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コンビニスイーツ de 祝賀会
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落ち着いた紫雨がいなほの手を握り、自分の隣に座らせる。
「さぁ、凛空も遠慮しないで座ってちょうだい。それに同じ神だし、敬語は使わずに普通に話してね」
紫雨はいなほの隣に凛空が座るように指示してくる。
テーブルの下は掘りごたつになっていて、ふかふかの座布団の座り心地は絶品だった。
(すげぇ、気持ちいいな~)
座布団の気持ち良さを堪能している間に、葉暮と黒羽も凛空たちと向かい合うように座った。
銀髪の狐火は冬月と名乗ってくれたものの、なぜか律儀に部屋の隅に正座して絶対にこちらへ来ようとしなかった。
「気にしないで。あたしの狐火はかなり石頭なの」
細い肩を竦めて紫雨が苦笑する。
彼らを見回して、凛空がテーブルの上を手で示しながら提案する。
「せっかくだ、スイーツをみんなも食べないか? もちろん嫌いなら強制しない。好きなのがあるなら遠慮なく食べてくれ」
生まれて初めてコンビニのカゴに入りきらないほど買い込んだスイーツたち。
この場に集まった全員で一つずつ食べても余ってしまう。
「わぁ、うれしい! そうだわ、凛空と狐火ちゃんの福の神デビューをお祝いする会にしようか」
「いいですね、賛成です!」
両手を合わせて頬に当て、笑顔で真っ先に賛同する紫雨に続き、葉暮も片手を上げる。
黒羽も異論はないらしく、飲み物は何にするかを聞いてくる。
「凛空もお酒にしときなさいよー。うちの酒は冬月特製でとっても美味いわよ。ここでしか飲めないんだから」
葉暮に頼んでいた目当てのスイーツを選んだ紫雨が口を挟む。
凛空はカリカリ、と頬をかきながら自白する。
「悪いけど……オレ、酒がまったく飲めないから」
「ええっ! まったく? 嘘でしょ~!」
大げさなくらいに紫雨が驚く。福の神になる前にもさんざん驚かれたが、酒が飲めないことがそんなに珍しいのだろうか。凛空は毎回複雑な心境になる。
「まったくって言うか、ひと口くらいなら飲めるけど、それ以上はムリ。寝るか吐いちまう」
「ふぅ~ん。でも福の神になったら体質変わった、なんて話も聞くし試してみたら?」
本当にダメそうならひと口でやめときなよ、と言いながら紫雨の前に用意されていた熱燗を凛空の前に置いたおちょこに注ぐ。
ふわっと甘く爽やかな香りがした。
「みんな、遠慮しないで選んでくれよ?」
凛空たちの会話に気を取られていたのか、葉暮たちが自分たちの飲み物を用意したまま、スイーツを選んでいなかったから声をかける。
「ありがとうございます。けれど凛空様たちがお買い上げになった品です。先に選んでください。僕たちはその後でいただきます」
どこまでも真面目な葉暮のセリフに黒羽も頷いていて、これは何を言っても聞かないなと悟った凛空が、先に選んで引き寄せる。
「いなほはどれにする?」
紫雨の横でちょこんと座っているいなほに声をかけた時、黒羽が狛犬姿から変わった時のような白煙が一瞬でいなほを包んだ。
すっと白煙が消えると、狐面をつけた獣耳と尻尾がある狐火姿に戻っていた。
「あら~、いなほちゃんは時間切れねー」
「時間切れ?」
少しの間見なかっただけなのに、妙に懐かしい狐火スタイルのいなほの頭を紫雨が撫でながら説明する。
「狐火は生まれた時からいろいろ出来るけれど、力はまだ弱いから限界は近いのよ。福の神と時間を共有するほどに力を強めて、さらに幅広く、長く使えるようになっていくけどね」
紫雨が自分のおちょこを指差して、これがあなたたちと例えながら酒を少し注いで、くいっと飲み干す。
空になったおちょこの中を凛空に見せて、あっさり空になるでしょと言って片目を閉じる。
「これはいなほちゃんだけじゃなくて、凛空も同じ。ふたりとも生まれたてだから、できることも限られているし、持続力も低いわけ。いなほちゃんはここで燃料切れ。凛空も油断しないこと。ここに来るまでに神の力を使っているなら、これ以上は使えないと思った方がいい。実際に見た目が変わってるんじゃない?」
「……あ」
紫雨に指摘されてはじめて気づいた。
コンビニに行く前に人間の姿になった凛空は、神になる前のくたびれた姿だったはずだ。
蒼さんに水をかけられ、着替えを借りて姿見で確認した時、凛空は若返った姿で良かったと思ったのだ。
(い、いつの間に戻ってたんだ? 全然気づかなかった!)
凛空の顔色を観察していた紫雨がふっと不敵に笑う。
「ま、自分以外の神の領域に入る時は、本来の姿に戻る方が好まれる。無駄に力を消耗しなくても良いからね。特に生まれたてのあんたは、その姿でいなさい」
「……制服が似合う年頃の姿だから、じゃないですよね?」
「あ、当たり前でしょう? あんたはあたしを何だと思っているの?」
真面目なこと言ってるが、紫雨はスイッと凛空から目を逸らした。
(変態じゃないかと思ってますよ……まったく信憑性がないデス!)
