1 / 10
1
しおりを挟む
「桜って本当に素敵だよね。綺麗に咲いて、綺麗なまま散っていく」
毎年桜を見に来ると、決まって美桜はそう言った。
「私、今が最高に綺麗だと思うの。だから、今散るのが一番綺麗な最期だよね」
そう言って彼女は展望台の端へ進み.....。
『桜のように散りゆく君へ』
「今年は寒さが長引いたから、桜の開花が遅いんだって」
3月中頃。美桜は期間限定の桜ドーナツを頬張りながらそうぼやいた。彼女の言葉を聞き、俺は確かにそうだな、と窓の外に視線をやる。大学にあるカフェから見える桜の木は、3月半ばなのに一向に咲く気配が見られなかった。
「今年の開花は4月上旬頃らしいよ。去年は3月半ばくらいだったのにね。あーあ、新学期になったばかりの忙しい時期に開花かぁ....」
大学2年生が終わり、来月から俺と美桜は3年生になる。授業でゼミがスタートしたり、サークルでも上の立場になったりで、忙しくなるだろう。特に新学期が始まったばかりの4月なんてなおさらだ。
「そうだな、新しい授業の準備とか、サークル勧誘とか、忙しい時期だよな。でもま、無理やりにでも予定空けるさ。今年も桜を見に行こう」
「うんっ!行く行く!ありがとね、大樹!」
俺と美桜は大学1年生の時に出会った。大学の施設についてや、講義のとり方などの説明が行われる、最初のレクリエーションで、隣の席にいたのが美桜だ。
ぼーっとしながら、説明を聞いていると、突然隣の席に座っていた美桜が俺の肩に触れてきた。突然のボディタッチに驚いていると、彼女はくすりと笑いながら、
「肩に桜の花びらついてたよ」
そう言って俺の肩から掬いとった桜の花びらを見せてきた。
「あ、あぁ、ありがとう」
ドキマギしながらなんとか言葉をふりしぼる。女性になれてないわけじゃないが、その可愛らしい笑顔でそんなことを言われたら.....誰だってドキドキするだろう。思えば、その瞬間から俺は恋に落ちていたのかもしれない。
それが、俺と美桜の出会いだ。
「来月から3年生。就活始まるの、憂鬱だなぁ」
桜のドーナツを食べ終えた美桜は、桜ラテを飲みながらつぶやいた。桜が咲いていれば、視覚も味覚も桜づくしなティータイムになっていな、とぼんやり考えていた俺の脳に、”就活”という単語がぐさりとささる。
「もう就活のこと考えてんの?」
「当たり前じゃん!早めの行動をしたものが、就活を制するのだよ!」
就活なんて考えるのは3年の終わりごろ、むしろ4年生になってからでもいいや、と考えていた。でも、確かによくよく思い出すと、3月終わりに内定を貰っている先輩もたくさんいた気がする。
「意識たけぇ。まぁでも確かに3年生の冬頃に内定もらってた先輩いたわ。俺、4年生からでいいやって思ってたのに」
俺の発言に、美桜は得意そうに人差し指をたて、ちっちっちっと軽く左右に振る。
「企業によっては、早くから内定出すところもあるからね!早く内定もらって、4年生は思う存分遊ぶんだ!」
「なるほどな。じゃ、俺も早めにがんばるとするかな」
美桜は何事にも積極的で、先のことを考えて行動する。その姿に感化され、彼女と付き合ってからは俺も積極的に行動できるようになった。だから今回の就活も、先のことだと考えず、美桜と一緒に頑張ろうと思えた。たぶん彼女と付き合ってなかったら、俺の就活は4年生から始まっていただろう。
「おうよ!じゃあ今年のお花見は、就活がんばるぞ!の決意のお花見、来年のお花見は、祝!内定!おめでとうお花見!で決定だね!」
「おっけ。............もし俺が内定もらえてなかったら、泣!難航!就活ファイトお花見!にして慰めてくれ」
「あっはは!なに弱気になってんのさ!」
バシバシと俺の肩を叩きながら、美桜は楽しそうに笑っていた。
