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王妃の裁き44
子供が死の間際遺した氷の棘が、実の母親を殺そうとしている。
それが果たされる前にシシリーを儀式と言う形で処刑しなければいけない。
マリアのその誓いはしかし再び現れた女神ユピテルによってあっさりと無駄になった。
______
「人間って本当不思議だわ♡」
ふわりと、豚になったシシリーの体が浮く。
己の目の高さまで浮き上がった家畜の額に掌で触れユピテルは笑った。
それが別れの挨拶代わりだったのか次の瞬間にはシシリーの姿は部屋から消える。
いや部屋からだけではない。シシリーは人間界から消え失せたのだ。
「どうしてこんなに弱いのに、欲望だけはわたくしたち以上なのかしら♠」
昔から変わらないわね。まるでやんちゃな子供を面白がるように女神は言う。
マリアはそれに返事もせず先程までシシリーが浮かんでいた場所を見つめた。
こんなにあっけないものか。
日ごとに異常さを増すシシリーに死を予感し、近日処刑の判断を下したタイミングでユピテルは再び城に現れた。
そして今ディアナや自分を悩ませ続けた悪女はあっさりと神の手によって永久に放逐された。
もう二度と人間の姿でも豚の姿でも会うことはないだろう。
雷神から加護と言う名の呪いを授けられたシシリーは、今後は精霊界で氷の女神により永遠の罰を受けるのだ。
不思議な空虚さと共に肩の荷物が一つ無くなった気がした。
「ディアナちゃんは、あの豚さんにお別れを言いたかったもしれないわねぇ?」
「いらないわよそんなの」
「あらぁ、マリアちゃんが決めちゃうのぉ?」
「そうよ」
「じゃあこの坊やもこのまま消しちゃう?」
ユピテルはふんわりと虚空に浮かびながら床の一部を指さす。
そこには老人のような男が俯せに倒れていた。ディアナの元夫のロバートだ。
「確かこの国から追放するって言ってたわよねぇ、わたくしが精霊界に送ってあげましょうか?」
「シシリーのついでに?このゴミついでに捨てとくわみたいなノリね……」
「この坊やは炎属性みたいだから、活火山の孔あたりが住みやすくていいんじゃないかしら♡」
「……もしかしてこいつも精霊関係で何かしたの?」
ユピテルの目が全く笑っていないことに若干引きながらマリアは気丈に聞いた。
「わたくしのディアナに酷いことを言ったわね」
「こわっ」
急に真顔になった上に口調からふわふわさを取り除かないで欲しい。
ただ、言っていることはわかる。
「そうね、私のディアナに甘え切って生きてきた挙句若い女にコロっと誑かされたのは最悪ね」
「そうよぉ、しかも相手が醜くなったからって再びわたくしのディアナちゃんに擦り寄るなんて迷惑でしかないわぁ」
「本当それよね、まあ、ディアナはあんたのじゃないけど」
「そうねぇ、マリアちゃんのものでもないわねぇ♡」
「……」
「……♠」
雷の女神と笑顔でバチバチと火花を散らせる。この部屋が埃だらけだったら粉塵爆発が起きてしまうかもしれない。
この城の侍女が働き者で良かったとマリアは内心思った。
しかしユピテルのディアナに対するこの異常な気に入り方は何なのだろう。
私物呼ばわりされてついうっかり張り合ってしまったけれど、ディアナとこの女神の関係を自分はあまり知らない。
初対面ではないようだが頻繁に顔を合わせるような間柄でもないのは確かだ。
それを言うなら自分もそうだ。ユピテルとは数回しか会っていない。なのに気軽に軽口を叩いてしまっている。
その気になれば人間などすぐに目の前から消してしまえるような恐ろしい力を持つ相手だと知っているのに。
マリアの戸惑いに気づいたのかユピテルは浮かぶのを止め床へと降り立った。
「……あなたたちは忘れていてもいいわ」
わたくしたちは覚えているから。
そう慈悲深い笑みを雷女神は浮かべる。
マリアはその美しい微笑みをじっと見つめ口を開いた。
「……そういやユピテルっていつから女装し始めたの?」
粉塵爆発が起きた。
