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歌声。
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アコースティックギターの演奏に合わせて、美しい歌声がリビングに響き渡る。
ハナちゃんがこの世界にやって来て一ヶ月がたったある日の晩、ナツとハナちゃんが台所でお皿を洗っている。ハナちゃんがなんとなく鼻歌を歌いながら洗っていた。今日の夕飯はハナちゃんの大好物の唐揚げが出たので、気分が良かったのだろう。まるで子どもの様に口いっぱいにほうばりながら食べるハナちゃんは可愛かった。すると突然ナツが皿洗いの手を止めて、ジッとハナちゃんの鼻歌を聞き出した。
「ねっ、ハナちゃん」
「はい?何ですか」
「今の鼻歌ってTVのCMの曲だよね?」
「はい、昼間は暇でよくTVを見ているので、いつの間にか覚えてしまいました」
「ちょっとその歌、ちゃんと歌ってくれない?」
「え?はい、わかりました…」
ハナちゃんは恐る恐るCMの曲を歌い出した。するとリビングでなんとなく話を聞いていた私にもハッキリと分かるくらい、美しい歌声が響き渡る。確かお菓子メーカーのCMで、どちらかと言うとポップで子ども受けする歌なのだが、ハナちゃんが歌うとまるで讃美歌の様に美しくなり、とても癒される歌声だった。
私もナツも目を丸くして聞き入ってしまった。ハナちゃんが歌い終わると二人して拍手喝采、私なんてちょっと涙が出るくらい感動してしまった。そういえばエルフの歌声って、何か特殊な能力があったりするんじゃなかったっけ?
そんな経緯があり、バンドマンのナツのギターの伴奏に合わせてハナちゃんがリビングで歌っている。とはいえこの世界の歌をほぼ知らないハナちゃんはCMの曲や童謡など、比較的覚え易く簡単な曲をチョイスして歌う。そのどれもが美しく癒される歌声なので、私はそばでうっとりしながら聴いていた。
「いやぁ、スゴイ!天才現る!ハナちゃん歌手にならない?」
「え?かしゅ…?」
「えっとね、歌を歌ってお金を稼ぐ人…かな?」
「あ!吟遊詩人さんですかね?」
「とりあえずさ、今歌った曲をもっと完成させて動画にUPしようよ、こりゃ人気でるぞぉ」
「いや、でもエルフだし顔は出せないでしょ?」
「お姉ちゃん知らないの?最近は顔を出さないで、動画でメチャ人気ある歌手とかいるんだよぉ」
なるほど、顔を出さないで歌声だけ披露するならハナちゃんにでも出来る。それに普段から家でジッとしているハナちゃんのストレス解消にもなるだろうし、こりゃ悪くない。私の家のお隣さんは畑を挟んで50メートルくらい離れているので、近所迷惑にもならないだろうし。
「それに、動画で人気が出たらお金も入るんだよ!一人増えた分、生活費の足しになると思うよぉ」
なんと!動画など全く興味がない私は、動画でお金を稼ぐ事ができる事など全く知らなかった。それにハナちゃんはよく食べるので、ついつい多めに作って食費が増えてしまう。でもハナちゃんの唯一の楽しみを減らしてしまうのも心苦しいし…。
「って言ってもウチのバンドの動画は全く人気無くて、お金入ってこないんだけどねぇ」
だよな~、世の中そんなに甘くない。まぁでもとりあえず試しにやってみるのも良いかもしれない、さっそくナツの部屋でハナちゃんの歌を動画に撮ってみた。とりあえずさっき歌ったCMの曲を撮り、すぐにナツが編集して投稿、普段自分のバンドの動画を投稿しているので慣れたものだ。さて明日は仕事だし夜も遅いので、この日はそのまま就寝。
そして翌朝、ドタドタドタっと私の部屋にナツが走り込んできた。
「お姉ちゃん!大変だ!見て!」
「んー?にゃに?」
「ちょっと!大変な事が起きてるよ!」
ナツが持って来たスマホを寝ぼけ眼で見てみる、ハナちゃんの歌の動画だ。えーっと再生回数が、いちじゅうひゃくせんまんじゅ…じゅ…じゅ?
