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王妃の裁き40
ユピテルが精霊界に戻った後、マリアのやることは山積みだった。
シシリーの身柄を保護し、重傷者が複数出たことを理由に一時的に集まりは解散させた。
ディアナのケアを彼女の父であるダナンに頼み、ついでに雷女神に関する資料を一時的に貸し出してくれるよう頼んだ。
フラウセス伯爵家の人間は代々氷と雷の魔力を有する。しかしここ数代の当主は全員が氷魔法を得意としていた。
だが一番最初の当主は優れた雷撃魔法の使い手だったと過去にマリアはディアナから聞いていた。
それ故に雷女神ユピテルに関する書籍が家には多く収集されているのだと。
マリアはそのことを思い出し、ついでに氷魔法も得意とする家系ならばと氷妃アイドラデュースに関する情報も求めた。
ダナンは王妃からの突然の依頼に不思議そうな顔をしたが、すぐに快諾し翌日には大量の書物を馬車に積んで城へ運んできてくれた。
王妃としての執務の傍ら、それらに記された膨大な情報に目を通す。
ユピテルから告げられた氷妃からの制裁については夫である国王に報告するのみにした。
確かにアイドラデュースの罰が実行されれば国を揺るがしかねない大事件ではある。
だからといって重臣や貴族たちにそれを広めた所でメリットがあるだろうか。
この国に氷妃の加護を持つ者がいるのならば話は違うが、夫に聞いた所そのような存在は建国神話の時代まで遡らないと見当たらないと言われた。
同じ神であるユピテルが人間嫌いだと評していただけあって筋金入りだ。ならば尚更他の人間たちに知らせることではない。
権力者たちをいたずらに不安にさせた結果、シシリーだけでなくディアナが精霊殺しに関与した者として糾弾される可能性もある。
当然それは言いがかりに過ぎない。胎に宿った精霊の子を殺したのは母親であるシシリーなのだから。
けれどその切っ掛けをつくったということでディアナを責める人間が出ないとは限らない。
シシリーの体内に魔力を感じた時点で出産まで拘束するべきだったと訳知り顔で指摘する者は恐らく一人や二人ではない。
無神経な他人程「もっと上手くやれた筈だ」と言い出すものだ。
そんな連中に親友が責められ追い詰められることを想像するだけでマリアは怒りに体が震えた。
その時に感じる感情はマリア本人さえ戸惑う程に激しく根の深い絶望を伴っていた。
ディアナは伯爵令嬢として生を受け、少し前までは伯爵夫人として栄華を誇っていた。
その彼女が大勢から糾弾されるような光景などマリアは一度も見たことがないのに、なぜか「二度と繰り返したくない」という思いが最後には残った。
ユピテルやアイドラデュース、精霊の神々のことを調べれば調べる程にその感覚は強くなっていく。
現代において殆ど顕現しない精霊神たちについて一番多く記されているのは当然ながら神話の時代だ。
太古、二人の若者が精霊たちの力を借りて広大な土地を支配する邪竜一族を倒しこの国を建てた。
その時代にマリアは当然存在しない。実際学校の授業で建国神話について調べた当時はただのお伽噺だと思っていた。
けれど今はこの神話に記されている逸話のどれが『偽物』でどれが『本物』なのかがわかるようになっていた。
そのことは最愛の夫にさえ何故か告げることが出来ないでいた。
恐らく神話の時代から存在する雷女神の威光を間近に浴びたことで、一時的に精神が影響を受けているのだろう。
そう己に言い聞かし、マリアは慌ただしく日々を過ごした。
シシリーの身柄を保護し、重傷者が複数出たことを理由に一時的に集まりは解散させた。
ディアナのケアを彼女の父であるダナンに頼み、ついでに雷女神に関する資料を一時的に貸し出してくれるよう頼んだ。
フラウセス伯爵家の人間は代々氷と雷の魔力を有する。しかしここ数代の当主は全員が氷魔法を得意としていた。
だが一番最初の当主は優れた雷撃魔法の使い手だったと過去にマリアはディアナから聞いていた。
それ故に雷女神ユピテルに関する書籍が家には多く収集されているのだと。
マリアはそのことを思い出し、ついでに氷魔法も得意とする家系ならばと氷妃アイドラデュースに関する情報も求めた。
ダナンは王妃からの突然の依頼に不思議そうな顔をしたが、すぐに快諾し翌日には大量の書物を馬車に積んで城へ運んできてくれた。
王妃としての執務の傍ら、それらに記された膨大な情報に目を通す。
ユピテルから告げられた氷妃からの制裁については夫である国王に報告するのみにした。
確かにアイドラデュースの罰が実行されれば国を揺るがしかねない大事件ではある。
だからといって重臣や貴族たちにそれを広めた所でメリットがあるだろうか。
この国に氷妃の加護を持つ者がいるのならば話は違うが、夫に聞いた所そのような存在は建国神話の時代まで遡らないと見当たらないと言われた。
同じ神であるユピテルが人間嫌いだと評していただけあって筋金入りだ。ならば尚更他の人間たちに知らせることではない。
権力者たちをいたずらに不安にさせた結果、シシリーだけでなくディアナが精霊殺しに関与した者として糾弾される可能性もある。
当然それは言いがかりに過ぎない。胎に宿った精霊の子を殺したのは母親であるシシリーなのだから。
けれどその切っ掛けをつくったということでディアナを責める人間が出ないとは限らない。
シシリーの体内に魔力を感じた時点で出産まで拘束するべきだったと訳知り顔で指摘する者は恐らく一人や二人ではない。
無神経な他人程「もっと上手くやれた筈だ」と言い出すものだ。
そんな連中に親友が責められ追い詰められることを想像するだけでマリアは怒りに体が震えた。
その時に感じる感情はマリア本人さえ戸惑う程に激しく根の深い絶望を伴っていた。
ディアナは伯爵令嬢として生を受け、少し前までは伯爵夫人として栄華を誇っていた。
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