ジト目で睨む凛空と視線を合わせないようにして、紫雨はいなほに話しかける。
「いなほちゃんは、どれにするか決まった?」
「……えっと……」
凛空は紫雨への追及をあきらめて、戸惑っている様子のいなほを見る。
アパートで凛空に、コーヒーと紅茶を用意してくれた時を思い出す。
(某アニメの探偵じゃないが、見た目は子どもだけど、味覚は大人……あまり甘くなさそうなやつをすすめてやるか)
ざっと並んだスイーツを見渡して、ひとつふたつ目星をつける。
「これとこれなら、あんまり甘すぎないと思うよ」
凛空の提案にいなほの雰囲気がパッと明るくなる。どうやらかなり悩んでいたようだ。
(もっと早く気づいてやればよかったな。オレと違って人生経験がなくて知識を持ってるだけって言ってたし)
聞くと見るとでは大違い。ましてや体験していないことは、想像もつかないだろう。
「こちらにします!」
凛空が心の中で反省している間に、いなほはコーヒーゼリーを選んだ。
葉暮たちも選んで、冬月にも声をかけて見たものの、やっぱり首を振って断られた。
飲み物もそれぞれに好きな物を選んで手元に揃った。紫雨がスイーツを掲げて音頭をとる。
「それじゃ、福の神デビューをした凛空といなほちゃんの誕生を祝って、いざ乾杯ならぬ完食!」
「なんだよ、それ」
凛空が苦笑すると、紫雨はにやりと笑った。
葉暮たちは変な音頭を気にすることなく喜んで、スイーツを掲げてグラスのように合わせていく。
凛空といなほにも同じことをしながら、おめでとうと祝ってくれた。
ひと通り終えると腰を落ち着けて、それぞれがスイーツの封を開けて食べはじめる。
紫雨は待ちに待ったスイーツだけに、目を閉じて至福の表情で味わっていた。
葉暮と黒羽は和風のスイーツを選んで、半分ずつお互いに交換して楽しんでいる。
いなほは思っていたより甘くて驚いたのか、耳と尻尾が立っていた。
「……苦手なら食べなくてもいいぞ。葉暮くんたちが用意してくれたせんべいなら甘くないから」
いなほは狐面を凛空に向けて、ふるふると首を振る。
「大丈夫です。これはこれで美味しゅうございますよ」
「そっか、ならいい」
凛空はいなほの頭をくしゃっと撫でる。
嘘ではないようで、ゼリーを食べながらいなほの尻尾が左右に機嫌が良さそうに揺れている。
安心して凛空も選んだザッハトルテをひと口食べて、目を細める。
(やっぱ、美味い! 甘味に癒されるのは神も人も同じだよな~)
長いこと味わえなかった甘さに、凛空は涙が出そうだった。
「なんで、甘い物食べると幸せを感じるんだろうなぁ……」
「そうねぇ……なぜかしら」
「甘い物で幸せを感じるのに、人なのか神なのかなんて関係ないんだな」
「あたしなんて、福の神になってからの方が、ずっと欲しがるようになったわ~」
しみじみ紫雨と語り合いながら至福の甘さを楽しんでいたものの、水分が欲しくなってきた。
紫雨が注いでくれたお酒を無視して、他の飲み物をもらうのも気が引けて、凛空はおちょこを掴む。
(酒とスイーツって組み合わせ、どうなんだ?)
酒も十年以上飲んでいないし、ましてやスイーツと酒を一緒に食べた覚えもないので、一瞬ためらう。
久しぶりのおちょこの形や軽さを感じながら、口をつけて一気に傾けた。
口の中に流れ込んだ酒はまろやかで、はじめは優しい飲み心地だと思った。
ところが飲み込む頃にはカッと熱く感じるようになり、喉の奥から体内へ滑り落ちていく感触がわかる。
痛烈な熱さにむせ返った。
「……くはっ、こ、これは、また……強い酒だね」
「えぇ? そう?」
涙を浮かべて苦しがる凛空を眺めつつ、平然と酒を飲む紫雨。
(……なんか、不公平だよな~。まぁ、神になれたのに、酒に弱いままで残念だ、なんて思わないけどな)
紫雨もそれ以上すすめるつもりはないようなので、凛空はコーヒーをもらって砂糖を入れ、口直しにゆっくり味わう。
人間もいろいろ個人差があるように、福の神になってもすべてが同じになるわけじゃないらしい。
「あぁ~♪ お・い・し・い! これ本当に美味しいわ~。もっと増産してくれればいいのに。スイーツを食べることも久しぶりだから、さらに沁みるわ~!」
すぐに食べ終えるのはもったいないと、ちょっとずつスイーツを味わっていた紫雨だけど、美味しいものには手が早く進むもの。あっという間に残りわずかになって、残念そうな表情をする。
「紫雨さんも福の神なんだ。スイーツ好きなら、普段から好きなだけ買えるんじゃない?」
「あたしはスイーツ好きだけど、この子たちはそうでもなくって。誘っても食べない時もあるから、ひとりで食べてもつまらないじゃない? だんだん食べなくなってきちゃってね。けど、つい最近ふらっとコンビニ入って、何気なくコレ買ったらすっごく美味しくて! また食べたくて仕方がなかったのよ~」
葉暮に買いに行かせていたスイーツも、ついに最後のひと口になる。微笑みながら最後を味わっている紫雨を見ると、凛空も譲ってよかったなとほっこりする。
(まー、ひとりで食べても味気ないって気持ち、わからなくもないしな)
買った時には想像もしていなかった人数で分ける展開になってしまったが、これはこれで良かった。
持ち込んだコンビニスイーツだけでなく、葉暮たちが用意してくれたせんべいたちも並んで、テーブルの上はさながらスイーツ食べ放題のお店みたいになっている。
葉暮と黒羽はひとつずつ食べた後は、小さなせんべいや昆布のお菓子、ナッツを摘みながら緑茶に切り替えていた。
「凛空、もうひとつもらってもいい?」
紫雨が少し首を傾けて、凛空にお願いしてくる。
まだ全員がもうひとつずつ食べても余るほど残っているから、凛空はむしろありがたいと思いながら頷く。
「もちろん、どうぞ。紫雨さん、よく食べるね」
「久しぶりだからテンション上がっちゃって♪ 凛空はひとつで満足?」
「……ん~、どうかなー。もう少しくつろいでから考えるわ」
空腹感をあまり感じなくなったせいか、満腹感も感じにくくなっているようで、まだ食べられそうな感じがする。
それなのに心が満たされていて、いますぐ次をと思えなかった。
凛空はまったりとコーヒーをすする。
「このコーヒーも美味しいな~。葉暮くんが淹れてくれたの?」
