11 / 67
ホストと女医は診察室で.11
「本当に送っていかなくていいの?」
シャワーを浴びて身支度を整えた慶子に、聖夜は尋ねた。
「ええ、お堅い職業ってこういうとき不便ね。どこで誰が見てるか分からないから」
医師であること、そしてとんでもなく真面目な慶子の性格上、結婚しているわけでも付き合っているわけでもない男性と朝帰りなど考えられなかった。
「そっか。俺、もう少し先生と一緒にいたかったんだけど、仕方ないな…」
そんな後ろ髪を引くようなセリフを言わないで欲しい。
男慣れしていない慶子は、こんなにも優しくされて身も心も聖夜に奪われてしまいそうで、ひどく混乱しているというのに。
そんな慶子だったが、部屋を出ようとして、ふとホストクラブでお金を払った記憶が無いことに気付く。
「あ、あの、私、聖夜さんのお店でちゃんとお金払いましたか?酔っぱらってて覚えてなんです」
「今回の分はツケでいいよ。また今度来た時にまとめてで」
えっ…、ホストクラブに来るのは今日だけのつもりだったのに、どうしよう…。
だが、仕方ない。
自分で蒔いた種だ。
「じゃあ、ホテル代は払っておくから、聖夜さんはゆっくりしてって」
「ああ、それはもう俺が払ったからいいよ。先生持ち合わせあるか分かんなかったから」
「ご、ごめんなさい。それも合わせて今度払います」
病院では聖夜のことを厄介者扱いしていた自分が、今日は失態をさらしまくって、穴があったら入りたいくらいだ。
「ホテル代は俺持ちでいいよ。先生の初めてもらっちゃったし」
聖夜の言葉に慶子の顔は一気に熱くなる。
そんなこと言われたら何て答えればいいの…。
「じゃあ、下まで送るから」
そう言うと、聖夜は慶子の手を握って一緒に部屋を出た。
エレベーターの中で聖夜は名残惜しそうに慶子に口づけた。
今日だけで何度したか分からない口づけ。
だけど、慶子はその度に体中が熱くなってしまう。
こ、こんなこと、いつもしてるのかな…?
ホストという職業はどこまでが仕事で、どこからがプライベートなのか慶子には全く分からない。
ホテルの前に停車していたタクシーに乗り込むと、聖夜に見送られて慶子は自宅に向かった。
家に着いたのは午前四時だった。
もう一度寝るにも起きるにも中途半端な時間だ。
自宅兼クリニックである慶子の家は、一階がクリニックで二階が自宅になっている。
キッチンに行くと冷蔵庫から水を取り出して飲んだ。
「なんでこんなことに…」
慶子はさっきまで聖夜とまぐわっていたのがとても現実とは思えなかった。
ただホストクラブに行っただけなのに。
聖夜と関係を持ってしまった。
それも初めてだったのに。
今さら相手が誰だろうと、気にする年齢でもないのが悲しい。
だが、これは想像の域を出ないのだが、恐らく普通の女の子がこんな目にあったらもっとひどく狼狽しているだろうことは想像に難くない。
しかし、慣れというものは恐ろしいもので、医師という職業上、こういった緊急事態にも動揺しないように散々訓練を受けてきた。
そうでなければ、医師などと言う職業は務まらないのだから仕方ないのだけれど…。
だからこそ、聖夜が自分のことをしきりに「可愛い」などと言うのが不思議でならなった。
普通の女の子だったら、もっと泣いたりわめいたりと喜怒哀楽を激しく表現するだろう。
しかし、慶子の場合はそういった反応は絶対的に少なかったはずで、可愛げのない女だと思われるのが普通なのに…。
慶子は聖夜の考えていることが全く理解できなかった。
ただ、普段の聖夜とホストの聖夜のギャップにはかなり動揺したという自覚はある。
彼はホストという仕事が天職なのだろう。
ホストをしている時の聖夜は紳士的で優しくて、どんな女性も虜にしてしまう魔性の魅力がある。
慶子にしたことは、いつも他の女性にも普通にしていることなのだろう。
それは当たり前のことなのに、モヤモヤした気持ちが消えない。
この年までまともに恋愛もしてこなくて、初めて男性に触れられたのだ。
今の自分は普通じゃないのだろう。
時間が経てばきっといつもの自分に戻るだろう。
慶子はそんな風に考えてこの動揺を落ち着かせるしかなかった。
シャワーを浴びて身支度を整えた慶子に、聖夜は尋ねた。
「ええ、お堅い職業ってこういうとき不便ね。どこで誰が見てるか分からないから」
医師であること、そしてとんでもなく真面目な慶子の性格上、結婚しているわけでも付き合っているわけでもない男性と朝帰りなど考えられなかった。
「そっか。俺、もう少し先生と一緒にいたかったんだけど、仕方ないな…」
そんな後ろ髪を引くようなセリフを言わないで欲しい。
男慣れしていない慶子は、こんなにも優しくされて身も心も聖夜に奪われてしまいそうで、ひどく混乱しているというのに。
