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御曹司のやんごとなき恋愛事情.37
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無事退院した優子は、ようやく新しい物件に引越しを済ませ、伊波との同棲生活をスタートさせた。
「何か、私のせいで延び延びになっちゃって、ごめんね」
「そんなこと全然構わないよ。俺はこうして優子と一緒に暮らせる日が来るなんて、今でも夢じゃないかと思うくらい嬉しいんだから」
「大げさね」
優子にとってはただの同居かもしれないが、伊波は時々会うだけでも未だにときめいてしまう優子が同じ屋根の下にいるというだけで、もう居ても立っても居られないくらい嬉しくて・・・、でも同じくら怖かった。
「優子、スマホ貸して」
「え~、また変なアプリ勝手に入れるんじゃないでしょうね」
「いいやその反対。ちゃんと見てて、アンインストールするから」
伊波は優子の居場所を特定する例の趣味の悪いアプリを削除した。
「あら、どういう風の吹きまわし?」
「これまではさ、やっぱり不安だったんだ。いくら言葉で言われてても、本当に一緒に暮らすなんて実現しないんだろうって」
「どうして?ちゃんと言ったのに。信じてなかったの?」
「そう言う訳じゃないけど。俺の方がビビりなだけだよ」
本当は違う・・・。
優子の気持ちが分からないからだ・・・。
こうして一緒に暮らすようになっても、いつかあの俊介という男が優子のことをさらって行ってしまうのではないかという、根拠のない不安に怯えてしまう。
ただ、同居を一応の区切りとして、いくらパートナーであっても、その行動のすべてを見ようとするのはやりすぎだと反省したのだ。
できることなら、その全てを管理したい気持ちはないと言ったら嘘になる。
それだけ自分の方が優子に惚れているのだから、仕方がない。
「伊波君っていうのもそろそろ卒業しようかな。賢二って呼んでいい」
これは、想像以上にくるな・・・。
伊波はグッと喉を鳴らした。
すでに伊波は優子と呼んでいるわけで、出来ることなら自分も下の名前で呼んでもらえたら、もっと距離が縮まる気はしていた。
だが、優子とつきあえて、一緒に暮らせるだけで伊波には十分すぎることなのだ。
その上そんなご褒美をもらったら罰が当たりそうだ。
「いやあ、なんだかめちゃくちゃ照れるな・・・」
「なによ、自分は私のこと優子って呼んでるくせに」
「そ、それは、昔からそうだったから・・・」
どんどん優子との距離が縮まっていく。
表向きは・・・。
それなのに何かが、何かが足りない気がする。
いや、贅沢を言うんじゃない。
これで十分じゃないか・・・。
伊波は自分の欲求がどんどん強くなっていくのを戒めた。
優子に嫌われたくない・・・。
何かおかしいと感じても、気づかないふりをしよう。
どんなことをしてでも、この生活を続けたい。
そして、いずれは優子と結婚するんだ。
「ねえ、私、スーパーに買い物に行ってくるわ」
「ああ、じゃあ俺は洗濯するよ」
「ありがとう、助かる。じゃあ行ってきます」
伊波は何でもそつなくこなすデキる男だ。
プライベートの生活もちゃんと自活できている。
俊介とは大違いだ。
しかし、それを差し引いても、優子が俊介を想う気持ちは伊波に対する気持ちには遠く及ばない。
そんなことは分かっているけど・・・。
仕事も出来て、生活力もあって、包容力もあって、容姿も俊介に引けを取らないのに・・・。
どうして自分の気持ちはずっと俊介に奪われたままなのだろう・・・。
だけど、誰かを好きな気持ちは損得勘定なんかで決まるものではないのだから仕方がない。
夕食をすませ、いよいよ二人暮らしの初めての夜を迎えた。
実は信じられない話だが、伊波とこうして交際を再開させてから、まだキスしかしていない。
お互い忙しかったせいもあるが、やはり優子の気持ちの踏ん切りがつかなかったというのが本当の理由だ。
