惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

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王妃の裁き39

 シシリーを殺さずに裁く。

 そう雷女神から案を授けられた時、先程の怒りに青褪める親友の顔が浮かんだ。

 ディアナは自分の身に雷を纏わせて相手を攻撃することができる。

 加減をしなければ殺すことも可能だろう。

 ディアナによって穿たれた穴を思いマリアも同じように青褪めた。

 このままでは彼女がシシリーを殺してしまう。

 焦りと共に女神にそれを告げると「案ずることはない」という答えが返る。


「大丈夫よぉ、ディアナちゃんの魔力は一時的に封じてあるから♡」


 ユピテルの微笑みにマリアは安堵の息を吐いた。

 魔法が使えなくなっていた場合ディアナは自らの手で目的を達しようとするだろう。

 けれどあの場にはマリアの息子のアレスがいる。

 惚れた女性とはいえ、いや寧ろ惚れているからこそ力尽くでもディアナを止めてくれるだろう。

 ならば焦ることはないと王妃は冷静さを取り戻した目でユピテルを見つめた。


「精霊の子を殺めた罪人の身柄は一旦この城で預かります。その後の始末も私が」

「それがいいわねぇ。この城からならわたしくも精霊界に運びやすいし♠」

「精霊界に連行するのは何時頃になるのかしら」

「それはまだ、もう少し先よ♡」

「何故、氷妃の怒りを鎮める為ならば早急に罰したほうがいいのでは?」


 マリアの質問にユピテルは少しだけ億劫そうな眼差しをする。

 それだけで心臓が太い槍で貫かれたような痺れがマリアを襲った。

 けれどそれは事実ではない。そしてユピテルにもマリアを攻撃する意思はない。

 ただ、人間として神を恐れその機嫌を伺い過ぎているだけだ。マリアは無言で耐えた。

 マリアは少女時代に風の精霊神と契約している。加護を受ける際の誓いは『誰にも屈せず奔放である』ことだ。

 だから相手が風の神と同位存在であっても、少なくとも気持ちで負けることはならない。

 その事情を雷の女神が知っているかは不明だが、ユピテルはそこまで間を置かずマリアへと理由を話した。


「……アイドラが精霊の子を葬る時間が必要なのよ」


 その台詞に自身も二人の子を持つ王妃は、自らの不明を恥じた。

 罪人を罰する行為は必要だ。だが生れ落ちる前に殺された眷属を氷妃が悼む時間も優先されるべきものだろう。

 正直精霊神たちが人間界に生まれる魔力持ちの子供にどれ程の肩入れをしているのかはわからない。

 けれど身勝手な堕胎に対し二度と眷属を人間たちに産ませることはないと憤る程だ。

 マリアは改めて人間の行いを女神に詫びた。そして赤子の亡骸は自らの責任において丁重に葬ると告げる。

 ユピテルは微笑むと氷妃アイドラにそのことを伝えると言って姿を消した。


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