10万回!?
「しかもチャンネル登録者がすでに3000人を超えているから、お金も出ちゃうよ!たった一本の動画で!」
ハナちゃんはそんな事はお構いなしにスヤスヤと眠っている。こりゃ朝からえらい事になった…。
ハナちゃんがこの世界にやって来て一ヶ月がたったある日の晩、ナツとハナちゃんが台所でお皿を洗っている。ハナちゃんがなんとなく鼻歌を歌いながら洗っていた。今日の夕飯はハナちゃんの大好物の唐揚げが出たので、気分が良かったのだろう。まるで子どもの様に口いっぱいにほうばりながら食べるハナちゃんは可愛かった。すると突然ナツが皿洗いの手を止めて、ジッとハナちゃんの鼻歌を聞き出した。
「ねっ、ハナちゃん」
「はい?何ですか」
「今の鼻歌ってTVのCMの曲だよね?」
「はい、昼間は暇でよくTVを見ているので、いつの間にか覚えてしまいました」
「ちょっとその歌、ちゃんと歌ってくれない?」
「え?はい、わかりました…」
ハナちゃんは恐る恐るCMの曲を歌い出した。するとリビングでなんとなく話を聞いていた私にもハッキリと分かるくらい、美しい歌声が響き渡る。確かお菓子メーカーのCMで、どちらかと言うとポップで子ども受けする歌なのだが、ハナちゃんが歌うとまるで讃美歌の様に美しくなり、とても癒される歌声だった。
私もナツも目を丸くして聞き入ってしまった。ハナちゃんが歌い終わると二人して拍手喝采、私なんてちょっと涙が出るくらい感動してしまった。そういえばエルフの歌声って、何か特殊な能力があったりするんじゃなかったっけ?
そんな経緯があり、バンドマンのナツのギターの伴奏に合わせてハナちゃんがリビングで歌っている。とはいえこの世界の歌をほぼ知らないハナちゃんはCMの曲や童謡など、比較的覚え易く簡単な曲をチョイスして歌う。そのどれもが美しく癒される歌声なので、私はそばでうっとりしながら聴いていた。
「いやぁ、スゴイ!天才現る!ハナちゃん歌手にならない?」
「え?かしゅ…?」
「えっとね、歌を歌ってお金を稼ぐ人…かな?」
「あ!吟遊詩人さんですかね?」
「とりあえずさ、今歌った曲をもっと完成させて動画にUPしようよ、こりゃ人気でるぞぉ」
「いや、でもエルフだし顔は出せないでしょ?」
「お姉ちゃん知らないの?最近は顔を出さないで、動画でメチャ人気ある歌手とかいるんだよぉ」
なるほど、顔を出さないで歌声だけ披露するならハナちゃんにでも出来る。それに普段から家でジッとしているハナちゃんのストレス解消にもなるだろうし、こりゃ悪くない。私の家のお隣さんは畑を挟んで50メートルくらい離れているので、近所迷惑にもならないだろうし。
「それに、動画で人気が出たらお金も入るんだよ!一人増えた分、生活費の足しになると思うよぉ」
なんと!動画など全く興味がない私は、動画でお金を稼ぐ事ができる事など全く知らなかった。それにハナちゃんはよく食べるので、ついつい多めに作って食費が増えてしまう。でもハナちゃんの唯一の楽しみを減らしてしまうのも心苦しいし…。
「って言ってもウチのバンドの動画は全く人気無くて、お金入ってこないんだけどねぇ」
だよな~、世の中そんなに甘くない。まぁでもとりあえず試しにやってみるのも良いかもしれない、さっそくナツの部屋でハナちゃんの歌を動画に撮ってみた。とりあえずさっき歌ったCMの曲を撮り、すぐにナツが編集して投稿、普段自分のバンドの動画を投稿しているので慣れたものだ。さて明日は仕事だし夜も遅いので、この日はそのまま就寝。
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