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1章
2話
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また何年か経った。私はまだ蔵に居た。
自称神もあれから二度と出てこなかった。
そんなある日のことだ。
私の人生...人生...?とりあえずまあ私の人生(仮)は180度変わるんだよ。
突然蔵の扉ががたがた音を立ててさ。なんだなんだと思っていたら突然
「おとっつぁん!!」っていう言葉とともに若い男が転がり込んできた。
その形相はもう凄まじくてさ。まるで鬼のようだったな。うん。
そんでもって私の足元に転がる完全に白骨化している父上に縋りついたんだ。
私は思ったね。
おとっつぁん!!って勢いよく入ってくるくらい父上を心配していたのならもっと早く見に来いよと。
それで、ひとしきり泣いたあとに男は父上の亡骸を持って帰った。
それから幾月かは人の気配がなかったのだが...
ふらっと蔵の中に何ヶ月かぶりにきた若者は私を見つけて目を見開きこういった。
「...人だ。人が居る。おとっつぁん!なんというものを作ってしまったんだ!!あな恐ろしや!こんなものはおとっつぁんには悪いが燃やしてしまおう...。」
流石に焦ったよ。燃やされるのは勘弁だと思ったからな。
いやしかし、ここでふとこんなことを思ったんだ。
思ってしまったんだよ。
ここで彼が来てくれたのならば、私を助けてくれるのだろうかと。
この十数年間の間に私の彼に対する想像は膨らんでいた。
優しいのか、冷たいのか、喋り方はどんなのものなのか、目は何色か、髪は何色か、名前は、苗字は、どんな声なのか、身長は、家族構成は、色々考えて考えて時間を潰してきた。
しかし、ついぞ会うことは無かったな。一度でもいいから君に会ってみたかったよ。
「永安の子よ。しばし待て。」
凛とした声が蔵の外から聴こえてきた。
「あ、あぁ。月条の坊ちゃん。どうしたんですか?」
若い男の声が少し震えていた。
「いや何、蔵の前で火打石を持って俯いて居たのでな。永安が死に気でも狂ったのかと思い話しかけたまでだ。」
『なんだこいつ。ブラックジョークかましてる場合じゃないぞ。』
若い男は首を横に振りながら言った
「あぁ...いや気は狂っていやせん。しかし...おとっつぁんが残した形見が...」
『形見?...あぁ私の事か。』
若い男が少しどもったのを聞いて、月条と呼ばれた男は小首を傾げながら聞いた
「形見がどうしたというのだ。」
すると、若い男は目をキョロキョロさせながら言った
「人、なのでごぜぇやす。」
『その喋り方やめろなんか腹立つ。』
それを聞いた途端月条は口元に振袖を当てて笑った
「はっはっは!!人か!永安の子よ!お主やはり気が触れたのではないか?」
笑ってる...何でだろうか。ココロがざわざわする。私の心の中にいる父上が出ようともがいている気がする。あの月条とかいう男の元へ出ようとしている気がする。
「わ、笑い事じゃあございやせん!!見てみてくだせぇ坊ちゃん!!」
若い男が月条を蔵の中に招き入れようとしているのを聞き人形は
『さて、月条とかいう男はどんな顔をしているのだろうか。拝ませてもらおうじゃないか』
と、興味津々と言わんばかりに呟いた
「ははは。わかったわかった。どれどれ、どこに人が居るというのだ?」
目が合った。
「ふ...確かに人のようだ。しかしこれはただの人形だろう?怯えることは無い。燃やしてしまってはそれこそ祟られるのではないか?」
もう、人形には月条の声が聞こえていなかった。あまりにも綺麗な目の前の男に目を奪われていた
『とても綺麗だ。父上が執心するのもわかる。』
「いやしかし...蔵にこんなものがあるのを考えるだけで夜も眠れやせん。」
『私がそんなに怖いか。』
先程まで目を奪われて放心状態だった人形だが若い男が大袈裟に怯えているのを聞いて人形は少し意地悪そうに聞いた
「ふむ...では俺がこれを貰っていこう。それならば文句はあるまいて。」
『...嬉しい限りだが...月条の家が許してくれるのか...?』
月条が若い男に聞いているのを聞いて人形は少し微笑みながら言った
「ほ、本当ですかい坊ちゃん!!有難いです!!では今運ぶものを持ってきやす!!」
『あんなに嬉しそうな顔しちゃってまあ...少しは情というものがないのかね。君の父上が最期に作った人形だぞ』
飛び上がりながら喜び走り出そうとする若い男を見て人形は言った
「あぁ、良い。いらぬ。」
そう言うと彼は埃や蜘蛛の巣にまみれた人形の体をひょいと持ち上げた
「人形くらい一人で持てるぞ。」
そう言うと呆然とする若い男を置いて家へと向かった。
自称神もあれから二度と出てこなかった。
そんなある日のことだ。
私の人生...人生...?とりあえずまあ私の人生(仮)は180度変わるんだよ。
突然蔵の扉ががたがた音を立ててさ。なんだなんだと思っていたら突然
「おとっつぁん!!」っていう言葉とともに若い男が転がり込んできた。
その形相はもう凄まじくてさ。まるで鬼のようだったな。うん。
そんでもって私の足元に転がる完全に白骨化している父上に縋りついたんだ。
私は思ったね。
おとっつぁん!!って勢いよく入ってくるくらい父上を心配していたのならもっと早く見に来いよと。
それで、ひとしきり泣いたあとに男は父上の亡骸を持って帰った。
それから幾月かは人の気配がなかったのだが...