「いいえ、僕ではなく黒羽が淹れました。コーヒーが大好きで、こだわっているからでしょうか。僕より断然上手なんですよ」
「恐縮です」
少しだけ照れながら黒羽が頭を下げる。
「こう見えて、いなほもコーヒー好きだぞ。しかもブラック派。オレは甘さもないとダメなタイプだけどさ」
ゼリーを食べ終わったいなほは、凛空たちの会話を聞きながら、いそいそとコーヒーをもらって飲みはじめる。
ひと口飲んで、すぐにぱっと明るい空気を放ち、狐のお面もにこりと微笑んだようだ。
「とっても美味しいです! 凛空さまのお部屋にあったコーヒーよりも、断然美味しいです!」
尻尾をぱたぱた揺らして喜ぶいなほに、比べるところが間違っていると凛空は苦笑する。
「あれは安物のインスタントだったからな。比べちゃ失礼だ」
「そうなのですか? 黒羽さん、ごめんなさい」
いなほが耳を伏せて頭を下げると、黒羽がやけに慌てて両手を振る。
「いやいや、謝ることでは! 頭を上げてください、狐火さま!」
ふたりのやりとりを眺めながら、二個目のスイーツを堪能していた紫雨が小さく息を吐く。
「冬月もこれくらい素直で可愛い性格だったらな~」
「……善処します」
じっと隅で控えている冬月が、ぼそっと答えると紫雨がさらに複雑そうな顔になる。
「……はぁ……善処がいつも、前途多難なのよね」
これは話題を変えた方が良さそうだ。凛空は少し強引に話しかける。
「狐火ってのは、礼儀正しいものなんだな。オレが目覚めた時も、こんな小さいのに土下座とかしちゃってさ。結構困ったんだよね」
凛空がいなほを見ながら打ち明けると、紫雨は少し首を傾げて遠くを見る。
「あたしの時はどうだったかな……ま、今と大差ないんだけど。でも、たぶん冬月は別格だと思うわ」
「あー……女性に対して聞いちゃいけない質問かもしれないけど、紫雨さんは福の神になったのは何年くらい前なんだ?」
スプーンを指先で持て余しながら、紫雨は酒を一口飲んで、あっさりと答える。
「たぶん、400年くらい経ったんじゃないかな? 江戸幕府が出来た頃だったはずよ」
「……江戸幕府……です、か……」
「だから、敬語なんてやめてってば! 長く生きてるだけなんだから。途中で眠っていたこともあるのよ?」
「……100年ほど、お休みになられました」
ぼそっと冬月が補足する年月の単位に凛空は絶句する。
(食べなくても死なないなら、眠ってても害はないってことか……にしても100年って。体ガチガチになりそう。つか、思っていたよりもずっと先輩だった……)
見た目が当てにならないのはいなほでもわかっていたのに、紫雨が若い女性の姿だから影響されてしまい、同じ年くらいだと思っていた。
(福の神が年を取らないって本当なのか……ちょっと気安く接しすぎたかも)
困った凛空は話題を変えることにした。
「神仕えは狐火の他にもいるんだな」
狛犬から変化した黒羽が片割れと言うのだから、葉暮も狛犬なんだろう。
葉暮と黒羽のところへ移動したいなほを間に挟んで、三人は熱心に何かを語り合っている。
そこへ冬月も静かに近づいて、ぽつぽつと会話に加わる様子を見ながら凛空が問いかける。
同じように自分の神仕えたちを眺めながら、紫雨が髪をかきあげて答えた。
「そうよ。志願してきた子を、いいよって神が受け入れて、名前を付けてあげたら神仕えになれるわ。神から誘うこともあるの」
「名前を付けるだけでいいのか?」
簡単になれるんだな、と呑気につぶやく凛空に紫雨が意味深に微笑む。
「あんただって、人間だった頃に人間と呼ばれるよりも、凛空と呼ばれた時の方が、あぁ自分が呼ばれているんだって気持ちになれたでしょう? 名前って結構、重要なのよ。狐火にいなほって呼び名を付けたみたいだけど、正式な名前を付ける時は慎重にね。後から変えられないものだから」
「それ、オレは紫雨さんに伝えてないのに、なんでいなほの名前を知っていたんだ?」
葉暮に紹介してから紫雨に会うまで、葉暮と紫雨が会話をするチャンスがあったのだろうか。
すると紫雨は何を今さら、と片手をひらひら振った。
「神仕えが見聞きしたことは、その気になれば主たる神にも見て聞けるのよ。まだあんたには出来ないと思うけど」
「へぇ……すげぇ、なんか、ファンタジーみたいだ。それより、超能力の方が近いのかな?」
「そのうち感覚がわかって使えるようになるわ。ただ、ひとつ忠告」
紫雨がいたずらっぽく微笑みながら、指を一本立てる。
「他の神に仕えている狐火だけは、神仕えにできない。福の神と縁を切った狐火は勧誘してもいいんだけどね」
色気のある紫雨が妖艶に微笑むと、人間の頃より欲求を感じにくくなったと言われていても、凛空の心は穏やかではいられなくなるので勘弁して欲しい。
「だから今、あたしがどれだけ欲しくてもいなほちゃんを神仕えにできない。でも凛空がいなほちゃんを要らないと言えば、いつでもあたしが引き取るわ」
「い、いまでもたくさん神仕えがいるじゃないか。まだ増やすわけ?」
得体の知れない福の神とやらになったばかりで、詳しく教えてくれる狐火を失うのは困る。
紫雨の魅力だけでなく、内心の動揺から凛空はしどろもどろになる。
わかっていて、紫雨はちらっと舌先を覗かせて赤い唇を舐める。
「言ったでしょ? あたしの望みは、神仕えたちを可愛がること。さらに彼らがお互いに主の寵愛をめぐって争って欲しいんだけど、今のあの子たちだけじゃ望みが薄い。だから他の子を加えたいって、ずっと思っているところなの」
いい子がいるなら、いつでも迎え入れるわ、と紫雨が笑う。
「神社に暮らしているのも、神仕えを増やすのが目的なんだもの」
「? ただの福の神と、神社に住む福の神は何かが違うのか?」
「格が上がるのよ。簡単に言えば、器が大きくなるから、たくさん力が使える。神社に暮らす以外にも格上げ方法はあるけど、一番安定して効率的な方法なの」
人間でなくなっても、差はどこにでもあるらしい。
「神仕えは主の力を少しずつ食べているの。そうして力を強めて主を守るから、神仕えを増やすには福の神も養えるだけの力が必要になってくるわけ」
紫雨は本腰を入れて、福の神について説明してくれる気になったようだ。
