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春
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誰もいない朝の教室に本を読む陰キャが一人。
私の名前は 「花井美里」高校一年生、とても女の子らしく可愛らしい名前だが、髪は長髪のボサボサ、これと言って特徴の無い顔、趣味は読書でオマケに眼鏡、漫画に出てくる陰キャそのもので完全に名前負けしている。私は自分の名前が大嫌いだ。
私の朝は早い、クラスで一番早く登校するのは決まって私だ。なぜか、それは誰もいない教室で読書をするのが好きだから。基本的に太宰治とか文学系が好きだが、やっぱり私も女なんだな、恋愛系も大好きだ。でも恥ずかしいので恋愛系は誰もいない朝に読む、ブックカバーをしているからタイトルが見られる事はないのに、何となく読んでいる事を隠してしまう。
まぁ恋愛小説を読んでいる自分のニヤニヤした顔を見られるのも恥ずかしいってのもある。クラスメイトが登校し出したら本をサッと文学系に変える。なので私のカバンにはいつも複数の小説が収納されている。
ガラガラガラっとひときわ大きな音で教室のドアを開ける音がする。
「諸君!おはよう!今日も元気かなぁ?」
と大きな声で挨拶をする男子が現れる。周りにいる生徒一人一人に挨拶をしながら、ズンズンとコチラに向かってきて、私の前の席にドカっと勢いよく座る。私は本を読むのを辞め覚悟を決める、男子はこちらを振り向くと。
「おっはよう花井ぃ!元気ぃ?」
「え…あ…うん…」
「今日も朝から読書ぉ?まぁーた好きだねぇ~」
「え…う…うん…」
「今日も太宰なんちゃら?楽しい?」
「えーっと…うん」
私はしどろもどろになりながらも、何とか返事だけはする。男子の名前は「山田海斗」クラスで一番の陽キャであり、私の一番の悩みの種でもある。別にイジめてくる訳ではないのだが、何故か私によく絡んでくる。特に可愛くもない陰キャの私にだ、可愛い女子は他にいっぱいいるのに、なぜ私なのか謎でしかない。
「今日は朝から数学とか眠くなるよ、花井は頭いいから授業についていけるけど、俺は全然ついていけんのよぉ~」
「そ…そんな事ないよ…」
「またまたご謙遜を、わかんない所教えてな!」
「うん…いいよ…」
やがて授業のチャイムが鳴り、担任の先生が入ってくる。ふと外を見ると桜が満開だ、私の通う高校はド田舎にあり、桜も4月の下旬にようやく見頃を迎える。高校生活も1ヶ月が過ぎた、だけど未だに山田には慣れない、あの大きい声と元気にはついて行けない。だからと言って嫌いって訳ではない、以前こんな事があった。
陽キャ女子グループが私の事をイジリだした。主に暗いとかキモいとかワザと私に聞こえる様に話す、私は言われ慣れているのでスルーしていると山田が突然大声で
「いや、別に花井はキモくないって!むしろ可愛い方だと思うけどねぇ」
おいおい心にもない事を辞めてくれ、と心の中で叫ぶが山田は止まらない。陽キャ女子が山田を煽ると
「好みなんて人それぞれだし別にいいじゃん、なぁ花井もそう思うっしょ?」
同意を求められても困る、が山田が言うと不思議と角が立たないので、その場はそれで治った。こんな風に山田は度々私をかばってくれるので、私がイジめられる事は早々に無くなった。山田は私にとって防波堤の様なものだ。
昼休み、私は母親の手作り弁当を広げる。母は料理が上手い、その他にも編み物やお菓子作りなどなんでも器用にこなす、私はおそらく不器用な父親の血を引き継いだのだろう。ノソノソ弁当を食べる私に山田が突然振り向き
「手作り弁当とかいいよなぁ~、俺なんて冷食詰め合わせ弁当だぜ?見てよ悲惨だろ?」
と冷凍食品っぽい食べ物がギュウギュウに詰まった弁当を見せてくれた。これでは栄養が偏って身体に良くない、でも山田はたしか母子家庭で母親は仕事で忙しく、山田は自分で弁当を作っている。
「いつも思うんだけど、花井の弁当って超美味そうだよな、何か一口ちょうだいよ!」
私は食べるのが遅いし、どちらかといえば少食なので、食べてくれるのは願ったり叶ったりなのだが、ふと周りを見ると皆がこちらに注目している。山田は声が大きいので会話が教室中に筒抜けなのだ、早くこの注目を終わらせたい私はスッと弁当を山田に差し出して
「い…いいよ、あとは全部たべてくれて…」
「マジ?いいの?ありがとう!」
山田はあっという間に私の弁当の残りを平らげてしまった。
「やっぱ美味いな!花井の母ちゃん料理の天才なんじゃないの?」
そりゃまぁ冷食詰め合わせ弁当に比べれば手作りだし、圧倒的に美味しいのは当たり前なのだが、自分の母親を褒めてくれるのは素直に嬉しい。
チャイムが鳴り午後の授業が始まる、山田は弁当を自分の分と私の分の二つも食べたので、授業中は爆睡していた。先生に見つかる前に起こした方が良いのかな?でも私は陰キャだしアグレッシブに男子に触るなんて事は出来ない。なので見つかる前に早く起きろと念を送っていたのだが無駄だった。
先生に見つかって怒られるも、軽いジョークで皆を笑わせ事なきを得る。何かズルい気もするが、待って産まれたものだからしょうがないと納得する。
放課後、山田は野球部なので、さっさと準備をして部活に向かう。
「んじゃ!また明日な花井ぃ!」
「…あ…また…」
山田はニコっと笑い颯爽と教室を後にした。私は帰宅部なのでノソノソと帰る準備をする、今日は何だか疲れた、お風呂に入って早めに寝よう、そんな事を考えながら教室を後にする。
校門前は桜の花びらが舞い散っていた、校庭から野球部の威勢の良い声が聞こえた。
私の名前は 「花井美里」高校一年生、とても女の子らしく可愛らしい名前だが、髪は長髪のボサボサ、これと言って特徴の無い顔、趣味は読書でオマケに眼鏡、漫画に出てくる陰キャそのもので完全に名前負けしている。私は自分の名前が大嫌いだ。
私の朝は早い、クラスで一番早く登校するのは決まって私だ。なぜか、それは誰もいない教室で読書をするのが好きだから。基本的に太宰治とか文学系が好きだが、やっぱり私も女なんだな、恋愛系も大好きだ。でも恥ずかしいので恋愛系は誰もいない朝に読む、ブックカバーをしているからタイトルが見られる事はないのに、何となく読んでいる事を隠してしまう。
まぁ恋愛小説を読んでいる自分のニヤニヤした顔を見られるのも恥ずかしいってのもある。クラスメイトが登校し出したら本をサッと文学系に変える。なので私のカバンにはいつも複数の小説が収納されている。
ガラガラガラっとひときわ大きな音で教室のドアを開ける音がする。
「諸君!おはよう!今日も元気かなぁ?」
と大きな声で挨拶をする男子が現れる。周りにいる生徒一人一人に挨拶をしながら、ズンズンとコチラに向かってきて、私の前の席にドカっと勢いよく座る。私は本を読むのを辞め覚悟を決める、男子はこちらを振り向くと。
「おっはよう花井ぃ!元気ぃ?」
「え…あ…うん…」
「今日も朝から読書ぉ?まぁーた好きだねぇ~」
「え…う…うん…」
「今日も太宰なんちゃら?楽しい?」
「えーっと…うん」
私はしどろもどろになりながらも、何とか返事だけはする。男子の名前は「山田海斗」クラスで一番の陽キャであり、私の一番の悩みの種でもある。別にイジめてくる訳ではないのだが、何故か私によく絡んでくる。特に可愛くもない陰キャの私にだ、可愛い女子は他にいっぱいいるのに、なぜ私なのか謎でしかない。
