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11話
何とも言えない気持ちで目を覚ました。
瞬きをゆっくりと何回かしている内に室内にいた人間の一人が気付いて慌てて外へ出て行った。
あの真っ白な服には見覚えがある。治癒士の制服だ。
手が上手く動かせないなと思ったら両方とも文字が書かれた白い布でぐるぐる巻きにされていた。
頬や耳の辺りにも何かが貼られている感覚がする。
残った方の治癒士からの簡単な質問に受け答えしている内にマリアが人を引き連れてやってきた。
彼女は無言で私を見つめた。
完全に治るまで絶対に城から帰さないわよ。そうマリアが言うので、帰るところなんてないからいいわよと返した。
「大分時間がかかるがいいかの?」
そうマリアの背後から顔を見せた老人が言う。見知った人物だった。御殿医の、確かマルコー殿だ。
「仕方がありませんわ。もう若くありませんもの」
だから傷跡が残っても気になさらないで。
そう返事をすると、いや綺麗に治すよと気負わない声が返された。少しだけ泣きたい気分で有難うございますと答えた。
その後に私が気を失ってからのことをマリアから色々と聞いた。
アレス王子を襲ったメイドの正体は乳母の娘だった。身分差はあれど彼の幼馴染ともいえる関係だと知った。
私の雷撃で大怪我をした彼女は、それでも私より早く目覚めたとのことだった。
その目からはすっかり恋の狂気は去っていて、自ら死罪を望んだらしい。
ただ母に罪が及ぶことだけを酷く悔いていたという。
連座は行わないというマリアの言葉に深く感謝し、改めて自らの罪を詫びたとのことだった。
そしてアレス王子と私には詫びても詫びきれないとも。
『ディアナ様の雷に打たれてわかりました』
愛ゆえにアレス王子を殺そうとした己と、愛ゆえに命がけで恋人を守り抜いた彼女。
女神の如きその強さは自らに巣食う邪恋を見事に討ち滅ぼしてくれた。
私は絶対に勝てぬ存在に負けたのだと納得して死ぬことができる。
そう、乳母の娘は晴れ晴れと言っていたと聞かされて「大袈裟すぎる」と私は答えた。
しかも私とアレス王子が恋仲だという誤解さえ解かれていない。
どういうことだと王妃を寝台からねめつけた。
「だって、面倒臭くなりそうじゃない?」
どうせ死ぬのなら迷いなく死なせてあげた方が親切だ。
マリアの主張を私は鼻で笑った。何が死なせてあげるだ。
今の段階でその娘が死んでないのなら恐らくマリアには殺す気などないのだ。
なら自分には殺す気はあるのか。私は考えた。
王子の命を奪おうとした時点で普通なら極刑である。未遂であろうがそれは変わらない。
ついでに貴族である自分にも掠り傷とはいえ怪我を負わせてきた。「掠り傷じゃないわよ」マリアの声は無視する。
アレス王子の幼馴染とはいえ己には全くの他人だ。顔だってよく覚えていない。死んでもそこまで悲しくはない筈だ。
ただ、アレス王子の『傷』にはなるだろう。
私はマリアにそう告げた。でも慣れなければいけないことよ、王妃の顔でマリアは答えた。
それは今回でなくても別にいい。私は更に告げた。マリアは答えなかった。
「殺すつもりで私は彼女に雷撃を喰らわせた。死ななかったのならそれが雷女神のご意志よ」
それを人間が覆すだなんて不遜にも程があるわ。マリアはぽかんとした顔をした。
数秒後には腹を抱えて笑いだしたので私の答えがお気に召したのだろう。
疲れたから休むわとだけ言って目を閉じた。
実際眠くて眠くて仕方がなかった。
恐らく私の腕に巻かれている布には癒しの呪文が書かれている。
これは傷の治りを確かに早くはしてくれるけれど、身に着けているとやたらと眠くなるのだ。確かに睡眠と栄養は肉体回復に必要な要素ではあるけれど。
あんたの我儘を聞く代わりに私も好きにやるわよ。マリアの声が遠くに聞こえる。
仕方ないわねと私は返して今度こそ私は睡魔に抗うことを止める。
アレス王子と話をしたいわ。
私はそれだけを最後に呟いて治癒の為の眠りについた。