「神の力は、神の気と書いて神気とも呼ばれているわ。姿を変えたり、お金を引き出す時にも使う。神気は器が大きいほど多くなる。神気が多いほど周囲に幸福を呼び寄せる影響力も強くなるし、狐火や神仕えたちも強くなりやすいわ」
(なるほど、RPGゲームのMPとかそういう感じかな。格とやらはレベルみたいな感じで)
魔法を使うために必要な資源で、使うほどに減って自然回復する力みたいなものだろう、と凛空は勝手に解釈する。
「狐火か……いなほが冬月くんと違って小さい理由も、オレが生まれたばっかだからなのか?」
「それもひとつの理由かな? 狐火の外見はみんな違うわ。主になる福の神との相性が良さそうな姿で生まれると言われているけど、大神に聞いても適当だとしか答えてくれなかったから、本当のところはわからないの」
あの強烈なキャラクターの大神を紫雨も知っているらしい。肩を竦めて苦笑する。
「ちなみに狐火のお面は、主との相性が壊滅的に悪かった時に、狐火が縁を切ることができるように大神が渡すものなんだって。狐火がお面を外す時は、主として心から認めた時だってことよ」
まだいなほは狐面を付けたままだ。だから誘ったの、と紫雨は怪しく微笑む。
「狐火がいなくなった福の神は苦労するわよ~」
「ほ、他の狐火を迎えることはできるんだよな?」
凛空の顔を覗きこんで、ニヤニヤ笑う紫雨に顔を引きつらせながら確認する。
「福の神を見捨てる狐火はほとんどいないから、狐火を失ったとしても代わりを見つけるのは至難の業ね。逆を言えば、凛空がいなほちゃんに見捨てられる可能性はゼロじゃないけど、よっぽどのことをしなければ見捨てられないでしょうから安心しなさい」
「うっ……しょ、精進します……」
葉暮たちと楽しそうに談笑している狐面をつけた子どもを見ながら、自信なさそうに凛空が頷く。
肩を落とす凛空を紫雨がばんばん叩く。
「なぁ~に景気の悪い答え方をしてんのよ! あんたは福の神になった。福の神になれるような人間ってのは、狐火に嫌われるような性根はしていないんだから、胸を張りなさいっ!」
「……ぅう~、自信ないッス……」
「あんたね……まったく。神気って人間で言うところのやる気なのよ。気力がなければはじまらないのは、人も神も同じ。自信があろうとなかろうと、やってみようって思うだけでいいから」
「……は、はい。お姉さま……」
「だれがお姉さまだ! まぁいいけど」
ヨロヨロしながら胸を押さえた凛空がお姉さまと言うと、紫雨はまんざらでもない表情をする。
凛空がいなほにするように、栗色の髪をかき混ぜて紫雨がニカッと笑う。
「希少な福の神になった者同士、しかもかなりご近所さんみたいだし? いつでも相談に乗るわ。福の神が楽しく生きることが、狐火の喜びなんだって。いなほちゃんに見捨てられたくないなら、精一杯楽しく生きることを心がけなさい。はじめは戸惑うでしょうけど」
経験があるからわかるのか、紫雨はしみじみと励ましてくれた。
「……やっぱり、福の神は少ないんだな」
はじめて狐火と出会った朝、とっても貴重な存在なんだと力説されたことを思い出す。
毎朝通っていた道沿いに、その珍しい福の神が住んでいたなんて思いもしなかったが、ちょうどいい機会だ。
ずっと気になっていたことを聞いてみる。
「福の神って、毎日何してんの? 会社行くでもないし、学校行くわけでもないんだろ?」
「何って、好きなことしろって言われなかった?」
「言われたけど、すぐ思いつかなくてさ」
凛空がもごもご答えると、紫雨は呆れたと言いたそうにため息をついた。
「もう、初々しい反応しちゃって~。いいなぁ、なりたて、ホヤホヤだもんね……あたしが知っている福の神で、この近くにいる奴は2人。ひとりはほぼ毎日電車に乗ってる。とにかく電車が好きらしい。もうひとりは店を開いているわ。他にも何人か会ったことがあるけど、長いこと会ってないわねぇ。もう満足して消えているかも……だいたい自分たちの神の領域で暮らしているから、滅多に合わないしね」
人間だった頃なら家から出れば、すぐに他の人間に出会える。
福の神になったら、同じ種族に出会うのも簡単ではないようだ。
「満足した福の神は消えるんだな」
「消えると言うより、幸福と同一化すると言った方が正しいのでしょうけど。ほら、よく運気の流れとか言うでしょ? あれに溶けていくらしいわ」
知れば知るほど謎めいていく福の神について、さらに紫雨が教えてくれるのを聞いているうちに、葉暮がすっと腰を上げた。
「紫雨様、そろそろ夕食の支度をいたします」
「凛空様たちは好きなもの、苦手なものなど、ございますか?」
葉暮に続いて黒羽も立ち上がりながら聞いてくる。
もうそんな時間なのか、と天井近くの壁掛け時計を見上げる凛空も腰を浮かせる。
「悪い、すっげぇ長居しちまった。オレたちはそろそろ帰るわ」
「あ、わたしがやりますよ~」
食べたスイーツの残骸を空いた袋に入れていると、いなほが近づいてきて手伝ってくれる。
それを葉暮が手で押しとどめる。
「どうぞ、このままで。僕たちが片づけますから、お気遣いなく。それに凛空様たちも、ぜひ一緒に夕食を食べていってください」
「そうよー、まだまだ語り足りないんだけどー。もっと付き合って~」
紫雨は凛空に抱きついて、頭を撫でながら誘ってくる。
「あーもー、離してくださいよ、紫雨さん。見た目はお年頃のオトコノコを誘惑しないの」
「大丈夫、あたしとならあんたもできるわよ」
「できるって、な、何をデスカ?」
「夜にふたりですることなんて、決まっているでしょ?」
すりすりと頬を凛空の首筋に擦りつけ、紫雨はふぅっと息を吹きかけてくる。
着物の裾から白いおみ足を凛空に絡みつけ、きれいなお姉さまは艶やかに微笑む。
「朝まで酒盛りしましょ!」
「しないってばっ!」
そっちかい、と言いかけて凛空は思いとどまる。
紫雨はわかっていたみたいで、ケラケラと腹を抱えて笑っている。
「もちろん、大人の営みをしてもいいわよ? あんたならあたしもできるから」
「? オレならできるって、できないのは誰?」
