桜のように散りゆく君へ

桜蛇あねり

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「桜って本当に素敵だよね。綺麗に咲いて、綺麗なまま散っていく」

 毎年桜を見に来ると、決まって美桜はそう言った。

「私、今が最高に綺麗だと思うの。だから、今散るのが一番綺麗な最期だよね」

 そう言って彼女は展望台の端へ進み.....。




『桜のように散りゆく君へ』




「今年は寒さが長引いたから、桜の開花が遅いんだって」


 3月中頃。美桜は期間限定の桜ドーナツを頬張りながらそうぼやいた。彼女の言葉を聞き、俺は確かにそうだな、と窓の外に視線をやる。大学にあるカフェから見える桜の木は、3月半ばなのに一向に咲く気配が見られなかった。

「今年の開花は4月上旬頃らしいよ。去年は3月半ばくらいだったのにね。あーあ、新学期になったばかりの忙しい時期に開花かぁ....」

 大学2年生が終わり、来月から俺と美桜は3年生になる。授業でゼミがスタートしたり、サークルでも上の立場になったりで、忙しくなるだろう。特に新学期が始まったばかりの4月なんてなおさらだ。

「そうだな、新しい授業の準備とか、サークル勧誘とか、忙しい時期だよな。でもま、無理やりにでも予定空けるさ。今年も桜を見に行こう」

「うんっ!行く行く!ありがとね、大樹!」



 俺と美桜は大学1年生の時に出会った。大学の施設についてや、講義のとり方などの説明が行われる、最初のレクリエーションで、隣の席にいたのが美桜だ。

 ぼーっとしながら、説明を聞いていると、突然隣の席に座っていた美桜が俺の肩に触れてきた。突然のボディタッチに驚いていると、彼女はくすりと笑いながら、

「肩に桜の花びらついてたよ」

 そう言って俺の肩から掬いとった桜の花びらを見せてきた。

「あ、あぁ、ありがとう」

 ドキマギしながらなんとか言葉をふりしぼる。女性になれてないわけじゃないが、その可愛らしい笑顔でそんなことを言われたら.....誰だってドキドキするだろう。思えば、その瞬間から俺は恋に落ちていたのかもしれない。

 それが、俺と美桜の出会いだ。


「来月から3年生。就活始まるの、憂鬱だなぁ」

 桜のドーナツを食べ終えた美桜は、桜ラテを飲みながらつぶやいた。桜が咲いていれば、視覚も味覚も桜づくしなティータイムになっていな、とぼんやり考えていた俺の脳に、”就活”という単語がぐさりとささる。

「もう就活のこと考えてんの?」

「当たり前じゃん!早めの行動をしたものが、就活を制するのだよ!」

 就活なんて考えるのは3年の終わりごろ、むしろ4年生になってからでもいいや、と考えていた。でも、確かによくよく思い出すと、3月終わりに内定を貰っている先輩もたくさんいた気がする。

「意識たけぇ。まぁでも確かに3年生の冬頃に内定もらってた先輩いたわ。俺、4年生からでいいやって思ってたのに」

 俺の発言に、美桜は得意そうに人差し指をたて、ちっちっちっと軽く左右に振る。

「企業によっては、早くから内定出すところもあるからね!早く内定もらって、4年生は思う存分遊ぶんだ!」

「なるほどな。じゃ、俺も早めにがんばるとするかな」

 美桜は何事にも積極的で、先のことを考えて行動する。その姿に感化され、彼女と付き合ってからは俺も積極的に行動できるようになった。だから今回の就活も、先のことだと考えず、美桜と一緒に頑張ろうと思えた。たぶん彼女と付き合ってなかったら、俺の就活は4年生から始まっていただろう。

「おうよ!じゃあ今年のお花見は、就活がんばるぞ!の決意のお花見、来年のお花見は、祝!内定!おめでとうお花見!で決定だね!」

「おっけ。............もし俺が内定もらえてなかったら、泣!難航!就活ファイトお花見!にして慰めてくれ」

「あっはは!なに弱気になってんのさ!」


 バシバシと俺の肩を叩きながら、美桜は楽しそうに笑っていた。
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