それが果たされる前にシシリーを儀式と言う形で処刑しなければいけない。
マリアのその誓いはしかし再び現れた女神ユピテルによってあっさりと無駄になった。
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「人間って本当不思議だわ♡」
ふわりと、豚になったシシリーの体が浮く。
己の目の高さまで浮き上がった家畜の額に掌で触れユピテルは笑った。
それが別れの挨拶代わりだったのか次の瞬間にはシシリーの姿は部屋から消える。
いや部屋からだけではない。シシリーは人間界から消え失せたのだ。
「どうしてこんなに弱いのに、欲望だけはわたくしたち以上なのかしら♠」
昔から変わらないわね。まるでやんちゃな子供を面白がるように女神は言う。
マリアはそれに返事もせず先程までシシリーが浮かんでいた場所を見つめた。
こんなにあっけないものか。
日ごとに異常さを増すシシリーに死を予感し、近日処刑の判断を下したタイミングでユピテルは再び城に現れた。
そして今ディアナや自分を悩ませ続けた悪女はあっさりと神の手によって永久に放逐された。
もう二度と人間の姿でも豚の姿でも会うことはないだろう。
雷神から加護と言う名の呪いを授けられたシシリーは、今後は精霊界で氷の女神により永遠の罰を受けるのだ。
不思議な空虚さと共に肩の荷物が一つ無くなった気がした。
「ディアナちゃんは、あの豚さんにお別れを言いたかったもしれないわねぇ?」
「いらないわよそんなの」
「あらぁ、マリアちゃんが決めちゃうのぉ?」
「そうよ」
「じゃあこの坊やもこのまま消しちゃう?」
ユピテルはふんわりと虚空に浮かびながら床の一部を指さす。
そこには老人のような男が俯せに倒れていた。ディアナの元夫のロバートだ。
「確かこの国から追放するって言ってたわよねぇ、わたくしが精霊界に送ってあげましょうか?」
「シシリーのついでに?このゴミついでに捨てとくわみたいなノリね……」
「この坊やは炎属性みたいだから、活火山の孔あたりが住みやすくていいんじゃないかしら♡」
「……もしかしてこいつも精霊関係で何かしたの?」
ユピテルの目が全く笑っていないことに若干引きながらマリアは気丈に聞いた。
「わたくしのディアナに酷いことを言ったわね」
「こわっ」
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ただ、言っていることはわかる。
「そうね、私のディアナに甘え切って生きてきた挙句若い女にコロっと誑かされたのは最悪ね」
「そうよぉ、しかも相手が醜くなったからって再びわたくしのディアナちゃんに擦り寄るなんて迷惑でしかないわぁ」
「本当それよね、まあ、ディアナはあんたのじゃないけど」
「そうねぇ、マリアちゃんのものでもないわねぇ♡」
「……」
「……♠」
雷の女神と笑顔でバチバチと火花を散らせる。この部屋が埃だらけだったら粉塵爆発が起きてしまうかもしれない。
この城の侍女が働き者で良かったとマリアは内心思った。
しかしユピテルのディアナに対するこの異常な気に入り方は何なのだろう。
私物呼ばわりされてついうっかり張り合ってしまったけれど、ディアナとこの女神の関係を自分はあまり知らない。
初対面ではないようだが頻繁に顔を合わせるような間柄でもないのは確かだ。
それを言うなら自分もそうだ。ユピテルとは数回しか会っていない。なのに気軽に軽口を叩いてしまっている。
その気になれば人間などすぐに目の前から消してしまえるような恐ろしい力を持つ相手だと知っているのに。
マリアの戸惑いに気づいたのかユピテルは浮かぶのを止め床へと降り立った。
「……あなたたちは忘れていてもいいわ」
わたくしたちは覚えているから。
そう慈悲深い笑みを雷女神は浮かべる。
マリアはその美しい微笑みをじっと見つめ口を開いた。
「……そういやユピテルっていつから女装し始めたの?」
粉塵爆発が起きた。
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