「人間はダメ。福の神を人と同じ方法で増やすことは、神が望んでいないみたい。あくまでも人間が昇格して福の神にならないといけない。だから福の神になったら人間とは愛し合えないの。人間の方が耐えられないし……同じ福の神同士か、神仕えが相手ならできるわ」
それが目的で神仕えを増やしている福の神もいるらしい。
「いわゆる、ハーレムってやつか」
「凛空もやっぱり憧れるの?」
オトコノコだもんね、と笑われて凛空は眉を下げる。
コミュ障をこじらせた三十路のオジサンだった時から、凛空はあまりそう言う欲求がない。
「紫雨さんはある意味、逆ハーレム目指してるんだよな」
「まぁ、そうなるかしら?」
「……やっぱり帰るわ。元着ていた服、どこにある?」
ちょっと身の危険を感じて、紫雨にそう言うと少しだけ残念そうな顔をした。
無言のまま冬月がさっと凛空の服を渡してくれる。
受け取った服はさっぱりきれいになっていて、まったく濡れていない。
「……いつの間に洗って乾かしたんだ……」
「やぁね、神気を使ったに決まってるでしょ? タオルで髪を拭いた時、すぐに乾いたんだから、服もあっという間に乾くわ」
そう言えば葉暮が両手をかざした時、光ってちょっと温かくなった。
「……紫雨さん」
「なに?」
「わざわざ制服に着替えさせなくても、あっという間に乾かせたってことだよね……?」
「あはは、気づいちゃった?」
「紫雨さんっ!!」
あっけらかんと笑ってごまかそうとする紫雨に、凛空は頭を抱えたい気分になった。
「さぁ、凛空も遠慮しないで座ってちょうだい。それに同じ神だし、敬語は使わずに普通に話してね」
紫雨はいなほの隣に凛空が座るように指示してくる。
テーブルの下は掘りごたつになっていて、ふかふかの座布団の座り心地は絶品だった。
(すげぇ、気持ちいいな~)
座布団の気持ち良さを堪能している間に、葉暮と黒羽も凛空たちと向かい合うように座った。
銀髪の狐火は冬月と名乗ってくれたものの、なぜか律儀に部屋の隅に正座して絶対にこちらへ来ようとしなかった。
「気にしないで。あたしの狐火はかなり石頭なの」
細い肩を竦めて紫雨が苦笑する。
彼らを見回して、凛空がテーブルの上を手で示しながら提案する。
「せっかくだ、スイーツをみんなも食べないか? もちろん嫌いなら強制しない。好きなのがあるなら遠慮なく食べてくれ」
生まれて初めてコンビニのカゴに入りきらないほど買い込んだスイーツたち。
この場に集まった全員で一つずつ食べても余ってしまう。
「わぁ、うれしい! そうだわ、凛空と狐火ちゃんの福の神デビューをお祝いする会にしようか」
「いいですね、賛成です!」
両手を合わせて頬に当て、笑顔で真っ先に賛同する紫雨に続き、葉暮も片手を上げる。
黒羽も異論はないらしく、飲み物は何にするかを聞いてくる。
「凛空もお酒にしときなさいよー。うちの酒は冬月特製でとっても美味いわよ。ここでしか飲めないんだから」
葉暮に頼んでいた目当てのスイーツを選んだ紫雨が口を挟む。
凛空はカリカリ、と頬をかきながら自白する。
「悪いけど……オレ、酒がまったく飲めないから」
「ええっ! まったく? 嘘でしょ~!」
大げさなくらいに紫雨が驚く。福の神になる前にもさんざん驚かれたが、酒が飲めないことがそんなに珍しいのだろうか。凛空は毎回複雑な心境になる。
「まったくって言うか、ひと口くらいなら飲めるけど、それ以上はムリ。寝るか吐いちまう」
「ふぅ~ん。でも福の神になったら体質変わった、なんて話も聞くし試してみたら?」
本当にダメそうならひと口でやめときなよ、と言いながら紫雨の前に用意されていた熱燗を凛空の前に置いたおちょこに注ぐ。
ふわっと甘く爽やかな香りがした。
「みんな、遠慮しないで選んでくれよ?」
凛空たちの会話に気を取られていたのか、葉暮たちが自分たちの飲み物を用意したまま、スイーツを選んでいなかったから声をかける。
「ありがとうございます。けれど凛空様たちがお買い上げになった品です。先に選んでください。僕たちはその後でいただきます」
どこまでも真面目な葉暮のセリフに黒羽も頷いていて、これは何を言っても聞かないなと悟った凛空が、先に選んで引き寄せる。
「いなほはどれにする?」
紫雨の横でちょこんと座っているいなほに声をかけた時、黒羽が狛犬姿から変わった時のような白煙が一瞬でいなほを包んだ。
すっと白煙が消えると、狐面をつけた獣耳と尻尾がある狐火姿に戻っていた。
「あら~、いなほちゃんは時間切れねー」
「時間切れ?」
少しの間見なかっただけなのに、妙に懐かしい狐火スタイルのいなほの頭を紫雨が撫でながら説明する。
「狐火は生まれた時からいろいろ出来るけれど、力はまだ弱いから限界は近いのよ。福の神と時間を共有するほどに力を強めて、さらに幅広く、長く使えるようになっていくけどね」
紫雨が自分のおちょこを指差して、これがあなたたちと例えながら酒を少し注いで、くいっと飲み干す。
空になったおちょこの中を凛空に見せて、あっさり空になるでしょと言って片目を閉じる。
「これはいなほちゃんだけじゃなくて、凛空も同じ。ふたりとも生まれたてだから、できることも限られているし、持続力も低いわけ。いなほちゃんはここで燃料切れ。凛空も油断しないこと。ここに来るまでに神の力を使っているなら、これ以上は使えないと思った方がいい。実際に見た目が変わってるんじゃない?」
「……あ」
紫雨に指摘されてはじめて気づいた。
コンビニに行く前に人間の姿になった凛空は、神になる前のくたびれた姿だったはずだ。
蒼さんに水をかけられ、着替えを借りて姿見で確認した時、凛空は若返った姿で良かったと思ったのだ。
(い、いつの間に戻ってたんだ? 全然気づかなかった!)
凛空の顔色を観察していた紫雨がふっと不敵に笑う。
「ま、自分以外の神の領域に入る時は、本来の姿に戻る方が好まれる。無駄に力を消耗しなくても良いからね。特に生まれたてのあんたは、その姿でいなさい」
「……制服が似合う年頃の姿だから、じゃないですよね?」
「あ、当たり前でしょう? あんたはあたしを何だと思っているの?」
真面目なこと言ってるが、紫雨はスイッと凛空から目を逸らした。
(変態じゃないかと思ってますよ……まったく信憑性がないデス!)
