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愚かな男の悲喜劇
ロバートは混乱していた。
元学友である王妃に呼び出されたと思ったら巨大な蠢く肉の塊に引き合わされた。
そのおぞましさに気を失い目覚めたらあれがお前の妻だと言われた時は発狂するかと思った。
シシリーは若く美しい女である。娼館で籠の鳥として育てられた為世間知らずで学もない。
だがその瑞々しく柔らかな肉の魅力と庇護欲を擽る小さな顔。そして整った目鼻立ちは愛らしくいつでもロバートの胸を高鳴らせた。
ディアナに腹の子の父親が別の貴族だと指摘された時の青褪めた顔も美しく、そして儚げに思えた。だから男として庇ったのだ。
けれど、先程室内で見たあの肉女がシシリーだと言うのなら、もしそれが真実ならばいっそ死んでくれていた方がよかった。
女と言うのは恐ろしい。いくつもの意味でロバートは思う。
しなやかな雌猫のような小さく可愛らしいシシリーが、あのようなぶよぶよとしたモンスターに成り果てたことがまず恐ろしい。
更に彼女をそのように変容させたのは目の前のマリア王妃なのだ。そしてそれは恋敵であるディアナの頼みに違いない。
女が女を罰するというのはこんなにも残忍で容赦がないものなのか。ロバートはおののいた。
そしてマリア王妃はそれだけでは物足りないとばかりに今ロバートを標的として定めた。
今隣室で菓子を貪る化け物と番となりこの国から出ていけと言うのだ。
ロバートは伯爵である。貴族階級の中でも上位に位置する人間だ。
今まで何も問題なく国に対して務めを果たしてきた。
それなのにただ一度の過ちでここまで何もかもを奪われてしまうのか。
シシリーが美しいままの姿なら逃避行の夢も見られただろう。
けれどあの醜く太り果てた女を連れて貴族以外の暮らしをさせられるぐらいなら死んだ方がマシである。
ロバートは王妃の足に縋りつこうとして蹴り飛ばされた。
学生時代、彼女から言い寄ってきたこともあるというのに。慈悲の片鱗さえ見せぬとは随分と酷い手のひら返しだ。
そもそもなぜ自分たちの夫婦関係にここまでマリアが出しゃばるのだろう。改めてロバートは思う。
きっとの彼女の友人であるディアナが泣きついたからに違いない。そこまで離縁されたことに傷ついたのだろうか。
確かにディアナは昔から自分にぞっこんだった。それこそロバートにちょっかいをかけてきたマリアと激しく争う程に。
そして婚約してから離縁するまでずっと己に尽くし続けてくれた。物言いがきつく素直ではなかったが彼女は非常に便利で頼りになる存在だった。
だからこそ伯爵夫人として完璧だと別れの時に褒めたたえたのだ。
ロバートは蹲りながら元妻の方を見る。決して若くはないが体型に崩れはなく丁寧に化粧を施された顔は十分に美しいものだった。
これならば、愛せる。そうロバートは思った。彼女が自分を見つめる瞳には確かに悲しみが宿っている。
そうだ。確かに彼女は言っていた。運命が少し違えば己はシシリーの存在を受け入れていたと。
跡継ぎは諦める。国外追放なんて嫌だ。シシリーなんて頼まれてもいらない。寧ろシシリーと番えという命令だけは絶対受け入れられない。愛人問題も次はもっとうまくやれる。
ディアナを傷つけたというなら、自分の愛で癒せばいいのだ。きっと彼女は自分が必死に縋れば許してくれる。
だっていつだってロバートよりも彼女の方が恋人に向ける想いは多かった。
自分はあれほどディアナに愛されていたのだ。その自信がロバートを軽率にさせる。
愛に永遠などないことを少し前に己が立証したことなど綺麗に忘れていた。
「ディアナ助けてくれ、また君を妻にしてあげるから!」
絶望の果てに至った楽観でロバートは元妻を口説いた。
そして次の瞬間、城内に今年二度目の雷鳴が鳴り響いた。
その轟音の凄まじさは後日雷女神の激昂と名付けられることとなる。
元学友である王妃に呼び出されたと思ったら巨大な蠢く肉の塊に引き合わされた。
そのおぞましさに気を失い目覚めたらあれがお前の妻だと言われた時は発狂するかと思った。
シシリーは若く美しい女である。娼館で籠の鳥として育てられた為世間知らずで学もない。
だがその瑞々しく柔らかな肉の魅力と庇護欲を擽る小さな顔。そして整った目鼻立ちは愛らしくいつでもロバートの胸を高鳴らせた。
ディアナに腹の子の父親が別の貴族だと指摘された時の青褪めた顔も美しく、そして儚げに思えた。だから男として庇ったのだ。
けれど、先程室内で見たあの肉女がシシリーだと言うのなら、もしそれが真実ならばいっそ死んでくれていた方がよかった。
女と言うのは恐ろしい。いくつもの意味でロバートは思う。
しなやかな雌猫のような小さく可愛らしいシシリーが、あのようなぶよぶよとしたモンスターに成り果てたことがまず恐ろしい。
更に彼女をそのように変容させたのは目の前のマリア王妃なのだ。そしてそれは恋敵であるディアナの頼みに違いない。
女が女を罰するというのはこんなにも残忍で容赦がないものなのか。ロバートはおののいた。
そしてマリア王妃はそれだけでは物足りないとばかりに今ロバートを標的として定めた。
今隣室で菓子を貪る化け物と番となりこの国から出ていけと言うのだ。
ロバートは伯爵である。貴族階級の中でも上位に位置する人間だ。
今まで何も問題なく国に対して務めを果たしてきた。
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シシリーが美しいままの姿なら逃避行の夢も見られただろう。
けれどあの醜く太り果てた女を連れて貴族以外の暮らしをさせられるぐらいなら死んだ方がマシである。
ロバートは王妃の足に縋りつこうとして蹴り飛ばされた。
学生時代、彼女から言い寄ってきたこともあるというのに。慈悲の片鱗さえ見せぬとは随分と酷い手のひら返しだ。
そもそもなぜ自分たちの夫婦関係にここまでマリアが出しゃばるのだろう。改めてロバートは思う。
きっとの彼女の友人であるディアナが泣きついたからに違いない。そこまで離縁されたことに傷ついたのだろうか。
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ロバートは蹲りながら元妻の方を見る。決して若くはないが体型に崩れはなく丁寧に化粧を施された顔は十分に美しいものだった。
これならば、愛せる。そうロバートは思った。彼女が自分を見つめる瞳には確かに悲しみが宿っている。
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自分はあれほどディアナに愛されていたのだ。その自信がロバートを軽率にさせる。
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