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1章
1話
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父上が死んで何年経ったのか...。この蔵には暦も何も無いからわからない。
誰か私を見つけてくれないだろうか。そもそも彼とは誰なのか。父上をあそこまで狂わせたのだからきっと美しいのだろう。
それにしても父上は何を作ろうとしていたのだろうか。人形?それとも人間?
父上はよく私にこう言った。
「お前は人形なんだから人間になろうとしては駄目だ。ただ物としてあれ。憧れるな。焦がれるな。お前は物だ。物なんだよ。」
では何で、私をこんな姿で作ったの。
彼によく似るように作られたこの姿はなんなの。
鏡に映る人間は誰なの。
どうして私には心があるの。なんで人間に憧れちゃダメなの。ねえ父上、私を見て。
私を透かして彼を見ないで。愛おしそうな顔で見ないで。
貴方が言ったんだ。私は物になれと。私は物なんだよ。ものをそんなに愛おしそうに見るのなんて変態くらいだ。
【本当に?】
突然声が聞こえた。人間がいるんだろうか。
【ねえ、本当に?】
本当に?本当に?と煩い奴だな。何がだ。父上が変態かどうかってやつか。
【ねえ、本当にそう思うの?本当にそう思ってるの?】
思ってる。私は本当に思ってるよ。父上が変態だとな。
【変態って何?ねえ、なんで喋ってくれないの?】
いや、本当に?と君が質問してきたんだろう。
喋れないのさ。喋り方がわからない。
完璧に人間の体が再現されてはいるが所詮木の身体だ。
人間とは勝手が違う。...って何で声に出してないのに私が思ってることがわかるんだ。
【神様だからだよ!ねえ、ねえ、ねえ。あなたは本当に自分が物だと思ってるの?】
あぁ、そっちの話か。...神かー。それはまた突飛な話だな。
【ねえ質問に答えてよ。あなたは本当に自分が物だと思ってるの?】
あぁ。思ってるよ。
【うそつき。】
何?
【物はね。愛してほしい、自分を見てほしいだなんて思わないんだよ。】
...。
【貴女はね、身体は木。だけど見た感じは普通の人間なの。何でかわかる?】
わからない。
【思い込みの力って知ってる?思い込むだけで姿形が変わったりするんだよ。】
へぇ。それが私と何の関係があるんだい。
【まだわからないの?あなたは上辺では自分は物だ物だと言ってるけど。
心の奥底では自分は人間になりたいなりたいなりたいってずっと思ってるんだよ。】
そんな事は...
【そんな事あるよね?思ってるよね?】
思ってないさ...。
【ううん。思ってるよ!】
思ってない...!
【もう自分を誤魔化さないでよ!! 】
うるさいな!!!!!
「私にもう話しかけないでくれ!!!」
しん...と部屋が静まり返る。まるで何も無かったかのように。さっきの自称神はもうどこかへ行ってしまったのだろうか。
そんなことにも気づかないくらい私は一人驚いていた。
声が出た
しかし、もう一度声をだそうとしても呻き声一つでなかった。
そして私はまた一人になった。
誰か私を見つけてくれないだろうか。そもそも彼とは誰なのか。父上をあそこまで狂わせたのだからきっと美しいのだろう。
それにしても父上は何を作ろうとしていたのだろうか。人形?それとも人間?
父上はよく私にこう言った。
「お前は人形なんだから人間になろうとしては駄目だ。ただ物としてあれ。憧れるな。焦がれるな。お前は物だ。物なんだよ。」
では何で、私をこんな姿で作ったの。
彼によく似るように作られたこの姿はなんなの。
鏡に映る人間は誰なの。
どうして私には心があるの。なんで人間に憧れちゃダメなの。ねえ父上、私を見て。
私を透かして彼を見ないで。愛おしそうな顔で見ないで。
貴方が言ったんだ。私は物になれと。私は物なんだよ。ものをそんなに愛おしそうに見るのなんて変態くらいだ。
【本当に?】
突然声が聞こえた。人間がいるんだろうか。
【ねえ、本当に?】
本当に?本当に?と煩い奴だな。何がだ。父上が変態かどうかってやつか。
【ねえ、本当にそう思うの?本当にそう思ってるの?】
思ってる。私は本当に思ってるよ。父上が変態だとな。
【変態って何?ねえ、なんで喋ってくれないの?】
いや、本当に?と君が質問してきたんだろう。
喋れないのさ。喋り方がわからない。
完璧に人間の体が再現されてはいるが所詮木の身体だ。
人間とは勝手が違う。...って何で声に出してないのに私が思ってることがわかるんだ。
【神様だからだよ!ねえ、ねえ、ねえ。あなたは本当に自分が物だと思ってるの?】
あぁ、そっちの話か。...神かー。それはまた突飛な話だな。
【ねえ質問に答えてよ。あなたは本当に自分が物だと思ってるの?】
あぁ。思ってるよ。
【うそつき。】
何?
【物はね。愛してほしい、自分を見てほしいだなんて思わないんだよ。】
...。
【貴女はね、身体は木。だけど見た感じは普通の人間なの。何でかわかる?】
わからない。
【思い込みの力って知ってる?思い込むだけで姿形が変わったりするんだよ。】
へぇ。それが私と何の関係があるんだい。
【まだわからないの?あなたは上辺では自分は物だ物だと言ってるけど。
心の奥底では自分は人間になりたいなりたいなりたいってずっと思ってるんだよ。】
そんな事は...
【そんな事あるよね?思ってるよね?】
思ってないさ...。
【ううん。思ってるよ!】
思ってない...!
【もう自分を誤魔化さないでよ!! 】
うるさいな!!!!!
「私にもう話しかけないでくれ!!!」
しん...と部屋が静まり返る。まるで何も無かったかのように。さっきの自称神はもうどこかへ行ってしまったのだろうか。
そんなことにも気づかないくらい私は一人驚いていた。
声が出た
しかし、もう一度声をだそうとしても呻き声一つでなかった。
そして私はまた一人になった。
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