ふらっと蔵の中に何ヶ月かぶりにきた若者は私を見つけて目を見開きこういった。
「...人だ。人が居る。おとっつぁん!なんというものを作ってしまったんだ!!あな恐ろしや!こんなものはおとっつぁんには悪いが燃やしてしまおう...。」
流石に焦ったよ。燃やされるのは勘弁だと思ったからな。
いやしかし、ここでふとこんなことを思ったんだ。
思ってしまったんだよ。
ここで彼が来てくれたのならば、私を助けてくれるのだろうかと。
この十数年間の間に私の彼に対する想像は膨らんでいた。
優しいのか、冷たいのか、喋り方はどんなのものなのか、目は何色か、髪は何色か、名前は、苗字は、どんな声なのか、身長は、家族構成は、色々考えて考えて時間を潰してきた。
しかし、ついぞ会うことは無かったな。一度でもいいから君に会ってみたかったよ。
「永安の子よ。しばし待て。」
凛とした声が蔵の外から聴こえてきた。
「あ、あぁ。月条の坊ちゃん。どうしたんですか?」
若い男の声が少し震えていた。
「いや何、蔵の前で火打石を持って俯いて居たのでな。永安が死に気でも狂ったのかと思い話しかけたまでだ。」
『なんだこいつ。ブラックジョークかましてる場合じゃないぞ。』
若い男は首を横に振りながら言った
「あぁ...いや気は狂っていやせん。しかし...おとっつぁんが残した形見が...」
『形見?...あぁ私の事か。』
若い男が少しどもったのを聞いて、月条と呼ばれた男は小首を傾げながら聞いた
「形見がどうしたというのだ。」
すると、若い男は目をキョロキョロさせながら言った
「人、なのでごぜぇやす。」
『その喋り方やめろなんか腹立つ。』
それを聞いた途端月条は口元に振袖を当てて笑った
「はっはっは!!人か!永安の子よ!お主やはり気が触れたのではないか?」
笑ってる...何でだろうか。ココロがざわざわする。私の心の中にいる父上が出ようともがいている気がする。あの月条とかいう男の元へ出ようとしている気がする。
「わ、笑い事じゃあございやせん!!見てみてくだせぇ坊ちゃん!!」
若い男が月条を蔵の中に招き入れようとしているのを聞き人形は
『さて、月条とかいう男はどんな顔をしているのだろうか。拝ませてもらおうじゃないか』
と、興味津々と言わんばかりに呟いた
「ははは。わかったわかった。どれどれ、どこに人が居るというのだ?」
目が合った。
「ふ...確かに人のようだ。しかしこれはただの人形だろう?怯えることは無い。燃やしてしまってはそれこそ祟られるのではないか?」
もう、人形には月条の声が聞こえていなかった。あまりにも綺麗な目の前の男に目を奪われていた
『とても綺麗だ。父上が執心するのもわかる。』
「いやしかし...蔵にこんなものがあるのを考えるだけで夜も眠れやせん。」
『私がそんなに怖いか。』
先程まで目を奪われて放心状態だった人形だが若い男が大袈裟に怯えているのを聞いて人形は少し意地悪そうに聞いた
「ふむ...では俺がこれを貰っていこう。それならば文句はあるまいて。」
『...嬉しい限りだが...月条の家が許してくれるのか...?』
月条が若い男に聞いているのを聞いて人形は少し微笑みながら言った
「ほ、本当ですかい坊ちゃん!!有難いです!!では今運ぶものを持ってきやす!!」
『あんなに嬉しそうな顔しちゃってまあ...少しは情というものがないのかね。君の父上が最期に作った人形だぞ』
飛び上がりながら喜び走り出そうとする若い男を見て人形は言った
「あぁ、良い。いらぬ。」
そう言うと彼は埃や蜘蛛の巣にまみれた人形の体をひょいと持ち上げた
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そう言うと呆然とする若い男を置いて家へと向かった。
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