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誰かイケメン達を止めてくれませんか!!.23

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 伊吹の家はバスで20分程の住宅地にある。

「急にお邪魔して大丈夫だった?」

 みゆうは、バスに揺られながら伊吹に尋ねた。

「あ、ああ。両親はまだ仕事だし、中二の妹がいるんだけど、全寮制の女子中なんだ。中高一貫なんだよ。なんか分かんないけど、オペラ歌手になるんだとか言い出して、そっち系の学校に行っちゃったんだよ。だから、普段は俺一人」

「へえ、ちゃんと夢があってそれを目指してるんだね。すごいじゃん」

「まあ、そうなんだけど、俺、妹のことけっこう可愛がってたからさ、急にいなくなって、最初の頃は結構寂しかったな。ブラコンみたいで恥ずかしいけど」

「そ、そんなことないよ。私、一人っ子だから、兄妹がいるだけで羨ましい」

 普段、学校では本の話くらいしかしたことがなかった。

 よく考えたら、お互い知らないことばかりだ。

 そんなことを話しているうちに、伊吹の家の近くのバス停に着いた。

「そこ曲がってすくだから」

 伊吹について歩くこと2~3分で彼の家に到着した。

 伊吹の家はごく一般的な造りの一戸建てだった。

「どうぞ入って」

「お邪魔します」

 リビングに通されソファに腰掛けていると、部屋着に着替えた伊吹がお茶を持って現れた。

「ゴメンね、ほんとに。急に相談とか、お家にまでお邪魔しちゃって」

 伊吹の気持ちを知らないみゆうは、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 しかし、それを上回る手ごわい悩みのせいで、今ここにいるのだけれど。

「で、相談っていうのは?」

 伊吹もソファに座ると、いよいよその瞬間がやってきた。

 すべてを打ち明けるつもりで来たけれど、いざとなるとすこぶる話しずらい内容だ。

 いったいどこから話せばいいのだろう。



 みゆうがなかなか話始めないので、伊吹が助け舟を出した。

「さっき、ファンタジーが好きかって聞いたよね?もしかしてそれと関係ある?」

 さすが伊吹だ。するどい。

「うん。たぶん…」

 みゆうは現時点ではそう答えるしかない。

「何でも聞くからさ、遠慮なく話しなよ」

 そう言われても、やっぱり頭がおかしいとは思われたくない。

「私の頭がおかしくなったって思わないって約束してくれる?」

 なんのことか分からないのに約束しろとは、ずうずうしい話なのだが、そう言わなければ話す勇気が出ない。

「分かった約束する」

 伊吹はキッパリと言ってくれた。

 みゆうは伊吹を信じて、最初の日からのことをポツリポツリと話始めた。
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