瞬きをゆっくりと何回かしている内に室内にいた人間の一人が気付いて慌てて外へ出て行った。
あの真っ白な服には見覚えがある。治癒士の制服だ。
手が上手く動かせないなと思ったら両方とも文字が書かれた白い布でぐるぐる巻きにされていた。
頬や耳の辺りにも何かが貼られている感覚がする。
残った方の治癒士からの簡単な質問に受け答えしている内にマリアが人を引き連れてやってきた。
彼女は無言で私を見つめた。
完全に治るまで絶対に城から帰さないわよ。そうマリアが言うので、帰るところなんてないからいいわよと返した。
「大分時間がかかるがいいかの?」
そうマリアの背後から顔を見せた老人が言う。見知った人物だった。御殿医の、確かマルコー殿だ。
「仕方がありませんわ。もう若くありませんもの」
だから傷跡が残っても気になさらないで。
そう返事をすると、いや綺麗に治すよと気負わない声が返された。少しだけ泣きたい気分で有難うございますと答えた。
その後に私が気を失ってからのことをマリアから色々と聞いた。
アレス王子を襲ったメイドの正体は乳母の娘だった。身分差はあれど彼の幼馴染ともいえる関係だと知った。
私の雷撃で大怪我をした彼女は、それでも私より早く目覚めたとのことだった。
その目からはすっかり恋の狂気は去っていて、自ら死罪を望んだらしい。
ただ母に罪が及ぶことだけを酷く悔いていたという。
連座は行わないというマリアの言葉に深く感謝し、改めて自らの罪を詫びたとのことだった。
そしてアレス王子と私には詫びても詫びきれないとも。
『ディアナ様の雷に打たれてわかりました』
愛ゆえにアレス王子を殺そうとした己と、愛ゆえに命がけで恋人を守り抜いた彼女。
女神の如きその強さは自らに巣食う邪恋を見事に討ち滅ぼしてくれた。
私は絶対に勝てぬ存在に負けたのだと納得して死ぬことができる。
そう、乳母の娘は晴れ晴れと言っていたと聞かされて「大袈裟すぎる」と私は答えた。
しかも私とアレス王子が恋仲だという誤解さえ解かれていない。
どういうことだと王妃を寝台からねめつけた。
「だって、面倒臭くなりそうじゃない?」
どうせ死ぬのなら迷いなく死なせてあげた方が親切だ。
マリアの主張を私は鼻で笑った。何が死なせてあげるだ。
今の段階でその娘が死んでないのなら恐らくマリアには殺す気などないのだ。
なら自分には殺す気はあるのか。私は考えた。
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ついでに貴族である自分にも掠り傷とはいえ怪我を負わせてきた。「掠り傷じゃないわよ」マリアの声は無視する。
アレス王子の幼馴染とはいえ己には全くの他人だ。顔だってよく覚えていない。死んでもそこまで悲しくはない筈だ。
ただ、アレス王子の『傷』にはなるだろう。
私はマリアにそう告げた。でも慣れなければいけないことよ、王妃の顔でマリアは答えた。
それは今回でなくても別にいい。私は更に告げた。マリアは答えなかった。
「殺すつもりで私は彼女に雷撃を喰らわせた。死ななかったのならそれが雷女神のご意志よ」
それを人間が覆すだなんて不遜にも程があるわ。マリアはぽかんとした顔をした。
数秒後には腹を抱えて笑いだしたので私の答えがお気に召したのだろう。
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実際眠くて眠くて仕方がなかった。
恐らく私の腕に巻かれている布には癒しの呪文が書かれている。
これは傷の治りを確かに早くはしてくれるけれど、身に着けているとやたらと眠くなるのだ。確かに睡眠と栄養は肉体回復に必要な要素ではあるけれど。
あんたの我儘を聞く代わりに私も好きにやるわよ。マリアの声が遠くに聞こえる。
仕方ないわねと私は返して今度こそ私は睡魔に抗うことを止める。
アレス王子と話をしたいわ。
私はそれだけを最後に呟いて治癒の為の眠りについた。
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