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姉妹&姉妹
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ニーナ…様が家に来て最初の夜、寝る場所はハナちゃんと二人きりで、人間と一緒はヤダと文句を言われたので仕方なく私の部屋を貸す事にした。
酷い目にあってコチラの世界にやって来たのは同情するが、あれやこれや文句を言われると正直ウンザリする。ハナちゃんも何とか諌めようとしてくれるのだが、ニーナ様のパワーに押し切られてしまう。
「んじゃこの部屋で寝て」
「狭い部屋ね、ベッドが一つしかないじゃない、まぁ姉様と一緒に寝るからいいけど」
くっ…私の癒しであり安眠の抱き枕であるハナちゃんが、しかも悪態までつかれて踏んだり蹴ったりだ。
「ちょっと、このベッド人間の臭いがするから、シーツとか替えてちょうだい」
「ニ…ニーナさん、そこまでしてもらわなくても…」
「いいよハナちゃん、今やるからちょっと待ってて…」
「あと!その姉様に向かってハナちゃんと呼ぶのは無礼よ、ちゃんとリティア様と呼びなさいよ」
ブチっ、何かが切れる音と同時に私はまるで獣の様な勢いでニーナ様に罵詈雑言をまくしたてた。
「おいコラ!お前ちょっといい加減にしろよ!」
このあと何を言っていたかよく覚えていないが、かなり酷い事を言ったのはたしかだ。でも妹が名付けて、この1ヶ月間親しみを込めて呼び続けた名前を無礼扱いされるのは許せなかった。
私の獣の様な咆哮が収まると、部屋はシンと静まり返った。そして次の瞬間、堰を切ったかの様なニーナ様の大号泣が始まった。ハナちゃんはオロオロするばかりで、私はただ立ち尽くしていた。このカオス状態を収めてくれたのは、やはりナツだった。
「もぉ~喧嘩はだめだよぉ、これから一緒に暮らすんだから仲良くしなきゃ。お姉ちゃんはとりあえずリビングにいこうか、ハナちゃんあとはよろしくねぇ」
「はい…あの…トウコさん、すいません…」
「え…あ…うん…私もゴメンね、おやすみ…」
ナツに連れられてリビングへ、するとナツが何も言わずにビールを持って来てくれた。私はビールを一気に飲み干す、いつもなら美味しいビールも、今日は何だか味が微妙だ。ナツは黙ってビールを飲んでいる。
「…なんか言いたい事あるなら言いなさいよ」
「ん~別にぃ、なんもないよぉ」
「大人気ないとか、みっともないとか、うるさいとか色々あるでしょ?」
「んー、ちょっとスッキリしたかなっ」
「は?」
「そりゃ私だってニーナ様の態度にイラッとしてたし、そしたらお姉ちゃんが気持ちよ~く代弁してくれたから」
「代弁って、ただ怒鳴ってただけじゃん…あんなの父さんと同じだよ…」
「あはは、血は争えないねぇ」
子供の頃は些細なことで、よく父親に怒鳴られたり叩かれたりしていた。叩きこそしなかったが、あの父親と同じ事をしてしまった自分が情けなかった。ニーナ様の正確な歳は知らないが、見た目はまだ小学5~6年生くらい、そんな子どもに怒鳴るなんて私は父親の遺伝子を色濃く受け継いでしまったのか?いやだいやだ…。
「お姉ちゃん、今日はどこで寝るの?」
「このソファーで寝る」
「あのさ、今日は私の部屋で寝ない?」
「え?い…いいの?」
「もちろん!昔は良く一緒に寝てたじゃん」
その日はナツのベッドで一緒に寝た、いつもはハナちゃんを抱き枕にしている私が、今日はナツの抱き枕にされてしまった。
翌朝、ハナちゃんがニーナ様を連れてリビングにやってきた。ニーナ様の目は真っ赤に腫れていた、一晩中泣いていたのかな。私はすぐに謝ろうとしたが、先にニーナ様が喋りだした。
「昨日は…ワガママや無礼な事を言ってしまって本当に…ごめんなさい。食事や寝る場所を快く提供してくれたのに、本当に本当に…ご…ごめんなさい」
言い終わるとまたニーナ様の目から大粒の涙がポロポロ流れ落ちて来た、私はニーナ様をギュッと抱きしめた。
「私もごめんね、いきなり怒鳴られて怖かったよね。もう2度とあんな事はしないから、約束する」
つられて私も涙が溢れて来た。
「ありがとう…トウコ…」
そういえば昨日はちゃんと自己紹介してなかったな。名前は昨日の夜にハナちゃんから教わったのだろう。
