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王妃の裁き7
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きょろきょろと、どうにも居心地悪そうにしている様子を見てシシリーは方針を決めた。
こういう相手には手馴れた娼婦のように振舞わない方がいい。
シシリーは噂に聞いていた彼の妻とは真逆の女を演じた。幼く儚げで男に頼らなければ生きていけないような女になりきった。
男に発言に決して言い返さなかったし、弱音も陰口も一切窘めず柔らかく受け入れ続けた。
そうすると最初の初心な様子が嘘のように男の本性が浮き上がってくる。
数カ月もしない内に男は本名も爵位も家庭の事情もすっかりとシシリーに吐き出した。
子供が欲しいのにいつまで経ってもできないという苦悩もだ。どうやら彼はそれを妻側の要因だと考えているらしかった。
けれど本人にそれを指摘することも出来ずひたすら耐えているのだとシシリーに愚痴った。
お可哀想な伯爵様、そう男を真っ白な胸に抱きとめながら慰めてやる。
男が若い体のシシリーに子を産んで欲しいと頭を下げるまで三か月もかからなかった。
面白いと思ったので彼女は聖女のように微笑んで頷いた。
予想よりすぐに腹は膨らみ始め、男は大いに喜んだ。
そしてシシリーが孕んでから『ようやく』彼女を娼館から水揚げした。
お可哀想な伯爵様。
彼女は子を産むことを承諾したが、それはその男以外に抱かれないという約束ではなかった。
当たり前だ、シシリーは娼婦なのだから。
けれど、まあ多分、大丈夫でしょう。彼女は笑う。
シシリーが胎を許した客は全て同じ髪と瞳の色をしていたので。
娼婦に跡継ぎを生ませようとする滑稽な伯爵に見分けなどつく筈がない。
奥方には、私たちは数年前から関係があったとお伝えしましょうね。
数カ月だと付き合いが浅すぎると奥方様にきっと諦めていただけないでしょうから。
今やすっかり立場は逆転していた。子供に言って聞かせる様に伯爵と口裏を合わせてシシリーは微笑む。
閨でひたすら甘やかし続けた結果従順になった男を操るのはこれからもきっと容易い。
伯爵夫人と呼ばれるのはどのような心地になるのだろう、始まる生活にシシリーはうっとりした。
こういう相手には手馴れた娼婦のように振舞わない方がいい。
シシリーは噂に聞いていた彼の妻とは真逆の女を演じた。幼く儚げで男に頼らなければ生きていけないような女になりきった。
男に発言に決して言い返さなかったし、弱音も陰口も一切窘めず柔らかく受け入れ続けた。
そうすると最初の初心な様子が嘘のように男の本性が浮き上がってくる。
数カ月もしない内に男は本名も爵位も家庭の事情もすっかりとシシリーに吐き出した。
子供が欲しいのにいつまで経ってもできないという苦悩もだ。どうやら彼はそれを妻側の要因だと考えているらしかった。
けれど本人にそれを指摘することも出来ずひたすら耐えているのだとシシリーに愚痴った。
お可哀想な伯爵様、そう男を真っ白な胸に抱きとめながら慰めてやる。
男が若い体のシシリーに子を産んで欲しいと頭を下げるまで三か月もかからなかった。
面白いと思ったので彼女は聖女のように微笑んで頷いた。
予想よりすぐに腹は膨らみ始め、男は大いに喜んだ。
そしてシシリーが孕んでから『ようやく』彼女を娼館から水揚げした。
お可哀想な伯爵様。
彼女は子を産むことを承諾したが、それはその男以外に抱かれないという約束ではなかった。
当たり前だ、シシリーは娼婦なのだから。
けれど、まあ多分、大丈夫でしょう。彼女は笑う。
シシリーが胎を許した客は全て同じ髪と瞳の色をしていたので。
娼婦に跡継ぎを生ませようとする滑稽な伯爵に見分けなどつく筈がない。
奥方には、私たちは数年前から関係があったとお伝えしましょうね。
数カ月だと付き合いが浅すぎると奥方様にきっと諦めていただけないでしょうから。
今やすっかり立場は逆転していた。子供に言って聞かせる様に伯爵と口裏を合わせてシシリーは微笑む。
閨でひたすら甘やかし続けた結果従順になった男を操るのはこれからもきっと容易い。
伯爵夫人と呼ばれるのはどのような心地になるのだろう、始まる生活にシシリーはうっとりした。
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