惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

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女神の慈悲は試練と共に9

「ディ、ディアナちゃんを老婆に……?なんでぇ?」


 気でも狂ったのかとでもいいたげな表情でユピテルは私に尋ねる。

 確かに自身の意志で女性になることを選択した彼女には私の願いは特に異常に思えるのかもしれない。

 というか流石に言葉が足りなさすぎるか。私は補足するように言葉を紡いだ。


「これからずっと老婆の姿でいたい訳では無くて、我儘ですが短時間だけ数十歳程老けさせて頂きたいのです」

「だから、なんでよぉ?!」

「それは……」


 次の言葉を発しようとした所肩を強く掴まれる。アレス王子は少しだけきつい眼差しでこちらを見ていた。

 驚愕が既にない静かなその瞳に心を見透かされていると思ってしまう。


「ディアナさん、貴女は……俺を試したいんですね?」


 彼に真剣な声で問いかけられ私は頷くしかなかった。

 そうだ、アレス王子の言うとおりだ。

 彼が老いた私を見て失望しないかを試したかった。

 変化するとしたら十年後、二十年後の姿の方が現実的でいいかもしれない。

 彼がまだ男として十分に魅力的な年頃に私はもう……。

 絶対に訪れるその事実をアレス王子に予め知っていて欲しかった。 

 そこで想いが揺らぐなら、炎の精霊神の罰を回避する為に私たちにはこれ以上何も起きない方が良い。

 
「そうよ、私は年老いてから捨てられるのが怖いの。もう二度とごめんよ」

「俺は絶対にそんなことしないって……今の俺が言っても信用できない?」

「人の心は変わるわ」

「変わった時には俺を殺していい」

「そんなことをするぐらいなら死んだ方がマシよ!だから……」


 自分を挟んで口論をする私達が怖かったのかロバートが盛大に泣き出す。

 するとふわりとその体が浮かんで今度はユピテルの腕の中に収まった。


「はいはい、不毛な水掛け論はそこまでぇ♠」


 表情をすっかり整えた雷女神は教師のような態度で私たちを窘めた。


「ディアナちゃんが怖いのはぁ、捨てられることがじゃないわよねぇ?」


 ユピテルに言われ私は思わず目を逸らす。

 その態度自体が答えを言っているも同然だと己でもわかっていた。


「そこの坊やが老いた恋人自分を捨てることで、炎の精霊に見捨てられるのをひたすら恐れ続けている……愛ねぇ♡」

「俺はディアナさんを見捨てたりしない!!」

「それを無垢に信じられるのは恋に傷ついたことのないモノだけなのよねぇ。貴男みたいにね、純粋で青臭い坊や♠」


 だから信じる為には確かめる必要があるの。


「……私に愛を試されなさい。炎の末裔よ」


 そうユピテルは言うと、私に向かって指先から雷矢を放った。


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