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社長の奴隷.24
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寛成の書いた求人のメッセージ欄に、「恋は頭でするんじゃない!熱いハートを持ったあなたをお待ちしています」とあった。
恋を頭で考えてきた信楽は、その言葉の真意を自分の目で確かめるため、この会社にやってきたのだ。
まだ、一週間もたっていないのに、自分が何だか変わってきているという実感がある。
ただ、それが恋に結びつくのかどうかは定かではないが・・・。
それにしても、藤巻さんに対する態度はマズかった。
自分の言動を自分の支配下に置けないような状態は信楽にとっては恐ろしかった。
恋は盲目という言葉を聞く。
もしかして、恋に落ちたら自分は自分じゃなくなてしまうのだろうか。
自分の知らない自分が出てくるのを楽しみに思うより、やはり不安に感じてしまう信楽だった。
今日はまだ月曜日だ。
寛成が帰ってくる予定の日曜まで藤巻さんと二人で何とかつながなければならない。
と言っても、自分は平日は夕方からの出勤だから、実質、藤巻さん一人でこなすことになる。
藤巻さん自身もこの仕事を初めて一年足らずだと言っていたのに・・・。
社長は若くして会社を立ち上げるだけの能力と行動力のある、いわば優れた部類の人間だ。
こう言ってはなんだが、藤巻さんは性格は決して悪くないし、やる気もあるけれど、能力面ではかなり苦労していることが伺える。
そう思うと、大学にいても、何だか会社のことが気になって、ソワソワと気持ちが落ち着かない。
信楽はプログラマーを目指し、理工学部に籍を置いている。
ウェブデザインは独学だ。
二つの能力を買われて、今のバイトにも合格した。
信楽の時給は二千円と高給であるのも、ウェブショップではその能力が売り上げに大きく影響することを社長がよく理解しているからでもある。
まあ、もちろん人体実験という特殊な仕事内容も時給には影響しているのだが。
社長は、新しく立ち上げる男性向けのサイトのデザインも全て、信楽に任せてくれた。
しかし、女性経験のない俺が作ったサイトが、特にそういう欲求が強い男性の購買意欲を刺激できるだろうか・・・。
「自信ないな・・・」
「お前が自信ないなんて、珍しいこと言ってるな」
食堂の片隅でひとり物思いにふけっていた信楽の肩を、同じく理工学部三年の美住真広(みすみまひろ)がポンっと叩いた。
美住には入学した当初から変になつかれ、その関係は今でも続いている。
「なんだ・・・美住か・・・」
無表情にやや不機嫌な表情が上乗せされ、信楽の今日の形相は知り合いでなければ声を掛けるのをはばかられるような仕上がりだ。
「あいかわらずつれないな・・・」
「で、何か用か」
「いや、久しぶりに誠之助のこと見つけたからつい・・・」
「なんだそれ、気持ち悪いな」
「仕方ないだろ、俺、お前の顔、好みなんだから」
「こ、好みって・・・。お前、本当におかしな奴だな」
「仕方ないだろう、お前みたいな無表情の奴の感情の変化を、誰も気付かないのに俺だけが気づいた時、どうしようもない位の快感が訪れるんだよな~。あ~、たまらん」
「変態め・・・」
「そうそう、そういう時も、少しだけ目つきが鋭くなるんだよね。くぅ~、どうしてみんなはこれに気がつかないんだ?」
「みんなお前みたいに暇じゃないんだよ」
「そうだよね~。俺みたいに、既に内定三つも貰ってる優秀な奴、そうそういないもんな~」
「・・・」
大口をたたいても、それに実力が伴っているのが癪に障る。
恋を頭で考えてきた信楽は、その言葉の真意を自分の目で確かめるため、この会社にやってきたのだ。
まだ、一週間もたっていないのに、自分が何だか変わってきているという実感がある。
ただ、それが恋に結びつくのかどうかは定かではないが・・・。
それにしても、藤巻さんに対する態度はマズかった。
自分の言動を自分の支配下に置けないような状態は信楽にとっては恐ろしかった。
恋は盲目という言葉を聞く。
もしかして、恋に落ちたら自分は自分じゃなくなてしまうのだろうか。
自分の知らない自分が出てくるのを楽しみに思うより、やはり不安に感じてしまう信楽だった。
今日はまだ月曜日だ。
寛成が帰ってくる予定の日曜まで藤巻さんと二人で何とかつながなければならない。
と言っても、自分は平日は夕方からの出勤だから、実質、藤巻さん一人でこなすことになる。
藤巻さん自身もこの仕事を初めて一年足らずだと言っていたのに・・・。
社長は若くして会社を立ち上げるだけの能力と行動力のある、いわば優れた部類の人間だ。
こう言ってはなんだが、藤巻さんは性格は決して悪くないし、やる気もあるけれど、能力面ではかなり苦労していることが伺える。
そう思うと、大学にいても、何だか会社のことが気になって、ソワソワと気持ちが落ち着かない。
信楽はプログラマーを目指し、理工学部に籍を置いている。
ウェブデザインは独学だ。
二つの能力を買われて、今のバイトにも合格した。
信楽の時給は二千円と高給であるのも、ウェブショップではその能力が売り上げに大きく影響することを社長がよく理解しているからでもある。
まあ、もちろん人体実験という特殊な仕事内容も時給には影響しているのだが。
社長は、新しく立ち上げる男性向けのサイトのデザインも全て、信楽に任せてくれた。
しかし、女性経験のない俺が作ったサイトが、特にそういう欲求が強い男性の購買意欲を刺激できるだろうか・・・。
「自信ないな・・・」
「お前が自信ないなんて、珍しいこと言ってるな」
食堂の片隅でひとり物思いにふけっていた信楽の肩を、同じく理工学部三年の美住真広(みすみまひろ)がポンっと叩いた。
美住には入学した当初から変になつかれ、その関係は今でも続いている。
「なんだ・・・美住か・・・」
無表情にやや不機嫌な表情が上乗せされ、信楽の今日の形相は知り合いでなければ声を掛けるのをはばかられるような仕上がりだ。
「あいかわらずつれないな・・・」
「で、何か用か」
「いや、久しぶりに誠之助のこと見つけたからつい・・・」
「なんだそれ、気持ち悪いな」
「仕方ないだろ、俺、お前の顔、好みなんだから」
「こ、好みって・・・。お前、本当におかしな奴だな」
「仕方ないだろう、お前みたいな無表情の奴の感情の変化を、誰も気付かないのに俺だけが気づいた時、どうしようもない位の快感が訪れるんだよな~。あ~、たまらん」
「変態め・・・」
「そうそう、そういう時も、少しだけ目つきが鋭くなるんだよね。くぅ~、どうしてみんなはこれに気がつかないんだ?」
「みんなお前みたいに暇じゃないんだよ」
「そうだよね~。俺みたいに、既に内定三つも貰ってる優秀な奴、そうそういないもんな~」
「・・・」
大口をたたいても、それに実力が伴っているのが癪に障る。
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