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誰かイケメン達を止めてくれませんか!!.10
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家に帰ったみゆうは玄関を開けてギョッとした。
家の中から何やらとってもいい香りがしてくるのだ。
いつもは自分の部屋で巻き起こる珍事が、今日はどうやら別の場所で行われるらしい。
みゆうはその匂いのもとへと足を忍ばせた。
当然と言えば当然だが、そこはキッチンだった。
うしろ姿でだいたい想像がついた。
今グルメタレントでブレイクしている峰岸亮くんだ。
「あ、あの」
みゆうが恐る恐る声をかける。
「あ、お帰り~。待ってたよ~」
そう言って振り返ったのは、やはり亮くんだった。
健康的に日焼けした素肌に白い歯がトレードマークのさわやか系イケメンだ。
その美しい指先が作り出す料理はどれもオシャレに見えてしまう。
「ほら、座って」
みゆうは言われるがままに、こじんまりとした4人掛けのダイニングテーブルの自分の席に座った。
テーブルの上には所狭しとオシャレな料理が並べられている。
亮くんはみゆうの隣に腰をおろす。
「ほら、あ~んして」
「えっ?」
「だから、あ~んだってば」
か、カッコイイ。
嫌味じゃない程度に遊ばせた毛先、程よく焼いた健康的な色の肌に白いシャツが映える。
シャツの袖をまくった腕さえセクシーなのはどういうことだ?
いやいや、あなた様の前で大口を開けるなんて、出来るはずないじゃないですか。
しかし、亮くんはすでにパスタをフォークにクルクルと巻き付けてスタンバイしている。
えっと、どうしよう。
逃げるか。
いや、しかし、亮くんにあ~んなんて天地がひっくり返ったって二度とない機会だよ。
大口を開けるのが何だって言うのさ。
みゆうの顔なんて、亮くんからしたら、それこそ肉球みたいなものだ。
みゆうは恥を捨てて、あ~んと口を開けた。
バジルとオリーブオイルの香りが口いっぱいに広がる。
味はもちろん最高なのだろう。
しかし、この至近距離で亮くんに見られていては、正直味など分かるはず叶い。
「おいしい」
みゆうは、そう言わないわけにはいかなかった。
「そう?よかった。どんどん食べて」
亮くんは、次から次へと料理をみゆうの口の中に放り込む。
みゆうはせっかく亮くんが作ってくれた料理なのだから、自分のペースでゆっくり味わいたかった。
しかし、どうも、亮くんがみゆうにあ~んと食べさせるのが決まりごとになっているようだ。
料理が口に運ばれる度に、亮くんとの距離は近くなる。
亮くんはみゆうの反応が見たいのか、いちいち顔を覗き込んでくる。
近くで見てもその美しさに揺るぎはない。
健康的な小麦色の肌から覗く白い歯、シャープな顎のライン、形の整った薄い唇、瞳の色は黒くてくっきりとした二重は長いまつ毛で覆われている。
料理を取り分ける仕草、サーブするときのさり気ない所作も色気が溢れている。
立居振舞のすべてが美しい。
そんな造形美をこんな至近距離で見せられたら、一般人のキャパはたやすくオーバーする。
やっぱり近い、近すぎるよ。
もうさっきから心臓がもの凄い勢いでドキドキしてる。
これでは、全速力で走りながら食事してるみたいなものだ。
これじゃあ胃に血液が回らないよ。
でも、本当はもっとゆっくり亮くんのことを見ていたい。
たとえ直視できないとしても。
食べ物なんてこの際どうでもいい。
こんなに近くにいるのにやってることはひたすら食べることばっかり。
せっかく会えたのに、いい雰囲気とは程遠い。
あまりに勿体ないではないか。
「りょ、亮くん。ちょ、ちょっと待って」
みゆうは、さすがにこれ以上はお腹に入らなくなった。
「どうしたの?」
「あの、と、とってもおいしんだけど、もうお腹がいっぱいなんだ」
「ええ~、そうなんだ。残念。まだまだいっぱいあるのに」
たしかに、テーブルの上にはまだ手つかずの料理がたくさん残っている。
「でも満足してくれた?」
満足していないなどと言えば、また食べさせられるだろう。
しかし、満足したと言ったら、亮くんはきっと帰ってしまう。
だが、どう考えてもこれ以上は絶対に食べられない。
「満足しました…」
みゆうは断腸の思いで答えた。
「そっか、よかった。ぼく、料理番組の収録中だったからもう帰るね」
そう言うと、亮くんはカフェエプロンを巻いたまま帰って行ってしまった。
「しゅ、収録中って。ダメじゃない?またネットニュースになるかも」
みゆうは、有名人に次々と会えることは当然嬉しい。
だけど、どうやら仕事中にもかかわらずやって来ているのが気にかかる。
しかし、そもそも彼らがどうしてうちにやってくるのだろうか。
彼らがみゆうに会うメリットなど何もない。
みゆうが幸せなだけだ。
亮くんがいなくなったキッチンには、料理の香りと、かすかに亮くんのフレグランスが香っている。
やっぱりイケメンはみんないい香りがする。
優しくて、カッコよくて、いい香りがして。
もう、これはこの世の天国ですよ。
いや、しかし、彼らにとっては迷惑至極だ。
いったいこのおかしな事象はいつまで続くのだろう。
みゆうは目の前の料理を見つめてため息をついた。
家の中から何やらとってもいい香りがしてくるのだ。
いつもは自分の部屋で巻き起こる珍事が、今日はどうやら別の場所で行われるらしい。
みゆうはその匂いのもとへと足を忍ばせた。
当然と言えば当然だが、そこはキッチンだった。
うしろ姿でだいたい想像がついた。
今グルメタレントでブレイクしている峰岸亮くんだ。
「あ、あの」
みゆうが恐る恐る声をかける。
「あ、お帰り~。待ってたよ~」
そう言って振り返ったのは、やはり亮くんだった。
健康的に日焼けした素肌に白い歯がトレードマークのさわやか系イケメンだ。
その美しい指先が作り出す料理はどれもオシャレに見えてしまう。
「ほら、座って」
みゆうは言われるがままに、こじんまりとした4人掛けのダイニングテーブルの自分の席に座った。
テーブルの上には所狭しとオシャレな料理が並べられている。
亮くんはみゆうの隣に腰をおろす。
「ほら、あ~んして」
「えっ?」
「だから、あ~んだってば」
か、カッコイイ。
嫌味じゃない程度に遊ばせた毛先、程よく焼いた健康的な色の肌に白いシャツが映える。
シャツの袖をまくった腕さえセクシーなのはどういうことだ?
