ホストと女医は診察室で

星野しずく

文字の大きさ
53 / 67

ホストと女医は診察室で.53

 それでも母親の息子を思う気持ちだけは受け取ってきた。

 だが、和希の様に母親に甘える気はない。

 自分が一人前になって自分の足で立てるようになることが、聖夜なりの恩返しのつもりだ。



「また連絡する」

 そう言って聖夜は電話を切った。



 あいつ何やらかしたんだ?

 聖夜から見た和希と言えば、堅実で冒険などしない代わりに面白味のない人生を送っているという印象だった。



 聖夜は和希にさっそく電話をかけてみた。

 しかし和希は電話に出ることなく留守番電話サービスに切り替わってしまった。

『まだ電話する』とメッセージを残し、聖夜は電話を切った。

 聖夜もいつまでもこんなことに時間をかけている暇はなかった。

 また明日かけてみるか…。

 聖夜はその日も深夜まで一人事務所に残って仕事をこなした。



 聖夜はあれから何度も和希に電話をしてみたが、和希は一向に電話に出ることはなかった。

 もちろん和希からの電話もない。

 この間聖夜から電話した時は、あんなに喜んでいた和希が、聖夜からの着信履歴を見てかけてこないのはどう考えても不自然だ。

 やはり和希に何かがあったと考えざるを得なくなる。

 だが、本人と話せない状態ではどうすることもできない。

 しかし、今の聖夜にはとにかく時間がなかった。

 和希のことは気になりつつも、連絡がとれないまま時間だけが過ぎていった。



 慶子のところを訪れてから一週間が経った。

「社長、町田先生に確認してもらいたい書類があるので僕今日行ってきます」

 サロン事業専任のスタッフである門脇が忙しそうに手を動かしながら聖夜に話しかけてきた。

 普通だったらそういうものはスタッフに任せている。

 しかし、それが慶子に会える正当な口実だと思うと聖夜はじっとしていられなくなる。
 
 本当は自ら動いている時間などないのだが、それを知ってしまった今、もう我慢などできるはずがなかった。



「俺も先生と話したいことあるから、ついでにその書類持ってくわ」

「え、いいんですか、社長今日もスケジュールぱんぱんですよ?」

「いいの、いいの、そのぐらいの時間は作れるから」



 昼飯は車の中で済まして、今日下見に行くはずだったところは明日にずらそう。

 自分がこんな行動をするなんて自分でも信じられない。

 だけど、慶子はこういう用件でもない限り会ってはくれないだろう。



 ちょうど今日は土曜日だ。

 聖夜は門脇から書類を受け取ると、午後からは休みになるはずの慶子のクリニックに向かって車を飛ばした。



 インターフォンを押すと既に二階の住居スペースに移動していた慶子が直接応答した。

「突然来ちゃってすみません。ちょっと確認して欲しい書類があったんで…」

 聖夜は書類をインターフォンのモニターの前にひらひらとかざした。

 ちゃんと証拠を見せないと、ガードの硬い慶子は信じないと思ったのだ。

「本当に突然ですね…。今度からはちゃんと事前に連絡をください。ちょっと待っててください、今下に行きますから」

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

『床下に札束を隠す金髪悪女は、毎朝赤いマットの上で黒の下着姿で股を開く』〜ストレッチが、私の金脈〜

まさき
恋愛
毎朝六時。 黒の下着姿で、赤いヨガマットの上に脚を開く。 それが橘麗奈、二十八歳の朝の儀式。 ストレッチが終わったら、絨毯をめくる。 床下収納を開けて、封筒の束を確認する。 まだある。今日も、負けていない。 儚く見える目と、計算された貧しさで男の「守りたい」を引き出し、感情を売らずに金だけを回収してきた。 愛は演技。体は商売道具。金は成果。 ブリーチで傷んだ金髪も、柔らかく整えた体も、全部武器だ。 完璧だったはずの計算が、同じマンションに住む地味な男——青木奏の登場で、狂い始める。 奢らない。 触れない。 欲しがらない。 それでも、去らない。 武器が全部外れる相手に、麗奈は初めて「演じない自分」を見られてしまう。 赤いマットの上で、もう脚を開けなくなる朝が来るまでの話。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。