいだ。
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