いやいや、あなた様の前で大口を開けるなんて、出来るはずないじゃないですか。
しかし、亮くんはすでにパスタをフォークにクルクルと巻き付けてスタンバイしている。
えっと、どうしよう。
逃げるか。
いや、しかし、亮くんにあ~んなんて天地がひっくり返ったって二度とない機会だよ。
大口を開けるのが何だって言うのさ。
みゆうの顔なんて、亮くんからしたら、それこそ肉球みたいなものだ。
みゆうは恥を捨てて、あ~んと口を開けた。
バジルとオリーブオイルの香りが口いっぱいに広がる。
味はもちろん最高なのだろう。
しかし、この至近距離で亮くんに見られていては、正直味など分かるはず叶い。
「おいしい」
みゆうは、そう言わないわけにはいかなかった。
「そう?よかった。どんどん食べて」
亮くんは、次から次へと料理をみゆうの口の中に放り込む。
みゆうはせっかく亮くんが作ってくれた料理なのだから、自分のペースでゆっくり味わいたかった。
しかし、どうも、亮くんがみゆうにあ~んと食べさせるのが決まりごとになっているようだ。
料理が口に運ばれる度に、亮くんとの距離は近くなる。
亮くんはみゆうの反応が見たいのか、いちいち顔を覗き込んでくる。
近くで見てもその美しさに揺るぎはない。
健康的な小麦色の肌から覗く白い歯、シャープな顎のライン、形の整った薄い唇、瞳の色は黒くてくっきりとした二重は長いまつ毛で覆われている。
料理を取り分ける仕草、サーブするときのさり気ない所作も色気が溢れている。
立居振舞のすべてが美しい。
そんな造形美をこんな至近距離で見せられたら、一般人のキャパはたやすくオーバーする。
やっぱり近い、近すぎるよ。
もうさっきから心臓がもの凄い勢いでドキドキしてる。
これでは、全速力で走りながら食事してるみたいなものだ。
これじゃあ胃に血液が回らないよ。
でも、本当はもっとゆっくり亮くんのことを見ていたい。
たとえ直視できないとしても。
食べ物なんてこの際どうでもいい。
こんなに近くにいるのにやってることはひたすら食べることばっかり。
せっかく会えたのに、いい雰囲気とは程遠い。
あまりに勿体ないではないか。
「りょ、亮くん。ちょ、ちょっと待って」
みゆうは、さすがにこれ以上はお腹に入らなくなった。
「どうしたの?」
「あの、と、とってもおいしんだけど、もうお腹がいっぱいなんだ」
「ええ~、そうなんだ。残念。まだまだいっぱいあるのに」
たしかに、テーブルの上にはまだ手つかずの料理がたくさん残っている。
「でも満足してくれた?」
満足していないなどと言えば、また食べさせられるだろう。
しかし、満足したと言ったら、亮くんはきっと帰ってしまう。
だが、どう考えてもこれ以上は絶対に食べられない。
「満足しました…」
みゆうは断腸の思いで答えた。
「そっか、よかった。ぼく、料理番組の収録中だったからもう帰るね」
そう言うと、亮くんはカフェエプロンを巻いたまま帰って行ってしまった。
「しゅ、収録中って。ダメじゃない?またネットニュースになるかも」
みゆうは、有名人に次々と会えることは当然嬉しい。
だけど、どうやら仕事中にもかかわらずやって来ているのが気にかかる。
しかし、そもそも彼らがどうしてうちにやってくるのだろうか。
彼らがみゆうに会うメリットなど何もない。
みゆうが幸せなだけだ。
亮くんがいなくなったキッチンには、料理の香りと、かすかに亮くんのフレグランスが香っている。
やっぱりイケメンはみんないい香りがする。
優しくて、カッコよくて、いい香りがして。
もう、これはこの世の天国ですよ。
いや、しかし、彼らにとっては迷惑至極だ。
いったいこのおかしな事象はいつまで続くのだろう。
みゆうは目の前の料理を見つめてため息をついた。
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