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エロ.43
しおりを挟む店内に取り残された二人はしばらく無言のままコーヒーをすすっていた。
「なんだか腑に落ちないのはなんでだろう」
元貴がつぶやいた。
「俺もだ・・・」
高広もそれに同意した。
「これはもう徹底的にやるしかないな」
「徹底的って。あと誰に聞くんだよ」
「逸子さんだよ」
「はあ?どうやって」
「姉ちゃんはうまくごまかされる気がするし、服部さんに直接ってのはもう無理だろうし、あとは逸子さんの母親しかないな」
「それだって、どうやるんだよ」
「徳馬に聞きだしてもらおう」
「だからどうやって」
俺に考えがあると言って元貴は徳馬に連絡を入れた。
徳馬にことのいきさつをかいつまんで話した。
そして、徳馬の母親に出来るだけわざとらしくないように逸子の勤め先を聞き出してもらいたいと頼んだ。
『だけど、俺が逸子さんの勤め先聞くってどう考えてもおかしくないか?』
『それは、お前の話術次第だ。「そういえばさ~、この間来てたオバサン、誰だったか名前忘れちゃったけど、ほら、娘が仕事中毒だとか言ってた人」みたいな感じで』
『もう十分不自然だな』
『で、お前の母さんが乗って来たら、仕事中毒になるようなおもしろい仕事ってどんな仕事なの?」って』
『それで?』
『「俺も大学に合格したことだし、将来の仕事のこともちょっとは考えたりしてるんだ」みたいに、お前が真面目に聞いてるって思わせるんだ』
『ふうん、そんなんで上手くいくかな』
『とりあえずやってみてくれよ。徳馬、お前だけが頼りなんだ』
『そ、そうか?』
徳馬はそんな風に元貴に頼られたのは初めてで、やる気になってくれたようだ。
徳馬との話を終えた元貴に高広は不安げな表情を向けた。
「徳馬で大丈夫かな」
「それは言っちゃダメ」
「ははっ」
「とにかく今は徳馬に懸てみよう」
「そうだな」
本当に万策尽きた感じがある今、成功する可能性はかなり低いが、徳馬に頼るしかない。
翌日再び会う約束をして元貴と別れた。
「よう」
いつものファミレスにはすでに元貴と徳馬がやって来ていた。
「どうだったんだ?」
高広の胸中では期待と不安が交錯していた。
「大成功!」
徳馬が得意げに言った。
「本当に?」
高広は元貴の方を見た。
「ああ、徳馬の母さん今は完全に浮かれてるから、変に疑うこともなくスルッと教えてくれたって」
「それは・・・、よかった」
「だけど、これからがまたひと仕事だぞ」
元貴が表情を硬くする。
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