ジト目で睨む凛空と視線を合わせないようにして、紫雨はいなほに話しかける。
「いなほちゃんは、どれにするか決まった?」
「……えっと……」
凛空は紫雨への追及をあきらめて、戸惑っている様子のいなほを見る。
アパートで凛空に、コーヒーと紅茶を用意してくれた時を思い出す。
(某アニメの探偵じゃないが、見た目は子どもだけど、味覚は大人……あまり甘くなさそうなやつをすすめてやるか)
ざっと並んだスイーツを見渡して、ひとつふたつ目星をつける。
「これとこれなら、あんまり甘すぎないと思うよ」
凛空の提案にいなほの雰囲気がパッと明るくなる。どうやらかなり悩んでいたようだ。
(もっと早く気づいてやればよかったな。オレと違って人生経験がなくて知識を持ってるだけって言ってたし)
聞くと見るとでは大違い。ましてや体験していないことは、想像もつかないだろう。
「こちらにします!」
凛空が心の中で反省している間に、いなほはコーヒーゼリーを選んだ。
葉暮たちも選んで、冬月にも声をかけて見たものの、やっぱり首を振って断られた。
飲み物もそれぞれに好きな物を選んで手元に揃った。紫雨がスイーツを掲げて音頭をとる。
「それじゃ、福の神デビューをした凛空といなほちゃんの誕生を祝って、いざ乾杯ならぬ完食!」
「なんだよ、それ」
凛空が苦笑すると、紫雨はにやりと笑った。
葉暮たちは変な音頭を気にすることなく喜んで、スイーツを掲げてグラスのように合わせていく。
凛空といなほにも同じことをしながら、おめでとうと祝ってくれた。
ひと通り終えると腰を落ち着けて、それぞれがスイーツの封を開けて食べはじめる。
紫雨は待ちに待ったスイーツだけに、目を閉じて至福の表情で味わっていた。
葉暮と黒羽は和風のスイーツを選んで、半分ずつお互いに交換して楽しんでいる。
いなほは思っていたより甘くて驚いたのか、耳と尻尾が立っていた。
「……苦手なら食べなくてもいいぞ。葉暮くんたちが用意してくれたせんべいなら甘くないから」
いなほは狐面を凛空に向けて、ふるふると首を振る。
「大丈夫です。これはこれで美味しゅうございますよ」
「そっか、ならいい」
凛空はいなほの頭をくしゃっと撫でる。
嘘ではないようで、ゼリーを食べながらいなほの尻尾が左右に機嫌が良さそうに揺れている。
安心して凛空も選んだザッハトルテをひと口食べて、目を細める。
(やっぱ、美味い! 甘味に癒されるのは神も人も同じだよな~)
長いこと味わえなかった甘さに、凛空は涙が出そうだった。
「なんで、甘い物食べると幸せを感じるんだろうなぁ……」
「そうねぇ……なぜかしら」
「甘い物で幸せを感じるのに、人なのか神なのかなんて関係ないんだな」
「あたしなんて、福の神になってからの方が、ずっと欲しがるようになったわ~」
しみじみ紫雨と語り合いながら至福の甘さを楽しんでいたものの、水分が欲しくなってきた。
紫雨が注いでくれたお酒を無視して、他の飲み物をもらうのも気が引けて、凛空はおちょこを掴む。
(酒とスイーツって組み合わせ、どうなんだ?)
酒も十年以上飲んでいないし、ましてやスイーツと酒を一緒に食べた覚えもないので、一瞬ためらう。
久しぶりのおちょこの形や軽さを感じながら、口をつけて一気に傾けた。
口の中に流れ込んだ酒はまろやかで、はじめは優しい飲み心地だと思った。
ところが飲み込む頃にはカッと熱く感じるようになり、喉の奥から体内へ滑り落ちていく感触がわかる。
痛烈な熱さにむせ返った。
「……くはっ、こ、これは、また……強い酒だね」
「えぇ? そう?」
涙を浮かべて苦しがる凛空を眺めつつ、平然と酒を飲む紫雨。
(……なんか、不公平だよな~。まぁ、神になれたのに、酒に弱いままで残念だ、なんて思わないけどな)
紫雨もそれ以上すすめるつもりはないようなので、凛空はコーヒーをもらって砂糖を入れ、口直しにゆっくり味わう。
人間もいろいろ個人差があるように、福の神になってもすべてが同じになるわけじゃないらしい。
「あぁ~♪ お・い・し・い! これ本当に美味しいわ~。もっと増産してくれればいいのに。スイーツを食べることも久しぶりだから、さらに沁みるわ~!」
すぐに食べ終えるのはもったいないと、ちょっとずつスイーツを味わっていた紫雨だけど、美味しいものには手が早く進むもの。あっという間に残りわずかになって、残念そうな表情をする。
「紫雨さんも福の神なんだ。スイーツ好きなら、普段から好きなだけ買えるんじゃない?」
「あたしはスイーツ好きだけど、この子たちはそうでもなくって。誘っても食べない時もあるから、ひとりで食べてもつまらないじゃない? だんだん食べなくなってきちゃってね。けど、つい最近ふらっとコンビニ入って、何気なくコレ買ったらすっごく美味しくて! また食べたくて仕方がなかったのよ~」
葉暮に買いに行かせていたスイーツも、ついに最後のひと口になる。微笑みながら最後を味わっている紫雨を見ると、凛空も譲ってよかったなとほっこりする。
(まー、ひとりで食べても味気ないって気持ち、わからなくもないしな)
買った時には想像もしていなかった人数で分ける展開になってしまったが、これはこれで良かった。
持ち込んだコンビニスイーツだけでなく、葉暮たちが用意してくれたせんべいたちも並んで、テーブルの上はさながらスイーツ食べ放題のお店みたいになっている。
葉暮と黒羽はひとつずつ食べた後は、小さなせんべいや昆布のお菓子、ナッツを摘みながら緑茶に切り替えていた。
「凛空、もうひとつもらってもいい?」
紫雨が少し首を傾けて、凛空にお願いしてくる。
まだ全員がもうひとつずつ食べても余るほど残っているから、凛空はむしろありがたいと思いながら頷く。
「もちろん、どうぞ。紫雨さん、よく食べるね」
「久しぶりだからテンション上がっちゃって♪ 凛空はひとつで満足?」
「……ん~、どうかなー。もう少しくつろいでから考えるわ」
空腹感をあまり感じなくなったせいか、満腹感も感じにくくなっているようで、まだ食べられそうな感じがする。
それなのに心が満たされていて、いますぐ次をと思えなかった。
凛空はまったりとコーヒーをすする。
「このコーヒーも美味しいな~。葉暮くんが淹れてくれたの?」
「いいえ、僕ではなく黒羽が淹れました。コーヒーが大好きで、こだわっているからでしょうか。僕より断然上手なんですよ」
「恐縮です」
少しだけ照れながら黒羽が頭を下げる。
「こう見えて、いなほもコーヒー好きだぞ。しかもブラック派。オレは甘さもないとダメなタイプだけどさ」
ゼリーを食べ終わったいなほは、凛空たちの会話を聞きながら、いそいそとコーヒーをもらって飲みはじめる。
