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エロ.40
しおりを挟む「どうぞ。どうしたの、鍵は失くしちゃった?」
美世は以前と変わらぬ様子で高広のことを迎えてくれた。
「ううん、違うけど・・・」
久しぶりに入る美世の部屋は彼女の香りで満ちていた。
もうそれだけで、堪らない苦しさが押し寄せて胸が痛くなる。
「合格おめでとう」
「ありがとう」
「元貴のことも、本当に感謝してる」
「ううん」
まるで何事もなかったように話す美世の考えていることが分からない。
「何か飲む?」
「いらない」
「今日は何かいつもと違うね」
いつもと同じ美世の態度の方が高広にしてみれば理解出来ない。
「元貴から何か聞かれなかった?」
「何かって?」
「逸子さんのこと・・・」
「ああ、徳馬君から聞いたって言ってたけど変ね」
「変って、徳馬が言ってた事間違ってるの?」
「だって、逸子は服部さんと結婚してるんだもん」
「だけど、徳馬は逸子さんの母親が話してるのを聞いたって」
「そう言われても、私も訳が分からないわ」
美世はあくまで徳馬の発言を認めようとしない。
高広自身が聞いたわけでなく、かといって逸子と服部の関係を確かめる術もない。
高広は途方に暮れた。
一体何が本当なんだ?
「俺、帰る」
「高広君・・・」
「おやすみ」
高広はこれ以上何をどう話したらいいのか分からなくなって、美世の部屋を飛び出してしまった。
家に帰ると深夜一時近かったが、元貴に『明日の昼いつものファミレスで会える?』とメッセージを送った。
すぐに『OK!』と返事が来た。
「よ!高広」
元貴は昨日の高広の様子が気になっていることなどおくびにも出さず、いつもの調子で笑った。
「昨日は徳馬の面倒押しつけて悪かった」
「別にいいよ。それより、急用ってのは大丈夫だったのか?」
「そのことなんだけど・・・」
高広は元貴に全てを打ち明けるわけにはいかなくて、だけどもう打つ手がないこの状況に困り果てていた。
「なんだよ、俺に言えない様なこと?」
「そういうわけじゃ」
いや、そういうわけだ。
「逸子さんのことだろ?」
「えっ・・・」
「俺がどれだけの間お前のそばにいたと思ってるんだよ。お前の様子がおかしくなったのは徳馬がその話をしてからだろ」
「いや、べつに・・・、本当に用事を思い出したんだ」
決して言うわけにはいかない。
美世を失って、さらに元貴まで失うことになったら立ち直れない。
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