色んな理由をつけては、最後までいくのを避けてきた。
しかし、さすがに今日からはそういう訳にはいかない。
「何か、私のせいで延び延びになっちゃって、ごめんね」
「そんなこと全然構わないよ。俺はこうして優子と一緒に暮らせる日が来るなんて、今でも夢じゃないかと思うくらい嬉しいんだから」
「大げさね」
優子にとってはただの同居かもしれないが、伊波は時々会うだけでも未だにときめいてしまう優子が同じ屋根の下にいるというだけで、もう居ても立っても居られないくらい嬉しくて・・・、でも同じくら怖かった。
「優子、スマホ貸して」
「え~、また変なアプリ勝手に入れるんじゃないでしょうね」
「いいやその反対。ちゃんと見てて、アンインストールするから」
伊波は優子の居場所を特定する例の趣味の悪いアプリを削除した。
「あら、どういう風の吹きまわし?」
「これまではさ、やっぱり不安だったんだ。いくら言葉で言われてても、本当に一緒に暮らすなんて実現しないんだろうって」
「どうして?ちゃんと言ったのに。信じてなかったの?」
「そう言う訳じゃないけど。俺の方がビビりなだけだよ」
本当は違う・・・。
優子の気持ちが分からないからだ・・・。
こうして一緒に暮らすようになっても、いつかあの俊介という男が優子のことをさらって行ってしまうのではないかという、根拠のない不安に怯えてしまう。
ただ、同居を一応の区切りとして、いくらパートナーであっても、その行動のすべてを見ようとするのはやりすぎだと反省したのだ。
できることなら、その全てを管理したい気持ちはないと言ったら嘘になる。
それだけ自分の方が優子に惚れているのだから、仕方がない。
「伊波君っていうのもそろそろ卒業しようかな。賢二って呼んでいい」
これは、想像以上にくるな・・・。
伊波はグッと喉を鳴らした。
すでに伊波は優子と呼んでいるわけで、出来ることなら自分も下の名前で呼んでもらえたら、もっと距離が縮まる気はしていた。
だが、優子とつきあえて、一緒に暮らせるだけで伊波には十分すぎることなのだ。
その上そんなご褒美をもらったら罰が当たりそうだ。
「いやあ、なんだかめちゃくちゃ照れるな・・・」
「なによ、自分は私のこと優子って呼んでるくせに」
「そ、それは、昔からそうだったから・・・」
どんどん優子との距離が縮まっていく。
表向きは・・・。
それなのに何かが、何かが足りない気がする。
いや、贅沢を言うんじゃない。
これで十分じゃないか・・・。
伊波は自分の欲求がどんどん強くなっていくのを戒めた。
優子に嫌われたくない・・・。
何かおかしいと感じても、気づかないふりをしよう。
どんなことをしてでも、この生活を続けたい。
そして、いずれは優子と結婚するんだ。
「ねえ、私、スーパーに買い物に行ってくるわ」
「ああ、じゃあ俺は洗濯するよ」
「ありがとう、助かる。じゃあ行ってきます」
伊波は何でもそつなくこなすデキる男だ。
プライベートの生活もちゃんと自活できている。
俊介とは大違いだ。
しかし、それを差し引いても、優子が俊介を想う気持ちは伊波に対する気持ちには遠く及ばない。
そんなことは分かっているけど・・・。
仕事も出来て、生活力もあって、包容力もあって、容姿も俊介に引けを取らないのに・・・。
どうして自分の気持ちはずっと俊介に奪われたままなのだろう・・・。
だけど、誰かを好きな気持ちは損得勘定なんかで決まるものではないのだから仕方がない。
夕食をすませ、いよいよ二人暮らしの初めての夜を迎えた。
実は信じられない話だが、伊波とこうして交際を再開させてから、まだキスしかしていない。
お互い忙しかったせいもあるが、やはり優子の気持ちの踏ん切りがつかなかったというのが本当の理由だ。
色んな理由をつけては、最後までいくのを避けてきた。
しかし、さすがに今日からはそういう訳にはいかない。
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