とあるTSFによってアンチの日常は終了してしまいました。

型抜久遠

文字の大きさ
15 / 32
チュートリアル

14.無転還機 前編

しおりを挟む
14.無転還機 前編

 そこに広がっていたのは、研究所という肩書きは伊達じゃないというくらい、奇天烈な光景だった。

 フロアを丸ごと利用した広い空間。
 壁には幾つものモニターが絶えず数字とグラフを映し、高校生には用途の知れない機械類が所狭しに並んでいる。
 地下ということもあって窓は存在せず、モニターと機械の放つ蛍光が照明代わり。
 何百本というコードが樹海の根っこみたく床全体に張り巡らされ、各所に怪人がインされてても不思議じゃない等身大な容器には、濃緑色をした培養液が満たされている。

 まるで秘密基地。しかも、雰囲気的には正義側ではなく悪の秘密結社みたいだなというのが、素直な感想だった。
 根っからの男子として、こういうのは心躍るものがあったが、事態が切迫していなければ楽しめただろう。
 そんな研究所を眺めていた俺は、部屋の中央にある一際大きな機械装置に目がとまる。

 研究所の中心に存在するのは、玄関ロビーで見かけた巨大な柱だった。

 その柱は上で見かけた時の無機質な姿とは違い、目の前の柱は電子的な姿をさらけ出している機械装置だ。
 どうやら、研究所のあらゆる機械や設備は、すべてこの巨柱へと繋がっているらしい。
 そして巨柱両端には窓付きの小箱ほどの空間が二つ存在し、左右対称に並んでいる。

 その片側に配置されていたものは、紅い水晶を思わせる鉱物だった。
 それって、たしか……。

「それは【紅隕鉄】。3年前に地球に墜ちてきた隕石の片割れよ」

 背後から伊織が話しかけてくる。伊織はいつの間にやら、白衣を羽織っていた。
 ……うん、それだけでなんかいかにも科学者って感じになる不思議。

「大転変を引き起こした隕石が地上で発見されたとき、〝赤〟と〝青〟、二つが存在したのよ。そして、ウイルスも二種類あったことが確認されているわ」
「二種類?」
「青い輝きを放つ【蒼隕鉄】は〝女を男に変えるウイルス〟を、赤い光を放つ【紅隕鉄】は〝男を女に変えるウイルス〟が検出された。これら二つがあの大転変を引き起こした。ここまでなら一般でも報道されていることだから知っているはずよね?」
「ああ……」

 もっとも、こっちの〝赤い方の隕石〟を直接お目に掛かるのは初めてだけどな。

「当時はこれら二つの隕石が大転変を引き起こした原因と考えられていた。……でも、違っていたの」
「えっ……?」
「実際にはもう一つ〝三つ目〟の隕石が存在していたことがあたしたち……いえ、あたしの研究によって判明したわ」
「三つ目……だと?」
「そうよ。それが地球に突入する時に砕ける前の【蒼隕鉄】と【紅隕鉄】が合わさっていた原初の姿。あたしはこの三つ目の隕石を【紫隕鉄】と名付けて研究を続けてきたわ」
「そのまんまだな」
「そこ、話の腰を折らない。……コホン。そして、この装置こそが研究の成果よ! これこそがこの世に蔓延る反転者どもの性別を元に戻して、この忌々しい反転世界を終わらせることができる究極の装置。その名も【無転還機アンチトランス】なのよ!」

 伊織は巨柱【無転還機】の前に立つと、我が子のように説明が始まった。

「簡単に説明すると、この【無転還機】は大転変の時に隕石が爆発したのと同じ衝撃を再現させる機械と思ってくれていいわ。そうすることで、隕石に含まれているワクチンの原料を抽出することができるの。そして当然、あたしは既にワクチンの試作品の開発に成功しているわ!」
「……で、そのワクチンの試作品はどこにあるんだ?」
「さっきあなたに打ち込んだヤツがそうよ」

 え……それって?

「木枯くんを女の子に変えたのがワクチンの試作品。今、【無転還機】に設置しているのとは違う【紅隕鉄】から抽出したもので、男を女に変える効果があったんだけど、無転換者にしか効果を発揮できないのよ」
「ようするにワクチンじゃなく、ウイルスの原液じゃねえかそれ!」
「だーかーらー! それは試作品なんだってば! 本来の予定されていたのとは違う形で出来上がってしまった副産物なのよ」
「予期せぬ、副産物?」

 伊織はハッと口元を押さえてコホンと咳払い。

「ほ、本当のワクチンはね。この装置の左右対称に同じ質量の【紅隕鉄】と【蒼隕鉄】を配置して、二つ同時に砕く必要があったの。そして粒子レベルまで分解された隕石を再び再構築することで【紫隕鉄】を再現させて、その後で抽出しないといけなかったの。試作品は……その過程でちょっとした不具合が起きてしまった失敗作ね」
「そんな失敗作を俺に使ったのかよ!」
「あーもー! うるさい! ええ、そうよ。でもそれがなんだっていうのよ! あたしが今度こそ【無転還機】を正しい形で成功させて、完全なワクチンを作り出してしまえば済むことでしょ! そしたらあんたの女の子になった身体だってすぐ元通りなんだから、ぶつくさ言ってるんじゃないわよ、男のくせに!」

 最低だ! なんというか、人として最低だこいつ……。

「でもね。この装置でワクチンを作り上げるために、今、一つだけ足りないものがあるの」
「なんだよそれは?」
「……【蒼隕鉄】よ。この街の裏山に墜ちたとされている隕石の欠片」
「――――ッ!?」
「さあ、木枯くん。怒らないから、とっととあなたが3年前に持ち出した隕石【蒼隕鉄】を渡しなさい」

 全てを見透かしているような瞳で、伊織が手を差し出してきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...