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君に溺れてしまうのは僕だから.21

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 翌日もその次の日も、武彦は伊織と身体を重ねた。

 しかし、やはり武彦の態度は今までとは明らかに違う。

 体中につけられていたキスマークはとうの昔に消え去っていた。

 伊織は武彦の気持ちを確かめられない苦しさを抱えたまま日曜日の朝を迎えた。



 坂口君からメッセージが届いていた。

「おっはよー!今日めっちゃ楽しみだ。3時ちょっと前には行くから。じゃあ、後で」

 伊織の気持ちなど知るはずのない坂口は彼氏として紹介されることを素直に喜んでいる。

 伊織は今日の午前の部活は休んだ。

 正直、部活に出ても練習に身が入るとは思えなかったから。

 だが、午後の3時まで家にいるというのもそれはそれで苦痛だ。

 伊織はスポーツウェアに着替えると、田所さんにランニングをしてくると伝えて家を出た。



 走りながらも頭の中は色々なことを考えてしまう。

 坂口君は気楽でいいな…。

 いつも落ち着いていて、家にいる時もだらけた格好などしない武彦はもちろんかっこいい。

 そんな武彦が伊織は大好きだ。
 
 ただ、武彦の前ではいつも緊張してしまうし、自分もちゃんとしていなければと頑張ってしまう気がする。

 その点、坂口君の様なタイプは全く気を遣う必要がなくて一緒にいても気楽だ。

 当然のことだが、そんな男の子にときめくことはないのだけれど。

 坂口君には申し訳ないが、いくら彼が伊織に熱をあげようともその気持ちが通じる可能性は限りなく低いだろう。

 伊織はランニングコースの途中にある公園に立ち寄ると、軽くストレッチと筋トレをした。

 ゆっくりとしたペースで走って家に着くと、お昼を少し過ぎていた。

 食卓では武彦が先に昼食をとっていた。



「おかえり」

 武彦は箸を止めて伊織の方をチラリと見た。

「ただいま帰りました」

「暑かっただろう」

「はい。シャワー浴びてきます」

「それがいい」

 武彦は食事を再開し、伊織はシャワーを浴びるため浴室へ向かった。

「旦那様、伊織さんのお客様にお出しするお菓子を取りに行ってきますので」

 そう言うと田所さんはエプロンを外して身支度を始めた。

「ああ、行ってらっしゃい」

 武彦は食べ終えた食器をシンクに運んだ。

「行ってまいります」

 田所さんはお菓子を注文してあるお店へと出かけて行った。


 時間にして1時間ほどの軽いランニングでも、さすがに真夏の昼間は暑くて、結構な汗をかいた。

 伊織は全身の汗をしっかりと洗い流した。
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