「はいはい!仲直り出来たところで、朝ごはんにするよぉ~。二人とも朝からメソメソしてないで顔洗ってきなよ」
私はニーナ様の手を握り洗面所へと向かった。
酷い目にあってコチラの世界にやって来たのは同情するが、あれやこれや文句を言われると正直ウンザリする。ハナちゃんも何とか諌めようとしてくれるのだが、ニーナ様のパワーに押し切られてしまう。
「んじゃこの部屋で寝て」
「狭い部屋ね、ベッドが一つしかないじゃない、まぁ姉様と一緒に寝るからいいけど」
くっ…私の癒しであり安眠の抱き枕であるハナちゃんが、しかも悪態までつかれて踏んだり蹴ったりだ。
「ちょっと、このベッド人間の臭いがするから、シーツとか替えてちょうだい」
「ニ…ニーナさん、そこまでしてもらわなくても…」
「いいよハナちゃん、今やるからちょっと待ってて…」
「あと!その姉様に向かってハナちゃんと呼ぶのは無礼よ、ちゃんとリティア様と呼びなさいよ」
ブチっ、何かが切れる音と同時に私はまるで獣の様な勢いでニーナ様に罵詈雑言をまくしたてた。
「おいコラ!お前ちょっといい加減にしろよ!」
このあと何を言っていたかよく覚えていないが、かなり酷い事を言ったのはたしかだ。でも妹が名付けて、この1ヶ月間親しみを込めて呼び続けた名前を無礼扱いされるのは許せなかった。
私の獣の様な咆哮が収まると、部屋はシンと静まり返った。そして次の瞬間、堰を切ったかの様なニーナ様の大号泣が始まった。ハナちゃんはオロオロするばかりで、私はただ立ち尽くしていた。このカオス状態を収めてくれたのは、やはりナツだった。
「もぉ~喧嘩はだめだよぉ、これから一緒に暮らすんだから仲良くしなきゃ。お姉ちゃんはとりあえずリビングにいこうか、ハナちゃんあとはよろしくねぇ」
「はい…あの…トウコさん、すいません…」
「え…あ…うん…私もゴメンね、おやすみ…」
ナツに連れられてリビングへ、するとナツが何も言わずにビールを持って来てくれた。私はビールを一気に飲み干す、いつもなら美味しいビールも、今日は何だか味が微妙だ。ナツは黙ってビールを飲んでいる。
「…なんか言いたい事あるなら言いなさいよ」
「ん~別にぃ、なんもないよぉ」
「大人気ないとか、みっともないとか、うるさいとか色々あるでしょ?」
「んー、ちょっとスッキリしたかなっ」
「は?」
「そりゃ私だってニーナ様の態度にイラッとしてたし、そしたらお姉ちゃんが気持ちよ~く代弁してくれたから」
「代弁って、ただ怒鳴ってただけじゃん…あんなの父さんと同じだよ…」
「あはは、血は争えないねぇ」
子供の頃は些細なことで、よく父親に怒鳴られたり叩かれたりしていた。叩きこそしなかったが、あの父親と同じ事をしてしまった自分が情けなかった。ニーナ様の正確な歳は知らないが、見た目はまだ小学5~6年生くらい、そんな子どもに怒鳴るなんて私は父親の遺伝子を色濃く受け継いでしまったのか?いやだいやだ…。
「お姉ちゃん、今日はどこで寝るの?」
「このソファーで寝る」
「あのさ、今日は私の部屋で寝ない?」
「え?い…いいの?」
「もちろん!昔は良く一緒に寝てたじゃん」
その日はナツのベッドで一緒に寝た、いつもはハナちゃんを抱き枕にしている私が、今日はナツの抱き枕にされてしまった。
翌朝、ハナちゃんがニーナ様を連れてリビングにやってきた。ニーナ様の目は真っ赤に腫れていた、一晩中泣いていたのかな。私はすぐに謝ろうとしたが、先にニーナ様が喋りだした。
「昨日は…ワガママや無礼な事を言ってしまって本当に…ごめんなさい。食事や寝る場所を快く提供してくれたのに、本当に本当に…ご…ごめんなさい」
言い終わるとまたニーナ様の目から大粒の涙がポロポロ流れ落ちて来た、私はニーナ様をギュッと抱きしめた。
「私もごめんね、いきなり怒鳴られて怖かったよね。もう2度とあんな事はしないから、約束する」
つられて私も涙が溢れて来た。
「ありがとう…トウコ…」
そういえば昨日はちゃんと自己紹介してなかったな。名前は昨日の夜にハナちゃんから教わったのだろう。
「はいはい!仲直り出来たところで、朝ごはんにするよぉ~。二人とも朝からメソメソしてないで顔洗ってきなよ」
私はニーナ様の手を握り洗面所へと向かった。
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