毎年桜を見に来ると、決まって美桜はそう言った。
「私、今が最高に綺麗だと思うの。だから、今散るのが一番綺麗な最期だよね」
そう言って彼女は展望台の端へ進み.....。
『桜のように散りゆく君へ』
「今年は寒さが長引いたから、桜の開花が遅いんだって」
3月中頃。美桜は期間限定の桜ドーナツを頬張りながらそうぼやいた。彼女の言葉を聞き、俺は確かにそうだな、と窓の外に視線をやる。大学にあるカフェから見える桜の木は、3月半ばなのに一向に咲く気配が見られなかった。
「今年の開花は4月上旬頃らしいよ。去年は3月半ばくらいだったのにね。あーあ、新学期になったばかりの忙しい時期に開花かぁ....」
大学2年生が終わり、来月から俺と美桜は3年生になる。授業でゼミがスタートしたり、サークルでも上の立場になったりで、忙しくなるだろう。特に新学期が始まったばかりの4月なんてなおさらだ。
「そうだな、新しい授業の準備とか、サークル勧誘とか、忙しい時期だよな。でもま、無理やりにでも予定空けるさ。今年も桜を見に行こう」
「うんっ!行く行く!ありがとね、大樹!」
俺と美桜は大学1年生の時に出会った。大学の施設についてや、講義のとり方などの説明が行われる、最初のレクリエーションで、隣の席にいたのが美桜だ。
ぼーっとしながら、説明を聞いていると、突然隣の席に座っていた美桜が俺の肩に触れてきた。突然のボディタッチに驚いていると、彼女はくすりと笑いながら、
「肩に桜の花びらついてたよ」
そう言って俺の肩から掬いとった桜の花びらを見せてきた。
「あ、あぁ、ありがとう」
ドキマギしながらなんとか言葉をふりしぼる。女性になれてないわけじゃないが、その可愛らしい笑顔でそんなことを言われたら.....誰だってドキドキするだろう。思えば、その瞬間から俺は恋に落ちていたのかもしれない。
それが、俺と美桜の出会いだ。
「来月から3年生。就活始まるの、憂鬱だなぁ」
桜のドーナツを食べ終えた美桜は、桜ラテを飲みながらつぶやいた。桜が咲いていれば、視覚も味覚も桜づくしなティータイムになっていな、とぼんやり考えていた俺の脳に、”就活”という単語がぐさりとささる。
「もう就活のこと考えてんの?」
「当たり前じゃん!早めの行動をしたものが、就活を制するのだよ!」
就活なんて考えるのは3年の終わりごろ、むしろ4年生になってからでもいいや、と考えていた。でも、確かによくよく思い出すと、3月終わりに内定を貰っている先輩もたくさんいた気がする。
「意識たけぇ。まぁでも確かに3年生の冬頃に内定もらってた先輩いたわ。俺、4年生からでいいやって思ってたのに」
俺の発言に、美桜は得意そうに人差し指をたて、ちっちっちっと軽く左右に振る。
「企業によっては、早くから内定出すところもあるからね!早く内定もらって、4年生は思う存分遊ぶんだ!」
「なるほどな。じゃ、俺も早めにがんばるとするかな」
美桜は何事にも積極的で、先のことを考えて行動する。その姿に感化され、彼女と付き合ってからは俺も積極的に行動できるようになった。だから今回の就活も、先のことだと考えず、美桜と一緒に頑張ろうと思えた。たぶん彼女と付き合ってなかったら、俺の就活は4年生から始まっていただろう。
「おうよ!じゃあ今年のお花見は、就活がんばるぞ!の決意のお花見、来年のお花見は、祝!内定!おめでとうお花見!で決定だね!」
「おっけ。............もし俺が内定もらえてなかったら、泣!難航!就活ファイトお花見!にして慰めてくれ」
「あっはは!なに弱気になってんのさ!」
バシバシと俺の肩を叩きながら、美桜は楽しそうに笑っていた。
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる