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シングルベッドで二人。
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私が家を出たのは就職したのがきっかけだった。でもそれは建前で、本当は親との不仲が原因だ。
父は出来の悪い私に、事あるごとに暴力を振るった。ナツは頭が良く要領が良かったので、そこまで暴力を受ける事はなかった。母は普段は優しいが、父には逆らえず暴力を止める事はできなかった。暴力を振るう父も恨めしかったが、それを見て見ぬ振りをする母もまた恨めしかった。とにかく生傷の絶えない学生生活を送った。
大学を卒業して就職が決まると、すぐに家を出た。なるべく実家から離れたかったので、地方都市の広告代理店に就職する。その一年後ナツも後を追う様に私の家からほど近い大学に入学、田舎の一戸建てを借りて一緒に暮らしだす。私は両親とは疎遠だが、ナツは今でも連絡を取り合っているみたいだ。
お風呂から上がり、ベッドで寝ころびながら昔の事を思い出していた。ハナちゃんの背中の傷を見て、ふいに思い出してしまったのだろう。まぁ私の傷なんて、ハナちゃんの傷に比べればどうって事ないのだが、心に負った傷は大きい。今でも夜な夜な涙が出てくる事がある。
私はベッド、ハナちゃんはその隣に布団を敷いて寝てもらっている。それにしても色々な感情が溢れ出て、なかなか寝付けない。明日は日曜日、平日になれば私は仕事、ナツは大学に行く。つまりハナちゃんは一人で家でお留守番をしなければならない、色々不安だが明日一日で必要な事を教えとかないと。そんな事を考えていると余計眠れなくなる、元々眠りが浅いし寝つきも悪いので慣れてはいるのだが。
するとゴソゴソと私のベッドにハナちゃんが入ってきた。
「どしたの?」
「あの…眠れなくて…」
「私もだよ、不安な事だらけだもんね」
「はい…」
私はハナちゃんの手をそっと握る。ハナちゃんはニコッと笑い、キュッと握り返す。
「とても不安です。でもトウコさんとナツさんがいれば、何とかなりそうな気がします…」
「そっか、ならご期待に添える様にがんばんなきゃね」
私は両親から暴力を受けそうになるナツを庇ったり、イジメられている友達を助けたり。事あるごとに厄介ごとに首を突っ込んでは、結局自分が痛い目にあう。難儀な性格だとつくづく思うのだが、理不尽な事は何であろうと許せないし、母親みたいに見て見ぬフリなどしたくなかった。
するとハナちゃんが私の耳元で微かな声で歌を歌い出した。美しく優しい声に聞いた事もない言葉だったが、まるで子守歌の様でとても心地よい。さっきまで興奮していた私の感情が、嘘の様に落ち着いてまぶたが重くなってきた。
気づけば私は深い深い眠りに落ちていた。何度も目が覚めたり、変な夢を見る事もない上質な眠り…。
そして次の瞬間には何とも清々しい目覚めが待っていた。こんなスッキリとした目覚めは今まであっただろうか?私はうーんと伸びをして、窓のカーテンを開ける。天気は快晴で、鳥のさえずりがこの素晴らしい朝に花を添えてくれる。
きっと昨日のハナちゃんの子守歌のおかげなんだろうな、ふと横を見ると寝ているはずのハナちゃんがいない。あ…まさか元の世界に戻ってしまったのかな、それともこれは長い長い夢だったのかな。私はため息を吐いてベッドから立ちあがろうとすると、何か柔らかい物を踏んだ。
ん?あ!ハナちゃん!
どうやらハナちゃんは寝ている間にベッドから転げ落ちて、そのまま寝てしまっていた様だ。意外にも美少女エルフは寝相が悪いみたいだ。
「ハナちゃん、おはよう朝だよ」
ムニャムニャと起き出すハナちゃんを見て、私は少しだけホッとした。まだサヨナラには早すぎるもんね。
さて今日からが本番だ。
父は出来の悪い私に、事あるごとに暴力を振るった。ナツは頭が良く要領が良かったので、そこまで暴力を受ける事はなかった。母は普段は優しいが、父には逆らえず暴力を止める事はできなかった。暴力を振るう父も恨めしかったが、それを見て見ぬ振りをする母もまた恨めしかった。とにかく生傷の絶えない学生生活を送った。
大学を卒業して就職が決まると、すぐに家を出た。なるべく実家から離れたかったので、地方都市の広告代理店に就職する。その一年後ナツも後を追う様に私の家からほど近い大学に入学、田舎の一戸建てを借りて一緒に暮らしだす。私は両親とは疎遠だが、ナツは今でも連絡を取り合っているみたいだ。
お風呂から上がり、ベッドで寝ころびながら昔の事を思い出していた。ハナちゃんの背中の傷を見て、ふいに思い出してしまったのだろう。まぁ私の傷なんて、ハナちゃんの傷に比べればどうって事ないのだが、心に負った傷は大きい。今でも夜な夜な涙が出てくる事がある。
私はベッド、ハナちゃんはその隣に布団を敷いて寝てもらっている。それにしても色々な感情が溢れ出て、なかなか寝付けない。明日は日曜日、平日になれば私は仕事、ナツは大学に行く。つまりハナちゃんは一人で家でお留守番をしなければならない、色々不安だが明日一日で必要な事を教えとかないと。そんな事を考えていると余計眠れなくなる、元々眠りが浅いし寝つきも悪いので慣れてはいるのだが。
するとゴソゴソと私のベッドにハナちゃんが入ってきた。
「どしたの?」
「あの…眠れなくて…」
「私もだよ、不安な事だらけだもんね」
「はい…」
私はハナちゃんの手をそっと握る。ハナちゃんはニコッと笑い、キュッと握り返す。
「とても不安です。でもトウコさんとナツさんがいれば、何とかなりそうな気がします…」
「そっか、ならご期待に添える様にがんばんなきゃね」
私は両親から暴力を受けそうになるナツを庇ったり、イジメられている友達を助けたり。事あるごとに厄介ごとに首を突っ込んでは、結局自分が痛い目にあう。難儀な性格だとつくづく思うのだが、理不尽な事は何であろうと許せないし、母親みたいに見て見ぬフリなどしたくなかった。
するとハナちゃんが私の耳元で微かな声で歌を歌い出した。美しく優しい声に聞いた事もない言葉だったが、まるで子守歌の様でとても心地よい。さっきまで興奮していた私の感情が、嘘の様に落ち着いてまぶたが重くなってきた。
気づけば私は深い深い眠りに落ちていた。何度も目が覚めたり、変な夢を見る事もない上質な眠り…。
そして次の瞬間には何とも清々しい目覚めが待っていた。こんなスッキリとした目覚めは今まであっただろうか?私はうーんと伸びをして、窓のカーテンを開ける。天気は快晴で、鳥のさえずりがこの素晴らしい朝に花を添えてくれる。
きっと昨日のハナちゃんの子守歌のおかげなんだろうな、ふと横を見ると寝ているはずのハナちゃんがいない。あ…まさか元の世界に戻ってしまったのかな、それともこれは長い長い夢だったのかな。私はため息を吐いてベッドから立ちあがろうとすると、何か柔らかい物を踏んだ。
ん?あ!ハナちゃん!
どうやらハナちゃんは寝ている間にベッドから転げ落ちて、そのまま寝てしまっていた様だ。意外にも美少女エルフは寝相が悪いみたいだ。
「ハナちゃん、おはよう朝だよ」
ムニャムニャと起き出すハナちゃんを見て、私は少しだけホッとした。まだサヨナラには早すぎるもんね。
さて今日からが本番だ。
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