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7話
眠るアレス王子の体に使用人の女が乗っている。
銀色に光るよく砥がれたナイフを振りかぶって。
彼女は私がアレス王子の介抱を頼んだ内の一人だった。
「アレスッ!!」
届かないことを忘れて私は叫ぶ。いや届かなくてよかった。
あの女に聞こえていたらどうなっていたかわからない。
私の声に反応したマリアとルーク王子が駆け寄ってくる。
そして水晶玉に映る光景を見て共に顔面を紙よりも白くした。
「弟を助けに行きます!!」
「駄目よ!」
素早く決断して階下へ行こうとしたルーク王子を私は鋭く静止する。
何故ですかと叫ぶような声に私は答えた。
「部屋のドアを開けた瞬間にこの女はアレスを殺すわ」
恐らく内側から施錠してある。突破に時間がかかる。警戒だってされている筈。
予兆すら気づかれずに入り込むなんて絶対に無理だ。
そう、扉からならね。
女は私が見ていることも知らないでアレス王子の唇をごしごしと拭っている。
きっとキスで移った私の口紅を落としたくて引き剥がしたくてたまらないのだろう。
その行動でわかる。わかってしまう。動機が。
どの女性とも決して浮名を流さなかった彼。
それが私みたいな女と接吻したなんて、裏切られたと思ったのでしょうね。
愛しているから、殺してやりたいと思ったのでしょうね。
本当、馬鹿じゃないの。
「不本意だけど私が撒いた種ね」
摘み取るわ。私は両手に魔力を込める。棘では足りない。茨の蔓でも足りない。
もっと、もっとだ。
「何をする気なの、ディアナ。茨の籠手なんて発動させて」
「床を壊すわ、一気にね」
そうしたらルーク王子はすぐに飛び降りて頂戴。
私はそう指示をすると意識を集中させることに戻る。
「床を壊すって…そんなビリビリ薔薇ハンドで何ができるのよ!」
うるさいわね。マリア、変なあだ名をつけるのは止めて頂戴。
できるわよそれぐらい。可愛いアレス坊やの危機にそれぐらい出来なくてどうしますか。
私の魔法の本質は茨なんかじゃない。私の本性だって真っ赤な薔薇じゃない。
私が求めるのは雷。私に眠る激情は絶対的な暴力。
大木を真っ二つに割り、巨大な岩を砕く。イメージをする。一点集中の圧倒的な破壊を。
私の立ち位置は階下のソファーの正面上。ここだけを穿てばいい。
自分を猛らせる。私の中の荒々しい感情を解き放つ。憎しみは力だ。
攻撃性は私の全てだ。
夢想する。私を馬鹿にする夫を。隣で嗤う若い女を。
膨らむ。八つ裂きにしてやりたいという感情が。でも駄目だ。
こ い つ ら じ ゃ 、弱 す ぎ る 。
私の全力全霊で打ち砕くに値する存在。
後先考えず挑まなければ確実に負ける相手を思い浮かべろ。
自分が全力の稲妻魔法を喰らわせたい相手を。
私は水晶玉の二人を学生時代のマリアとロバートに置き換える。
マリアはそんなことしてない。いやした。したんだ。そう思え。あの女はマリアだ。
ちょっとロバートにキスしようとしているんじゃないわよ。ふざけるんじゃないわよ。
ぶ っ こ ろ す わ よ 。
全身の毛が帯電して痛い。皮膚が痛い。当たり前だ。雷は痛い。
痛かろうが死にそうになろうが私は自分の男は全力で守る。
「こっの…くたばりなさい、泥棒猫!!」
完全に手に負えなくなったそれを床へと叩きつける。
こんな光の塊、いや殺意の塊。絶対茨なんかじゃない。
そう名付けるならこれは。
「雷女神の鉄槌!!!」
凄まじい轟音が城中に響く。
私の拳を喰らった床はまるで乾いたウェハースのように割れて、落ちた。