そんな慶子だったが、部屋を出ようとして、ふとホストクラブでお金を払った記憶が無いことに気付く。
「あ、あの、私、聖夜さんのお店でちゃんとお金払いましたか?酔っぱらってて覚えてなんです」
「今回の分はツケでいいよ。また今度来た時にまとめてで」
えっ…、ホストクラブに来るのは今日だけのつもりだったのに、どうしよう…。
だが、仕方ない。
自分で蒔いた種だ。
「じゃあ、ホテル代は払っておくから、聖夜さんはゆっくりしてって」
「ああ、それはもう俺が払ったからいいよ。先生持ち合わせあるか分かんなかったから」
「ご、ごめんなさい。それも合わせて今度払います」
病院では聖夜のことを厄介者扱いしていた自分が、今日は失態をさらしまくって、穴があったら入りたいくらいだ。
「ホテル代は俺持ちでいいよ。先生の初めてもらっちゃったし」
聖夜の言葉に慶子の顔は一気に熱くなる。
そんなこと言われたら何て答えればいいの…。
「じゃあ、下まで送るから」
そう言うと、聖夜は慶子の手を握って一緒に部屋を出た。
エレベーターの中で聖夜は名残惜しそうに慶子に口づけた。
今日だけで何度したか分からない口づけ。
だけど、慶子はその度に体中が熱くなってしまう。
こ、こんなこと、いつもしてるのかな…?
ホストという職業はどこまでが仕事で、どこからがプライベートなのか慶子には全く分からない。
ホテルの前に停車していたタクシーに乗り込むと、聖夜に見送られて慶子は自宅に向かった。
家に着いたのは午前四時だった。
もう一度寝るにも起きるにも中途半端な時間だ。
自宅兼クリニックである慶子の家は、一階がクリニックで二階が自宅になっている。
キッチンに行くと冷蔵庫から水を取り出して飲んだ。
「なんでこんなことに…」
慶子はさっきまで聖夜とまぐわっていたのがとても現実とは思えなかった。
ただホストクラブに行っただけなのに。
聖夜と関係を持ってしまった。
それも初めてだったのに。
今さら相手が誰だろうと、気にする年齢でもないのが悲しい。
だが、これは想像の域を出ないのだが、恐らく普通の女の子がこんな目にあったらもっとひどく狼狽しているだろうことは想像に難くない。
しかし、慣れというものは恐ろしいもので、医師という職業上、こういった緊急事態にも動揺しないように散々訓練を受けてきた。
そうでなければ、医師などと言う職業は務まらないのだから仕方ないのだけれど…。
だからこそ、聖夜が自分のことをしきりに「可愛い」などと言うのが不思議でならなった。
普通の女の子だったら、もっと泣いたりわめいたりと喜怒哀楽を激しく表現するだろう。
しかし、慶子の場合はそういった反応は絶対的に少なかったはずで、可愛げのない女だと思われるのが普通なのに…。
慶子は聖夜の考えていることが全く理解できなかった。
ただ、普段の聖夜とホストの聖夜のギャップにはかなり動揺したという自覚はある。
彼はホストという仕事が天職なのだろう。
ホストをしている時の聖夜は紳士的で優しくて、どんな女性も虜にしてしまう魔性の魅力がある。
慶子にしたことは、いつも他の女性にも普通にしていることなのだろう。
それは当たり前のことなのに、モヤモヤした気持ちが消えない。
この年までまともに恋愛もしてこなくて、初めて男性に触れられたのだ。
今の自分は普通じゃないのだろう。
時間が経てばきっといつもの自分に戻るだろう。
慶子はそんな風に考えてこの動揺を落ち着かせるしかなかった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
『床下に札束を隠す金髪悪女は、毎朝赤いマットの上で黒の下着姿で股を開く』〜ストレッチが、私の金脈〜
まさき
恋愛
毎朝六時。
黒の下着姿で、赤いヨガマットの上に脚を開く。
それが橘麗奈、二十八歳の朝の儀式。
ストレッチが終わったら、絨毯をめくる。
床下収納を開けて、封筒の束を確認する。
まだある。今日も、負けていない。
儚く見える目と、計算された貧しさで男の「守りたい」を引き出し、感情を売らずに金だけを回収してきた。
愛は演技。体は商売道具。金は成果。
ブリーチで傷んだ金髪も、柔らかく整えた体も、全部武器だ。
完璧だったはずの計算が、同じマンションに住む地味な男——青木奏の登場で、狂い始める。
奢らない。
触れない。
欲しがらない。
それでも、去らない。
武器が全部外れる相手に、麗奈は初めて「演じない自分」を見られてしまう。
赤いマットの上で、もう脚を開けなくなる朝が来るまでの話。
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。