日替わりでイケメン達に迫られてます

星野しずく

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誰かイケメン達を止めてくれませんか!!.22

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 彼らの中にはまだ、十代のアイドルもいたけれど、もう立派な大人もいる。

 そして、年齢に関係無く経済的には十分自立しているから、現実的には結婚することは可能だろう。

 しかし、そういうことじゃないのだ。

 そもそも、なぜ彼らがみゆうのところにやってくるのかも分からないし、なぜみゆうと結婚したいのかも不明だ。

 こうなってくると、もうみゆうの手には負えなかった。

 でも、どうやら彼らは真剣なのだ。

 他人が聞いたら、そんな羨ましい話はないだろう。

 だけど、7人のイケメンから毎日のように熱烈なプロポーズを受けるというのは、必ずしも嬉しいだけでは済まされないのだ。

「どうしよう。嬉しいけど、いまだになんでこうなってるのか分からないし。でも、みんなは真剣みたいだし」

 みゆうは現実ならば贅沢すぎるその悩みを、一体どう処理すればいいのか全く分からない。

 ここまでくると、みゆうの人生に関わる一大事だ。

 だけど、そんな夢みたいな話、誰も信じてくれるはずがない。

 みゆうは考えても考えても答えが出ない問題に疲れ果て、知らないうちに眠りに落ちていた。



 次の日の放課後、みゆうは伊吹と一緒に図書室の受付係をやることになっていた。

「月影、遅くなってごめん。ホームルームが長引いちゃって」

 伊吹が息を乱してやってきた。

「べつにいいよ。まだ、あんまり人来てないし」

 二人は受付カウンターに座り、貸出や返却の手続きなどを行った。

「ねえ、伊吹、ちょっといい?」

「なんだよ改まって」

「伊吹ってファンタジーとか好きだよね?」

「ああ、まあミステリーも好きだけど、ファンタジーも結構読むよ?それがどうかしたの」

 そう問われて、みゆうはそれ以上話を進めることが出来なかった。

 図書室は人が頻繁に出入りする場所だ。

 特にお昼休みよりも、放課後の方が利用者は多い。

 こんな話、人がいるところでは出来るはずがない。

「ちょっと折り入って相談があるんだけど…」
 
「僕に相談なんて珍しいね」

 そうなのだ、普段のみゆうは、あの暗黒の時代から脱し、平穏な日々を送っていたのだから。

「で、どんなこと?」

「そ、それが、ここじゃちょっと話せない内容で…」

 相談を持ち掛けたものの、その先のことを考えていなかった。
 
「ねえ、伊吹、このあとなんか予定ある?」

「ん?別に何にもないけど」

「あのさ、伊吹んち行ってもいい」

「え、俺んち?」

 伊吹が驚くのは無理もない。

 みゆうと伊吹は図書委員として一緒に活動する以外、個人的に会ったりすることは一度もないのだ。

 つまりそこまで親しい友人ではないのだ。

 そんな伊吹に相談したい、しかも伊吹の家で、という伊吹からすれば突然すぎるお願いなのだ。

「ゴメン、訳わかんないだろうけど、どうしても人に聞かれたくないし、伊吹じゃないとダメなんだ」

 みゆうのただならぬ気迫に、伊吹はきっと何か特別な事情があるんだろうと判断した。

「いいよ。じゃあ、図書委員の仕事終わったらうちにおいでよ」

「うん、ありがとう」

 みゆうは、まだ話を聞いてもらってもいないのに救われたような気持ちになる。

 なんだかんだいって伊吹って頼りになるんだよな。

 みゆうが現実的な理由で伊吹を頼りにしている一方で、伊吹は密かに思いを寄せているみゆうとの距離が思いがけず縮まったことに一人喜びをかみしめていた。

 しかし、そんな素振りを見せることは絶対できない。

 みゆうのことはもちろん好きだが、もし告白してフラれたら、今までのように図書委員としてそばにいるのも気まずくなってしまう。

 そんなリスクを冒すくらいなら、ずっとそばで見ている方が伊吹としてはまだましだった。

 下校時刻に5分前になり、図書室は閉館となり、二人は簡単に片づけを済ませるて学校をあとにした。
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