日替わりでイケメン達に迫られてます

誰かイケメン達を止めてくれませんか！！.09

　家に入り自分の部屋へ何とかたどりつく。

　泥のように脱力した体を床に横たえた。

　今、タクシーに乗ってきたってことは、私がジンくんの家に行ってきたってことは本当のことだよね？

　だけど、またしても証拠は一切ない。

「なに～？なんなのこれ～！！」

　みゆうは大声で叫んでみたけれど、当然答えはなかった。



　翌日は土曜日だった。

　何も不思議なことは起こらなかった。

　次の日曜日も。

　理由も法則も分からない。
　
　しかし、睡眠不足はしっかり解消された。

　今日は月曜日だ。

　いつもの様に学校へ行った。



　今日は図書委員の当番ではなかったが、借りたい本があったので放課後図書室へ行った。

「よお、お前も来てたの？」

　伊吹が声をかけてきた。

「ああ、うん」

　みゆうは気のない返事をした。



　このところ、白昼夢ではあるけれど、どえらいレベルのイケメンばかり見ているせいで、高校の男子たちの顔が肉球の様にしか見えない。

　みゆうはお目当ての本を見つけるとさっさと図書室を出ようとした。

「月影、そこまで一緒に帰らねえ？」

　肉球にそう言われ、みゆうは適当に返事をした。

「別にいいよ」

　みゆうにただの肉球に見られているとも知らず、伊吹は一緒に帰ることにドキドキしていた。

「なあ月影、来月、図書館のためのブックフェアがあるだろ。あれ、一緒に行かね？」

「いいよ～」

　みゆうの頭の中はイケメン勢たちでパンパンだ。

　それ以外のことはもうどうでもよかった。

「ほ、ほんとか？」

　可哀そうに、伊吹は脈があるのではないかと期待している。

「うん、ほんと」

　みゆうは、それじゃあ私こっちだからと伊吹に別れを告げた。

　伊吹はみゆうの後姿をそれは嬉しそうに、見えなくなるまで眺めていた。

　可哀そうに…。