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君に溺れてしまうのは僕だから.20

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 武彦はいつものように伊織の服を脱がしていった。

 武彦の視線がいつもより鋭く感じられるのは気のせいだろうか。

 武彦は自分も全てを脱ぎ去り、伊織をベッドに促した。

 そして伊織の上に四つん這いになったまま、しばらくその瞳を見つめていた。

「彼とはもうキスしたのか」

 武彦は伊織に尋ねた。

「い、いえ、そういうことはしていませ…んんっ」

 伊織が答え終わる前に武彦はくちづけてきた。

 優しくついばむようなくちづけから、徐々に濃厚に変わっていく。

「んっ、んんっ…」

 武彦は角度を変え何度も何度もくちづけた。

 それはまるでくちづけという名の愛撫だ。

 お、おじさま…、何だか今日はいつもより…激し…。

 いつの間にか唾液が溢れ、ちゅっちゅっという濡れた音が部屋に響く。

「二人きりでいて何もしてないって?」

 チュッと音を立てて、武彦は伊織の乳房の先端を強く吸い上げた。

「ああっ!」
 
「坂口君は奥手なんだな」

 武彦は伊織を膝立ちにさせると後ろに回り、その首筋に舌を這わせた。

「あっ、はぁっ…」

 首筋にくちづけながら、後ろから回された手は伊織の乳房と秘部を同時に愛撫しはじめる。

「あっ、お、おじさまっ!」

 なぜか今日はベッドのそばの壁に大きな姿見が立てかけてある。

 そして、今まさに伊織はその鏡に自分と武彦の姿を見ていた。

 身体で感じる快感と、視覚から与えられる官能的な刺激で、伊織は気が変になりそうだ。

 おじさまの大きな手が、私の身体を這い回っている…。

 嬉しい。

 おじさま、私はおじさまのものです。

 武彦の愛撫を受けながら、伊織は幸福の絶頂にいた。

「伊織は彼とこういうことがしたいのか」

 その言葉を聞いた瞬間、伊織は天国から地獄へ突き落されたような気持ちになった。

「い、いえ…」

 伊織の言葉を聞いてもおじさまの愛撫は変わらず続いていた。

「だがつきあうというのはそういうことだ」

 武彦はそう言うと、伊織の身体をベッドの上で四つん這いにさせた。

 武彦は避妊具をつけると後ろから伊織の中に入ってきた。

「あああっ、おじさまっ!」

 いつも行われる、秘部への執拗な愛撫はないまま挿入された。

 武彦とつながった伊織の淫らな姿が、目の前の鏡にしっかりと映っている。

 あまり感情を表に出さない武彦の額に、首筋に胸元に汗が光っている。

 少しだけ乱れた前髪もたまらなくセクシーだ。

 普段直視できない武彦のそんな姿を目にして、伊織の心はいつも以上に乱された。

 おじさま…、私のこと嫌いになってないですか…?

 こうして愛してくださるんだから、嫌いなはずないですよね?

 おじさま…、おじさま…。

 伊織の切ない想いとは裏腹に、武彦は先を急ぐように腰を激しく動かすと伊織の中で達した。

 武彦は伊織の濡れた場所をタオルで拭い、服を着せてくれた。

「部屋へ戻りなさい」

 武彦の口調はごく普通のものに感じられる。

 伊織は武彦の感情を計り知ることができない。

「はい…」

 伊織は言われるまま自室に戻った。

 愛されたはずなのに何故だかどうしようもなく悲しくて、涙が溢れて仕方がなかった。
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