とあるTSFによってアンチの日常は終了してしまいました。

型抜久遠

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TSレベル【1】

23.反転者(真)×反転者(?) 前編

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23.反転者(真)×反転者(?) 前編

 そして昼休みになった。

 ここ、片梨高校の屋上は閑散としていた。
 いくら五月とはいえ、高所でしかも風を遮るものが無い屋上の気温はえらい寒さだ。
 どうして俺、木枯荒野がこんな場所に来なければならなかったのかというと、昼休みに入って間もなく、伊織から『あとで屋上に来なさい。今後のあた――僕たちのことで話があるから』と、言い残して伊織は教室を出て行ったからだ。
 そんなわけで、寒波の避難所みたいになっている屋上にて、伊織を待っていたわけだが……。

「なんで紅葉もここにいるんだ?」

 俺の隣には幼馴染である庭咲紅葉が居座っていた。

「それがさー。伊織ちゃんから『あんたも事情を知ってしまったんだから来なさい!』って言われちゃって来たんだよね」

 詳しい内容は紅葉も知らされていないようだ。
 一応、紅葉も俺が女の反転者になってしまった現場に出くわしていることもあり、それで呼ばれたのかもしれない。

「それにしてもさ、こーやー」
「な、なんだよ」
「体育のあと、荒野と伊織ちゃんは一緒に遅れて教室に戻ってきたじゃないか? 二人は同じ無転換者用の更衣室を使っているんだよね? それで遅れたってことは……なにかあったりなかったり、しちゃったりー? キシシシ」

 さっそくとばかりに、紅葉は悪戯小悪魔な笑みを浮かべながらキシシシとちょっかいをかけてきた。
 しかし、それは想定通りのパターンであったため、俺は特に表情を崩すことなく対応する。

「別に、伊織が反転者反転者って愚痴ってたのを聞いてて遅れただけだ」

 うん、嘘は言っていない。
 だが、時間が掛かってしまった本当の原因は【五転盟】を名乗る黒仮面に絡まれて、理解しがたい反転者界隈の世界観やら専門用語を延々と垂れ流し続けられたことにあるわけだが。
 それをわざわざ幼馴染である紅葉に話す必要も無いので誤魔化すことにする。(反転者である紅葉がトラブルに巻き込まれてほしくないのもあるけど)

「へー……意外だね」
「なんだよ。あいつの反転者嫌いなのはお前も知っているだろ」
「そうじゃなくてね。昨日まで無転換者の〝男の子〟だった荒野が、無転換者で本物の〝女の子〟である伊織ちゃんとよく〝同じ更衣室〟で着がえることができたなーって感心しているんだよ」

 ――そっちか!
 いや、それはそれで色々ドキドキしたりとかはあったけど、それ以上にあの黒仮面が全部持っていってしまったわけだけど……。

「……そうか。何事もなければ、そっちが問題になるんだよな」
「んー? ナニが何事もで問題なのかなー?」

 そういう話題は逃すまいとする色欲センサー付き幼馴染の小悪魔イヤー。狙い所を見定めた紅葉はさらに追撃を開始しようとしていた。

「べ、別に、なんでもないったらなんでもないんだよ! それより紅葉こそ、遅れて教室に戻ってきたのはどうしてだよ?」

 そちらサイドの話題についてはなんら対応策もできてないノーガードであるため、強引にでもこの話題から逸らしたかっただけなのだが……

「あー……えっと、それは……」

 思いのほか、押せ押せ紅葉の勢いが衰え、歯切れが悪くなった。

 俺と伊織は体育のあと、遅れて教室に戻ってきたわけだが、その教室前の廊下で、ほんのタッチの差で紅葉が教室に戻っていくのが見えた。
 俺や伊織は黒仮面に絡まれて遅れてしまったわけだけど、そうなると紅葉はどうしてビリから三番目に教室に戻ることになってしまったのか?
 ただ、それだけの疑問であるだけのはずなんだが……。

「……まあ、あれだよ。〝お役所仕事〟は大変ってことかな」
「なんだそれ?」

 紅葉はその一言で問題を全部一纏めにして完結させた。
 俺もさほど疑問視してたわけじゃないし、話を終わらせたかった気持ちもあって、特に突っ込んだりもしなかった。

 それにしても、伊織はいつになったら来るんだろう?

