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王妃の裁き13
「侮辱と、偽証行為だって……?」
「そうよ、ロバート・グレイ伯爵。貴方は私の意思を騙った婚姻解消届を教会に提出しましたね」
「…ディアナ、なぜお前がそれを知っている!」
「何故って貴方…フォロー司祭様を前にしてわからないの?」
「そもそもなぜ司祭がこの場にいるんだ!」
「そんなの貴方が偽の婚姻解消届を出して教会を困らせているからでしょう!」
司祭様は巻き込まれた側なのよ、私が強く叱るとロバートはいじけたように唇を噛んだ。正直引っぱたいてやりたい。
その役目を求める様にジェームズ前伯爵を見るが、彼はそそくさと視線を外したので盛大に溜息を吐いた。
案外似た者親子なのかもしれない。
私はフォロー司祭から預かった婚姻解消届を手にしながら話を勧めた。
「この書類に私は全く関与していません。なのに離縁事由がまるで私側から望んだように記載がされている。…私の物でない筆跡でね」
「なんて書いてあったの」
マリアの質問に私は答える。
「身体的理由…子を成せない体だと判明した為私ディアナは婚姻解消を希望致します、よ。…私の体に随分詳しくていらっしゃるのねシシリーさん」
「何のことかしら」
「私だってロバートの筆跡かそうでないかぐらいは判るわ。長い付き合いだもの」
「それだけ長い付き合いだったのに、伯爵様の御子は孕めなかったのね」
ぶつりと理性の糸が焼き切れた。
これまでずっと私は彼女に『加減』をしてきた。
初めて会ったその日に罵倒され、屋敷を追い出されたその時だって無意識に手を出せなかった。
今日だって妊婦でも飲める薬草茶を場に用意するよう頼んだ。そこまで気を配る必要はないとマリアに言われたがどうしても気遣ってしまった。
この女のことをでは断じてない。その膨らんだ腹の中にいる赤子のことをだ。
子供に罪はないのだからという考えは私を苦しめ続けた。けれど、もういい。もういいだろう。
それに今日間近でじっくりと観察してわかったことがある。これだけはどうしても見過ごせない。
私はにっこりと微笑んだ。全身の血が沸騰しながらも冷えていた。
「ではシシリーさんのお腹の中には今ロバートの子が宿っているのかしら」
「当然でしょう。見てお分かりにならないのかしら」
「御免なさい。お腹が膨らんでいるのは判るけれど、魔力の種類がどうしても違うから」
「魔力?わけのわからないことを言わないで」
怪訝な顔をする彼女を私とマリアは冷たい目で見つめた。
フォロー司祭とマルコー医師も物言いたげに妊婦を見ている。
この性別も年齢もバラバラな四人には共通点がある。全員魔力感知技術がA級以上なのだ。
特にマルコー医師はS級に近いA級である。
その域に達すると胎児が微量に纏う魔力から正しく魔法系統を知ることが出来る。
シシリーは恐らく貴族ではない。魔力をほぼ感じないからだ、ただその『胎』の中からはうっすらと感じる。青のオーラを。
「ご存じない様だから教えてあげるわ。大貴族はそれはそれは魔法の血統を大事にしているの。子は父母いずれかの血に連なる魔力を必ず受け継いで生まれてくるのよ」
グレイ伯爵家は炎神アグニスの槍を家紋に持つ、つまり当初の家系は炎だ。
そして炎に途中からとある理由で雷の魔力が混じり今は炎雷となっている。
だが、いまシシリーの中に宿る赤子の放つ魔力は。
私はマルコー医師に答えを求めた。医師の口からはっきりとそれが真実であると知らしめる為だ。
彼は少しだけ躊躇いながらその診断を告げる。
「グレイ伯爵、この女性の腹の中の子の魔法系統は…氷じゃ」
「つまりグレイ家の炎雷にこれからは氷の魔力も混ざるのね、誰の血かは知らないけれど」
貴男の苦手な氷魔法が得意そうな跡継ぎができてよかったわね。
そう私は祝福を込めて元夫に笑いかけてみたけれど彼は凍てついたように動かなかった。
何故かしら、私は再び笑った。
「そうよ、ロバート・グレイ伯爵。貴方は私の意思を騙った婚姻解消届を教会に提出しましたね」
「…ディアナ、なぜお前がそれを知っている!」
「何故って貴方…フォロー司祭様を前にしてわからないの?」
「そもそもなぜ司祭がこの場にいるんだ!」
「そんなの貴方が偽の婚姻解消届を出して教会を困らせているからでしょう!」
司祭様は巻き込まれた側なのよ、私が強く叱るとロバートはいじけたように唇を噛んだ。正直引っぱたいてやりたい。
その役目を求める様にジェームズ前伯爵を見るが、彼はそそくさと視線を外したので盛大に溜息を吐いた。
案外似た者親子なのかもしれない。
私はフォロー司祭から預かった婚姻解消届を手にしながら話を勧めた。
「この書類に私は全く関与していません。なのに離縁事由がまるで私側から望んだように記載がされている。…私の物でない筆跡でね」
「なんて書いてあったの」
マリアの質問に私は答える。
「身体的理由…子を成せない体だと判明した為私ディアナは婚姻解消を希望致します、よ。…私の体に随分詳しくていらっしゃるのねシシリーさん」
「何のことかしら」
「私だってロバートの筆跡かそうでないかぐらいは判るわ。長い付き合いだもの」
「それだけ長い付き合いだったのに、伯爵様の御子は孕めなかったのね」
ぶつりと理性の糸が焼き切れた。
これまでずっと私は彼女に『加減』をしてきた。
初めて会ったその日に罵倒され、屋敷を追い出されたその時だって無意識に手を出せなかった。
今日だって妊婦でも飲める薬草茶を場に用意するよう頼んだ。そこまで気を配る必要はないとマリアに言われたがどうしても気遣ってしまった。
この女のことをでは断じてない。その膨らんだ腹の中にいる赤子のことをだ。
子供に罪はないのだからという考えは私を苦しめ続けた。けれど、もういい。もういいだろう。
それに今日間近でじっくりと観察してわかったことがある。これだけはどうしても見過ごせない。
私はにっこりと微笑んだ。全身の血が沸騰しながらも冷えていた。
「ではシシリーさんのお腹の中には今ロバートの子が宿っているのかしら」
「当然でしょう。見てお分かりにならないのかしら」
「御免なさい。お腹が膨らんでいるのは判るけれど、魔力の種類がどうしても違うから」
「魔力?わけのわからないことを言わないで」
怪訝な顔をする彼女を私とマリアは冷たい目で見つめた。
フォロー司祭とマルコー医師も物言いたげに妊婦を見ている。
この性別も年齢もバラバラな四人には共通点がある。全員魔力感知技術がA級以上なのだ。
特にマルコー医師はS級に近いA級である。
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「ご存じない様だから教えてあげるわ。大貴族はそれはそれは魔法の血統を大事にしているの。子は父母いずれかの血に連なる魔力を必ず受け継いで生まれてくるのよ」
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「つまりグレイ家の炎雷にこれからは氷の魔力も混ざるのね、誰の血かは知らないけれど」
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何故かしら、私は再び笑った。
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