「今日は朝から数学とか眠くなるよ、花井は頭いいから授業についていけるけど、俺は全然ついていけんのよぉ~」
「そ…そんな事ないよ…」
「またまたご謙遜を、わかんない所教えてな!」
「うん…いいよ…」
やがて授業のチャイムが鳴り、担任の先生が入ってくる。ふと外を見ると桜が満開だ、私の通う高校はド田舎にあり、桜も4月の下旬にようやく見頃を迎える。高校生活も1ヶ月が過ぎた、だけど未だに山田には慣れない、あの大きい声と元気にはついて行けない。だからと言って嫌いって訳ではない、以前こんな事があった。
陽キャ女子グループが私の事をイジリだした。主に暗いとかキモいとかワザと私に聞こえる様に話す、私は言われ慣れているのでスルーしていると山田が突然大声で
「いや、別に花井はキモくないって!むしろ可愛い方だと思うけどねぇ」
おいおい心にもない事を辞めてくれ、と心の中で叫ぶが山田は止まらない。陽キャ女子が山田を煽ると
「好みなんて人それぞれだし別にいいじゃん、なぁ花井もそう思うっしょ?」
同意を求められても困る、が山田が言うと不思議と角が立たないので、その場はそれで治った。こんな風に山田は度々私をかばってくれるので、私がイジめられる事は早々に無くなった。山田は私にとって防波堤の様なものだ。
昼休み、私は母親の手作り弁当を広げる。母は料理が上手い、その他にも編み物やお菓子作りなどなんでも器用にこなす、私はおそらく不器用な父親の血を引き継いだのだろう。ノソノソ弁当を食べる私に山田が突然振り向き
「手作り弁当とかいいよなぁ~、俺なんて冷食詰め合わせ弁当だぜ?見てよ悲惨だろ?」
と冷凍食品っぽい食べ物がギュウギュウに詰まった弁当を見せてくれた。これでは栄養が偏って身体に良くない、でも山田はたしか母子家庭で母親は仕事で忙しく、山田は自分で弁当を作っている。
「いつも思うんだけど、花井の弁当って超美味そうだよな、何か一口ちょうだいよ!」
私は食べるのが遅いし、どちらかといえば少食なので、食べてくれるのは願ったり叶ったりなのだが、ふと周りを見ると皆がこちらに注目している。山田は声が大きいので会話が教室中に筒抜けなのだ、早くこの注目を終わらせたい私はスッと弁当を山田に差し出して
「い…いいよ、あとは全部たべてくれて…」
「マジ?いいの?ありがとう!」
山田はあっという間に私の弁当の残りを平らげてしまった。
「やっぱ美味いな!花井の母ちゃん料理の天才なんじゃないの?」
そりゃまぁ冷食詰め合わせ弁当に比べれば手作りだし、圧倒的に美味しいのは当たり前なのだが、自分の母親を褒めてくれるのは素直に嬉しい。
チャイムが鳴り午後の授業が始まる、山田は弁当を自分の分と私の分の二つも食べたので、授業中は爆睡していた。先生に見つかる前に起こした方が良いのかな?でも私は陰キャだしアグレッシブに男子に触るなんて事は出来ない。なので見つかる前に早く起きろと念を送っていたのだが無駄だった。
先生に見つかって怒られるも、軽いジョークで皆を笑わせ事なきを得る。何かズルい気もするが、待って産まれたものだからしょうがないと納得する。
放課後、山田は野球部なので、さっさと準備をして部活に向かう。
「んじゃ!また明日な花井ぃ!」
「…あ…また…」
山田はニコっと笑い颯爽と教室を後にした。私は帰宅部なのでノソノソと帰る準備をする、今日は何だか疲れた、お風呂に入って早めに寝よう、そんな事を考えながら教室を後にする。
校門前は桜の花びらが舞い散っていた、校庭から野球部の威勢の良い声が聞こえた。
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