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女神の慈悲は試練と共に12

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「「謝って頂戴」」

「変な誤解をして申し訳ありませんでした」


 二人の美女から同時に言われて私は素直に頭を下げた。


「全くよぉ!」


 ぷんぷんという擬音が似合いそうな様子でユピテルが怒る。

 私の心を読んだ彼女が勘違いに憤慨し、即マリアにそのことを伝えた。

 その結果、私は今二人に説教を受けているという訳だ。

 ユピテルが千年前から恋慕していた相手はマリアの前世ではなかった。

 ならば、二人はいったいどういった関係なのだろう。

 今だってユピテルは私の勘違いを真っ先にマリアに伝えていたし、恋愛が絡まなくても何かの縁はあるのではないだろうか。

 懲りずにそんなことを考えている私にユピテルは困ったような顔をして首を傾げた。


「……ディアナちゃんの心が読めるのって、思ったよりも複雑な気分になるわね。意外と、天然と言うか……残念と言うか」

「何よユピテル?ディアナにギャップ萎えしたの?」


 マリアの揶揄いに雷女神は静かに首を振った。


「違うわ、ただ……似ているなあって。こちらがびっくりするような結論にいたってしまうところとか」


 懐かしくて、苦しくなってしまう。そうユピテルは切なげに笑った。


「あの方の心も読むことが出来ていれば、こんな風に驚いて皆で叱るだけで済んだのかもしれないわねぇ」

「あの方……?」


 気になって、私はとうとう口に出して訊いてしまう。

 こちらをちらりと見たマリアの瞳はやはり別人のように私には思えた。

 ユピテルは私の質問対し、自らの胸に手を当てて思い起こすように回答する。


「あの方とは、千年前のわたくしのあるじ。わたくし以外に多くの精霊を従えていた偉大な方。

 強くて真面目で優しくて鈍感で……孤独で思いつめやすい人だった」


 そのことにわたくしたちが気付いたのは、喪った後の事よ。

 そう微笑むユピテルの儚さに私は何故か無性に謝りたくなった。


「謝って欲しいわけではないの」 


 わたくしはあなたに幸せになって欲しいのよ。

 そう雷女神は、私の手を取って祈るように自らの額に当てた。
 
 今度もあなたに加護を授けさせて頂戴。そう震えるような声で言われ、私は静かに頷いたのだった。

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