15 / 99
王妃の裁き4
イザベラは義姉のディアナが嫌いだった。
何かをされたというわけではない。
夫の姉妹というだけで嫌悪するのに十分な理由だと思う。
イザベラには年の離れた姉が二人いる。彼女たちは実家に来る度にどちらも義理の家族の愚痴を楽し気に吐き出していた。
特に義母や義理の姉妹に対しては存分に毒を吐き心行くまで扱き下ろしていた。
イザベラが嫁いだ家には母はいない。大分前に亡くなっていた。姉たちからは羨ましがられた。
けれどその分だけ義姉であるディアナが大きな顔をして君臨しているに違いない。
それはそれで大変そうねと同情しながらも二人の姉はどこかそれを望んでいるようだった。
イザベラが嫁いだ頃既にディアナは別の伯爵家に嫁いでいて同じ屋敷で顔を突き合わせるということはなかった。
ただ恐らく同じ屋敷で暮らすことになっていたら口汚くいびられるのだろうと思った。
ディアナが実家に戻るのは年に一度あるかないかだった。
なんて薄情な女だろうと思った。姉たちもイザベラの意見に揃って同調してくれた。
実家に顔を出したディアナはイザベラに対して必要最低限しか話しかけなかった。
あなたを舐めているのよ。話しかける価値もないと見下しているのと姉たちは言った。
義姉にとって弟の妻なんて目障りな部外者でしかないのだから。
二番目の姉は学校で彼女の一つ下だったらしく、イザベラよりもよほど詳しく義姉について語った。
あの方、学生時代からツンと澄ましていて今は元平民の王妃様と懇意でしょう。裏で女王気取りでいらっしゃるのではないかしら。
確かに外見はそれなりにお美しくいらっしゃるけれど、あの年でお子様の一人もおられないのよねぇ。
もしかして子供を産んで体の線が崩れるのが嫌なのではないかしら。あの方ならありえるわぁ。
だから夜の営みを拒んでいらっしゃるのかもしれないわね、けれど嫉妬深い人だから愛人など絶対許さないでしょうね。
性格の悪さがきついお顔立ちに昔から出ていらっしゃったもの。かっては毒薔薇令嬢とお呼びしたものよ。
今のご様子なら毒薔薇の夫人、悪の伯爵夫人とお呼びした方がしっくりくるわねぇ。
旦那様も大変なこと。でもああいう傲慢な美人ほど、いきなり殿方に愛想を尽かされてしまうのよねぇ。
でも彼女がそうなったら、きっとあなたは追い出されるでしょうねぇえ。
その前にイザベラ、あなたがしっかりとその家の女主人にならないと駄目よぉ。
一度家を出た女なんて余所者なのだから。
姉たちの言ったことは真実だった。本当にある日突然義姉は離縁されたのだ。
イザベラは今すぐこの場に自分の姉たちを連れて来たかった。そして全員で大笑いしたかった。
けれど今ここに二人の姉はいない。だからイザベラは誇り高くこう言った。
「可哀想なディアナお義姉さま。でもそのお年で再婚は無理ですわね」
だからといって出て行った家に居座ろうとはしないでくださいませね?
今でもあの時のディアナの表情を思い出すと胸がゾクゾクする。
棒で追い払われた野良犬のように義姉がこの家を後にした瞬間、確かにイザベラは自身を女英雄だと思った。
これでこの家に女性は己一人だけだ。私だけがこの屋敷の女王なのだ。
うっとりと勝利の余韻を食んでいる愚かな女王がマリア王妃と対面するのはこの数日後のことになる。
何かをされたというわけではない。
夫の姉妹というだけで嫌悪するのに十分な理由だと思う。
イザベラには年の離れた姉が二人いる。彼女たちは実家に来る度にどちらも義理の家族の愚痴を楽し気に吐き出していた。
特に義母や義理の姉妹に対しては存分に毒を吐き心行くまで扱き下ろしていた。
イザベラが嫁いだ家には母はいない。大分前に亡くなっていた。姉たちからは羨ましがられた。
けれどその分だけ義姉であるディアナが大きな顔をして君臨しているに違いない。
それはそれで大変そうねと同情しながらも二人の姉はどこかそれを望んでいるようだった。
イザベラが嫁いだ頃既にディアナは別の伯爵家に嫁いでいて同じ屋敷で顔を突き合わせるということはなかった。
ただ恐らく同じ屋敷で暮らすことになっていたら口汚くいびられるのだろうと思った。
ディアナが実家に戻るのは年に一度あるかないかだった。
なんて薄情な女だろうと思った。姉たちもイザベラの意見に揃って同調してくれた。
実家に顔を出したディアナはイザベラに対して必要最低限しか話しかけなかった。
あなたを舐めているのよ。話しかける価値もないと見下しているのと姉たちは言った。
義姉にとって弟の妻なんて目障りな部外者でしかないのだから。
二番目の姉は学校で彼女の一つ下だったらしく、イザベラよりもよほど詳しく義姉について語った。
あの方、学生時代からツンと澄ましていて今は元平民の王妃様と懇意でしょう。裏で女王気取りでいらっしゃるのではないかしら。
確かに外見はそれなりにお美しくいらっしゃるけれど、あの年でお子様の一人もおられないのよねぇ。
もしかして子供を産んで体の線が崩れるのが嫌なのではないかしら。あの方ならありえるわぁ。
だから夜の営みを拒んでいらっしゃるのかもしれないわね、けれど嫉妬深い人だから愛人など絶対許さないでしょうね。
性格の悪さがきついお顔立ちに昔から出ていらっしゃったもの。かっては毒薔薇令嬢とお呼びしたものよ。
今のご様子なら毒薔薇の夫人、悪の伯爵夫人とお呼びした方がしっくりくるわねぇ。
旦那様も大変なこと。でもああいう傲慢な美人ほど、いきなり殿方に愛想を尽かされてしまうのよねぇ。
でも彼女がそうなったら、きっとあなたは追い出されるでしょうねぇえ。
その前にイザベラ、あなたがしっかりとその家の女主人にならないと駄目よぉ。
一度家を出た女なんて余所者なのだから。
姉たちの言ったことは真実だった。本当にある日突然義姉は離縁されたのだ。
イザベラは今すぐこの場に自分の姉たちを連れて来たかった。そして全員で大笑いしたかった。
けれど今ここに二人の姉はいない。だからイザベラは誇り高くこう言った。
「可哀想なディアナお義姉さま。でもそのお年で再婚は無理ですわね」
だからといって出て行った家に居座ろうとはしないでくださいませね?
今でもあの時のディアナの表情を思い出すと胸がゾクゾクする。
棒で追い払われた野良犬のように義姉がこの家を後にした瞬間、確かにイザベラは自身を女英雄だと思った。
これでこの家に女性は己一人だけだ。私だけがこの屋敷の女王なのだ。
うっとりと勝利の余韻を食んでいる愚かな女王がマリア王妃と対面するのはこの数日後のことになる。
あなたにおすすめの小説
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。
四季
恋愛
本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」