 体育で消耗したためか、いつも以上の腹ペコになっていた。
 伊織が戻ってくる前に昼飯を平らげようとしたのだが、紅葉から伊織が来るまで待とうと提案されてしまい、俺たちは屋上のフェンスを背もたれにして伊織を待つ。

「そういえば、紅葉。【転則十戒】って知っているか?」
「転則? へえ、珍しいね。無転換者の荒野がそういうボクたち反転者側の事情を知っているなんてね」
「別に、あの反転者嫌いな伊織の愚痴を聞いていたら知っただけだよ」

 つい最近仕入れた反転者界隈の限定用語。試しに近場の反転者である紅葉に試し撃ちしてみると、割と感嘆とした反応が返ってきた。

「なあ、これって十戒っていうんだから、全部で十種類あるんだろ?」
「そうだよ」
「教えてくれないか? 伊織は口にするのも嫌だって全部教えてくれなかったんだ」

 そんな反転者代表として紅葉に聞いてみたのだが、紅葉はやや複雑な表情を作る。

「……いいけど、別に特別珍しいものじゃないよ。それは反転者として〝普通〟に過ごしていれば違反することもない、極々ありふれた反転者の規則なんだから」
「でも、反転者ならみんな知っているとかって言ってたぞ。これから元の性別に戻るまでの期間、形だけでも反転者でなければならないんだから、知らないっていうのは逆に怪しまれる理由になるかもしれないだろ」
「確かに……そうだね。わかったよ」

 そう言って、紅葉は一条目から順番に語りだす。

 第一条『反転者はこの転則十戒に従わなければならない』
 第二条『性別の変わった人間は、自身が反転者であることを自覚しなければならない』
 第三条『反転者は自分を無転換者だと偽ってはならない』
 第四条『反転者は現在の性別のルールに従わなければならない』
 第五条『反転者は性別が変わったことを理由にした問題を起こしてはならない』
 第六条『反転者間での問題が起きた場合、反転者間で解決しなくてはならない』
 第七条『無転換者の問題に反転者が手を出してはならない』
 第八条『五転盟と類似する組織を設立してはならない。あるいは〝六つ目〟を増やしてはならない』
 第九条『無転換者が転則十戒を破ったとしても、処罰対象には含まれない』

「そして第十条は……」
「『反転者を元に戻してはならない』……だろ?」

 こちらがその転則十戒最後の十条目を口にすると、紅葉はキョトンとした顔になる。

「そうだよ。よく知っているね」
「それだけは伊織から聞いていたんだ。でも、どうしてそんな〝反転者を戻してはならない〟なんて規則があるんだ?」

 これではまるで、伊織がワクチンを完成させると困るみたいな意味に聞こえてしまう。
 その辺の事情について、現行で反転者である紅葉なら知っているのではないかと思ったわけだが……。

「うーん。それについてはボクも、他の反転者の多くも知らないんじゃないかな?」
「意味が不明なのに従っているのか?」
「伊織ちゃんからワクチンの話を聞くまで縁の無かった部分だしね。もし知っている人がいるとするなら、それは五転盟の、それもこの転則十戒を作り出した人くらいだよ」
「そう……なのか?」
「ただね。ボクたち反転者の間では第十条が破られてしまうと〝終わってしまう〟からだと噂されているよ」
「終わる? なにが終わってしまうんだ?」
「さあ」

 ますます意味が分からなくなった。

「でも、反転者として3年間過ごしてきた人たちは、それがなんなのか薄々気付き始めているかもね……」
「え?」

 紅葉はそれを知っているのかと聞こうとした時、

「そ・れ・よ・り・も。こーやー」
「な、なんだよ」
「荒野はさ、女の子の身体になったあと、昨日はどこまで〝試した〟のかにゃー?」
「は?」

 突然、紅葉はそんなすっとんきょうな話題をにやけ顔で聞いてきた。

「いや、特に何もしていないけど」
「いやいやいや。せっかく女の子になったんだよ。そしたらさ、ワクワクとした気持ちに突き動かされて、ついついやってしまうことってあるんじゃないの?」
「だからなんのことだよ?」

 俺が紅葉の意図していることを読み取れないでいると、紅葉は半ば呆れたように溜息をついた。

「し、信じられない。君はつい昨日まで健全な無転換者の男の子だったはずだよ。だったら【転則十戒】だの【五転盟】だの、そんな〝つまらない〟話題ばかり追い掛けるよりもさ、せっかく女の子になったわけだし、もっと〝愉しい〟ことに興味を向けるべきだとボクは思うんだ」
「愉しいことだと?」
「そうそう、例えば自分の思春期らしさをもっと表に出したり……とか?」

 やはり紅葉の言わんとしていることが分からない……が! それがロクでもないことだっていうのはなんとなく感じ取れた。

「荒野ってば、本当に分からないの?」
「あ、ああ……まったく」
「だって女の子になったんだよ! そうなったらまず胸を揉むよね? よね!」

「まあ……そう、だな?」

俺の場合、揉むというより揉まれたわけだがな。

「そしたらさ。そろそろ次のステップに移ってもいいんじゃないかな?」
「だから、なに、お……」

 紅葉はニヤニヤと頬を緩ませながら、俺への視線を外さず足を崩す。
 そのまま、紅葉はスカートの裾を掴むと、ゆっくりと上にめくり上げていく。
 自分のふくらはぎから太ももと、ほっそりとした綺麗な脚線美が露わになっていき……

「それまで完全な男の子だったんならさ……もっと、女の子の〝色々〟を試してみたいって思うもんでしょ」

 最後に指先でスカートを軽く弾いた。
 フワリと浮き上がったスカートの下にチラリと垣間見えたのは、ちょっと大人っぽい黒……の……ッ!!?
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