私も落ちた。
銀色に光るよく砥がれたナイフを振りかぶって。
彼女は私がアレス王子の介抱を頼んだ内の一人だった。
「アレスッ!!」
届かないことを忘れて私は叫ぶ。いや届かなくてよかった。
あの女に聞こえていたらどうなっていたかわからない。
私の声に反応したマリアとルーク王子が駆け寄ってくる。
そして水晶玉に映る光景を見て共に顔面を紙よりも白くした。
「弟を助けに行きます!!」
「駄目よ!」
素早く決断して階下へ行こうとしたルーク王子を私は鋭く静止する。
何故ですかと叫ぶような声に私は答えた。
「部屋のドアを開けた瞬間にこの女はアレスを殺すわ」
恐らく内側から施錠してある。突破に時間がかかる。警戒だってされている筈。
予兆すら気づかれずに入り込むなんて絶対に無理だ。
そう、扉からならね。
女は私が見ていることも知らないでアレス王子の唇をごしごしと拭っている。
きっとキスで移った私の口紅を落としたくて引き剥がしたくてたまらないのだろう。
その行動でわかる。わかってしまう。動機が。
どの女性とも決して浮名を流さなかった彼。
それが私みたいな女と接吻したなんて、裏切られたと思ったのでしょうね。
愛しているから、殺してやりたいと思ったのでしょうね。
本当、馬鹿じゃないの。
「不本意だけど私が撒いた種ね」
摘み取るわ。私は両手に魔力を込める。棘では足りない。茨の蔓でも足りない。
もっと、もっとだ。
「何をする気なの、ディアナ。茨の籠手なんて発動させて」
「床を壊すわ、一気にね」
そうしたらルーク王子はすぐに飛び降りて頂戴。
私はそう指示をすると意識を集中させることに戻る。
「床を壊すって…そんなビリビリ薔薇ハンドで何ができるのよ!」
うるさいわね。マリア、変なあだ名をつけるのは止めて頂戴。
できるわよそれぐらい。可愛いアレス坊やの危機にそれぐらい出来なくてどうしますか。
私の魔法の本質は茨なんかじゃない。私の本性だって真っ赤な薔薇じゃない。
私が求めるのは雷。私に眠る激情は絶対的な暴力。
大木を真っ二つに割り、巨大な岩を砕く。イメージをする。一点集中の圧倒的な破壊を。
私の立ち位置は階下のソファーの正面上。ここだけを穿てばいい。
自分を猛らせる。私の中の荒々しい感情を解き放つ。憎しみは力だ。
攻撃性は私の全てだ。
夢想する。私を馬鹿にする夫を。隣で嗤う若い女を。
膨らむ。八つ裂きにしてやりたいという感情が。でも駄目だ。
こ い つ ら じ ゃ 、弱 す ぎ る 。
私の全力全霊で打ち砕くに値する存在。
後先考えず挑まなければ確実に負ける相手を思い浮かべろ。
自分が全力の稲妻魔法を喰らわせたい相手を。
私は水晶玉の二人を学生時代のマリアとロバートに置き換える。
マリアはそんなことしてない。いやした。したんだ。そう思え。あの女はマリアだ。
ちょっとロバートにキスしようとしているんじゃないわよ。ふざけるんじゃないわよ。
ぶ っ こ ろ す わ よ 。
全身の毛が帯電して痛い。皮膚が痛い。当たり前だ。雷は痛い。
痛かろうが死にそうになろうが私は自分の男は全力で守る。
「こっの…くたばりなさい、泥棒猫!!」
完全に手に負えなくなったそれを床へと叩きつける。
こんな光の塊、いや殺意の塊。絶対茨なんかじゃない。
そう名付けるならこれは。
「雷女神の鉄槌!!!」
凄まじい轟音が城中に響く。
私の拳を喰らった床はまるで乾いたウェハースのように割れて、落ちた。
私も落ちた。
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