ホストと女医は診察室で

星野しずく

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ホストと女医は診察室で.33

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 幸い数カ月後には自分の店を開く予定だ。

 今の店で働きながら、開店の準備も同時進行で行う。

 もちろん大変なことだけれど、今よりも忙しくなれば余計なことを考えなくて済む。

 聖夜が目標としている店舗数は十店舗以上だ。

 一つ終われば次の店の開店準備に取り掛かるつもりだ。

 慣れれば慣れるほどそのスピードは早くなるだろう。



 この道を進むと決めたときから、聖夜は着実に自分の夢を叶えてきた。

 店のナンバーワンになり、ホストとして働きながら店長のそばで経営のノウハウを一から学んだ。

 そもそもラビリンスを選んだのも、この界隈では一番人気のある店だったからだ。 

 その店の店長からは学ぶことが多いと思って選んだ。

 おかげで、二十五歳で自分の店を持つことができそうだ。



 今はまだ慶子のことが気にならないと言ったら嘘になる。

 それも時間が忘れさせてくれるだろう。

 聖夜は願いにも似た気持ちでそう考えることにした。



 気づくと店に行かなければいけない時間になっていた。

 どれだけの間考え込んでいたのだろう…。

 自分らしくない。

 聖夜は身支度を整えるとマンションを出た。



 一週間はあっという間だ。

 今日は午前中の診察を終えればそれで仕事は終わりだ。

 慶子は和希との約束の土曜を迎えて憂鬱な気分に陥っていた。

 たぶん、出掛けてしまえばそれなりに楽しいのだろう。

 だけど、問題は和希の顔だ。

 どうしたって聖夜を思い出してしまう…。



 そんなに気になるんなら、聖夜に会いに行けばいいじゃない。

 それで、あなたのことが好きですって言っちゃえばスッキリするじゃない。

 自分の中でそんな声が聞こえてくる。



「そんなこと出来るわけないでしょ!」

「先生、何か言いました?」

 しまった…、まだ仕事中だった。

 電子カルテのチェックをしている看護師がそばにいることも忘れるほど気持ちがそっちに行ってしまっていた。



「ううん、なんでもない」

 慶子はパソコンの画面に向かうと、今月の患者数と診察内容をチェックしてみた。

 患者数は確実に増えているため、予約がとりにくい状況が発生していた。

 仕事の話なら気が楽だ。

 和希さんに相談してみようかな。

 慶子は顔が似ている問題にばかりフォーカスしていると打開策が見いだせないと思い、和希の得意分野を利用させてもらうことにした。



 夕方になり和希がタクシーで迎えに来てくれた。

「ワインがおいしいシーフードバルなんだけど、魚介類大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」
 
「今日は忙しかったの?やっぱり仕事の後はちょっとお疲れですね」

 いや、疲れてるんじゃなくて、本当は来たくなかっただけ、なんてとても言えない…。
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