ひと口飲んで、すぐにぱっと明るい空気を放ち、狐のお面もにこりと微笑んだようだ。
「とっても美味しいです! 凛空さまのお部屋にあったコーヒーよりも、断然美味しいです!」
尻尾をぱたぱた揺らして喜ぶいなほに、比べるところが間違っていると凛空は苦笑する。
「あれは安物のインスタントだったからな。比べちゃ失礼だ」
「そうなのですか? 黒羽さん、ごめんなさい」
いなほが耳を伏せて頭を下げると、黒羽がやけに慌てて両手を振る。
「いやいや、謝ることでは! 頭を上げてください、狐火さま!」
ふたりのやりとりを眺めながら、二個目のスイーツを堪能していた紫雨が小さく息を吐く。
「冬月もこれくらい素直で可愛い性格だったらな~」
「……善処します」
じっと隅で控えている冬月が、ぼそっと答えると紫雨がさらに複雑そうな顔になる。
「……はぁ……善処がいつも、前途多難なのよね」
これは話題を変えた方が良さそうだ。凛空は少し強引に話しかける。
「狐火ってのは、礼儀正しいものなんだな。オレが目覚めた時も、こんな小さいのに土下座とかしちゃってさ。結構困ったんだよね」
凛空がいなほを見ながら打ち明けると、紫雨は少し首を傾げて遠くを見る。
「あたしの時はどうだったかな……ま、今と大差ないんだけど。でも、たぶん冬月は別格だと思うわ」
「あー……女性に対して聞いちゃいけない質問かもしれないけど、紫雨さんは福の神になったのは何年くらい前なんだ?」
スプーンを指先で持て余しながら、紫雨は酒を一口飲んで、あっさりと答える。
「たぶん、400年くらい経ったんじゃないかな? 江戸幕府が出来た頃だったはずよ」
「……江戸幕府……です、か……」
「だから、敬語なんてやめてってば! 長く生きてるだけなんだから。途中で眠っていたこともあるのよ?」
「……100年ほど、お休みになられました」
ぼそっと冬月が補足する年月の単位に凛空は絶句する。
(食べなくても死なないなら、眠ってても害はないってことか……にしても100年って。体ガチガチになりそう。つか、思っていたよりもずっと先輩だった……)
見た目が当てにならないのはいなほでもわかっていたのに、紫雨が若い女性の姿だから影響されてしまい、同じ年くらいだと思っていた。
(福の神が年を取らないって本当なのか……ちょっと気安く接しすぎたかも)
困った凛空は話題を変えることにした。
「神仕えは狐火の他にもいるんだな」
狛犬から変化した黒羽が片割れと言うのだから、葉暮も狛犬なんだろう。
葉暮と黒羽のところへ移動したいなほを間に挟んで、三人は熱心に何かを語り合っている。
そこへ冬月も静かに近づいて、ぽつぽつと会話に加わる様子を見ながら凛空が問いかける。
同じように自分の神仕えたちを眺めながら、紫雨が髪をかきあげて答えた。
「そうよ。志願してきた子を、いいよって神が受け入れて、名前を付けてあげたら神仕えになれるわ。神から誘うこともあるの」
「名前を付けるだけでいいのか?」
簡単になれるんだな、と呑気につぶやく凛空に紫雨が意味深に微笑む。
「あんただって、人間だった頃に人間と呼ばれるよりも、凛空と呼ばれた時の方が、あぁ自分が呼ばれているんだって気持ちになれたでしょう? 名前って結構、重要なのよ。狐火にいなほって呼び名を付けたみたいだけど、正式な名前を付ける時は慎重にね。後から変えられないものだから」
「それ、オレは紫雨さんに伝えてないのに、なんでいなほの名前を知っていたんだ?」
葉暮に紹介してから紫雨に会うまで、葉暮と紫雨が会話をするチャンスがあったのだろうか。
すると紫雨は何を今さら、と片手をひらひら振った。
「神仕えが見聞きしたことは、その気になれば主たる神にも見て聞けるのよ。まだあんたには出来ないと思うけど」
「へぇ……すげぇ、なんか、ファンタジーみたいだ。それより、超能力の方が近いのかな?」
「そのうち感覚がわかって使えるようになるわ。ただ、ひとつ忠告」
紫雨がいたずらっぽく微笑みながら、指を一本立てる。
「他の神に仕えている狐火だけは、神仕えにできない。福の神と縁を切った狐火は勧誘してもいいんだけどね」
色気のある紫雨が妖艶に微笑むと、人間の頃より欲求を感じにくくなったと言われていても、凛空の心は穏やかではいられなくなるので勘弁して欲しい。
「だから今、あたしがどれだけ欲しくてもいなほちゃんを神仕えにできない。でも凛空がいなほちゃんを要らないと言えば、いつでもあたしが引き取るわ」
「い、いまでもたくさん神仕えがいるじゃないか。まだ増やすわけ?」
得体の知れない福の神とやらになったばかりで、詳しく教えてくれる狐火を失うのは困る。
紫雨の魅力だけでなく、内心の動揺から凛空はしどろもどろになる。
わかっていて、紫雨はちらっと舌先を覗かせて赤い唇を舐める。
「言ったでしょ? あたしの望みは、神仕えたちを可愛がること。さらに彼らがお互いに主の寵愛をめぐって争って欲しいんだけど、今のあの子たちだけじゃ望みが薄い。だから他の子を加えたいって、ずっと思っているところなの」
いい子がいるなら、いつでも迎え入れるわ、と紫雨が笑う。
「神社に暮らしているのも、神仕えを増やすのが目的なんだもの」
「? ただの福の神と、神社に住む福の神は何かが違うのか?」
「格が上がるのよ。簡単に言えば、器が大きくなるから、たくさん力が使える。神社に暮らす以外にも格上げ方法はあるけど、一番安定して効率的な方法なの」
人間でなくなっても、差はどこにでもあるらしい。
「神仕えは主の力を少しずつ食べているの。そうして力を強めて主を守るから、神仕えを増やすには福の神も養えるだけの力が必要になってくるわけ」
紫雨は本腰を入れて、福の神について説明してくれる気になったようだ。
「神の力は、神の気と書いて神気とも呼ばれているわ。姿を変えたり、お金を引き出す時にも使う。神気は器が大きいほど多くなる。神気が多いほど周囲に幸福を呼び寄せる影響力も強くなるし、狐火や神仕えたちも強くなりやすいわ」
(なるほど、RPGゲームのMPとかそういう感じかな。格とやらはレベルみたいな感じで)
魔法を使うために必要な資源で、使うほどに減って自然回復する力みたいなものだろう、と凛空は勝手に解釈する。
「狐火か……いなほが冬月くんと違って小さい理由も、オレが生まれたばっかだからなのか?」
「それもひとつの理由かな? 狐火の外見はみんな違うわ。主になる福の神との相性が良さそうな姿で生まれると言われているけど、大神に聞いても適当だとしか答えてくれなかったから、本当のところはわからないの」
あの強烈なキャラクターの大神を紫雨も知っているらしい。肩を竦めて苦笑する。
「ちなみに狐火のお面は、主との相性が壊滅的に悪かった時に、狐火が縁を切ることができるように大神が渡すものなんだって。狐火がお面を外す時は、主として心から認めた時だってことよ」
まだいなほは狐面を付けたままだ。だから誘ったの、と紫雨は怪しく微笑む。
「狐火がいなくなった福の神は苦労するわよ~」
「ほ、他の狐火を迎えることはできるんだよな?」
凛空の顔を覗きこんで、ニヤニヤ笑う紫雨に顔を引きつらせながら確認する。
「福の神を見捨てる狐火はほとんどいないから、狐火を失ったとしても代わりを見つけるのは至難の業ね。逆を言えば、凛空がいなほちゃんに見捨てられる可能性はゼロじゃないけど、よっぽどのことをしなければ見捨てられないでしょうから安心しなさい」
「うっ……しょ、精進します……」
葉暮たちと楽しそうに談笑している狐面をつけた子どもを見ながら、自信なさそうに凛空が頷く。
肩を落とす凛空を紫雨がばんばん叩く。
「なぁ~に景気の悪い答え方をしてんのよ! あんたは福の神になった。福の神になれるような人間ってのは、狐火に嫌われるような性根はしていないんだから、胸を張りなさいっ!」
「……ぅう~、自信ないッス……」
「あんたね……まったく。神気って人間で言うところのやる気なのよ。気力がなければはじまらないのは、人も神も同じ。自信があろうとなかろうと、やってみようって思うだけでいいから」
「……は、はい。お姉さま……」
「だれがお姉さまだ! まぁいいけど」
ヨロヨロしながら胸を押さえた凛空がお姉さまと言うと、紫雨はまんざらでもない表情をする。
凛空がいなほにするように、栗色の髪をかき混ぜて紫雨がニカッと笑う。
「希少な福の神になった者同士、しかもかなりご近所さんみたいだし? いつでも相談に乗るわ。福の神が楽しく生きることが、狐火の喜びなんだって。いなほちゃんに見捨てられたくないなら、精一杯楽しく生きることを心がけなさい。はじめは戸惑うでしょうけど」
経験があるからわかるのか、紫雨はしみじみと励ましてくれた。
「……やっぱり、福の神は少ないんだな」
はじめて狐火と出会った朝、とっても貴重な存在なんだと力説されたことを思い出す。
毎朝通っていた道沿いに、その珍しい福の神が住んでいたなんて思いもしなかったが、ちょうどいい機会だ。
ずっと気になっていたことを聞いてみる。
「福の神って、毎日何してんの? 会社行くでもないし、学校行くわけでもないんだろ?」
「何って、好きなことしろって言われなかった?」
「言われたけど、すぐ思いつかなくてさ」
凛空がもごもご答えると、紫雨は呆れたと言いたそうにため息をついた。
「もう、初々しい反応しちゃって~。いいなぁ、なりたて、ホヤホヤだもんね……あたしが知っている福の神で、この近くにいる奴は2人。ひとりはほぼ毎日電車に乗ってる。とにかく電車が好きらしい。もうひとりは店を開いているわ。他にも何人か会ったことがあるけど、長いこと会ってないわねぇ。もう満足して消えているかも……だいたい自分たちの神の領域で暮らしているから、滅多に合わないしね」
人間だった頃なら家から出れば、すぐに他の人間に出会える。
福の神になったら、同じ種族に出会うのも簡単ではないようだ。
「満足した福の神は消えるんだな」
「消えると言うより、幸福と同一化すると言った方が正しいのでしょうけど。ほら、よく運気の流れとか言うでしょ? あれに溶けていくらしいわ」
知れば知るほど謎めいていく福の神について、さらに紫雨が教えてくれるのを聞いているうちに、葉暮がすっと腰を上げた。
「紫雨様、そろそろ夕食の支度をいたします」
「凛空様たちは好きなもの、苦手なものなど、ございますか?」
葉暮に続いて黒羽も立ち上がりながら聞いてくる。
もうそんな時間なのか、と天井近くの壁掛け時計を見上げる凛空も腰を浮かせる。
「悪い、すっげぇ長居しちまった。オレたちはそろそろ帰るわ」
「あ、わたしがやりますよ~」
食べたスイーツの残骸を空いた袋に入れていると、いなほが近づいてきて手伝ってくれる。
それを葉暮が手で押しとどめる。
「どうぞ、このままで。僕たちが片づけますから、お気遣いなく。それに凛空様たちも、ぜひ一緒に夕食を食べていってください」
「そうよー、まだまだ語り足りないんだけどー。もっと付き合って~」
紫雨は凛空に抱きついて、頭を撫でながら誘ってくる。
「あーもー、離してくださいよ、紫雨さん。見た目はお年頃のオトコノコを誘惑しないの」
「大丈夫、あたしとならあんたもできるわよ」
「できるって、な、何をデスカ?」
「夜にふたりですることなんて、決まっているでしょ?」
すりすりと頬を凛空の首筋に擦りつけ、紫雨はふぅっと息を吹きかけてくる。
着物の裾から白いおみ足を凛空に絡みつけ、きれいなお姉さまは艶やかに微笑む。
「朝まで酒盛りしましょ!」
「しないってばっ!」
そっちかい、と言いかけて凛空は思いとどまる。
紫雨はわかっていたみたいで、ケラケラと腹を抱えて笑っている。
「もちろん、大人の営みをしてもいいわよ? あんたならあたしもできるから」
「? オレならできるって、できないのは誰?」
「人間はダメ。福の神を人と同じ方法で増やすことは、神が望んでいないみたい。あくまでも人間が昇格して福の神にならないといけない。だから福の神になったら人間とは愛し合えないの。人間の方が耐えられないし……同じ福の神同士か、神仕えが相手ならできるわ」
それが目的で神仕えを増やしている福の神もいるらしい。
「いわゆる、ハーレムってやつか」
「凛空もやっぱり憧れるの?」
オトコノコだもんね、と笑われて凛空は眉を下げる。
コミュ障をこじらせた三十路のオジサンだった時から、凛空はあまりそう言う欲求がない。
「紫雨さんはある意味、逆ハーレム目指してるんだよな」
「まぁ、そうなるかしら?」
「……やっぱり帰るわ。元着ていた服、どこにある?」
ちょっと身の危険を感じて、紫雨にそう言うと少しだけ残念そうな顔をした。
無言のまま冬月がさっと凛空の服を渡してくれる。
受け取った服はさっぱりきれいになっていて、まったく濡れていない。
「……いつの間に洗って乾かしたんだ……」
「やぁね、神気を使ったに決まってるでしょ? タオルで髪を拭いた時、すぐに乾いたんだから、服もあっという間に乾くわ」
そう言えば葉暮が両手をかざした時、光ってちょっと温かくなった。
「……紫雨さん」
「なに?」
「わざわざ制服に着替えさせなくても、あっという間に乾かせたってことだよね……?」
「あはは、気づいちゃった?」
「紫雨さんっ!!」
あっけらかんと笑ってごまかそうとする紫雨に、凛空は頭を抱えたい気分になった。
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