惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

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夜が明ければ新しい朝が始まる2

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 王妃の私室で軽い食事を摂ってから座って体を休めていると、入浴の準備が出来たと侍女が呼びに来た。

 当然マリアに順番を譲ったが「残り湯に入るのも一緒に入るのも同じことでしょ」と連れていかれた。

 その二つは大分違うと思うが、マリアの強引さには慣れている。

 それに王妃専用の浴場はかなり大きめの作りになっていることは前から知っていたから抵抗は止した。

 成人女性なら五人ぐらいが体をぶつけずに入れる浴槽に張られた湯は淡い紅色に色づいていて湯気からは薔薇の香りがする。

 体を軽く洗ってすぐに湯に浸かったマリアは「傷にしみて痛い!」と元気に叫んだ。


「治療して貰えば良かったのに」 

「だってただの掠り傷と打撲よ、人呼んで治してもらってとか、面倒じゃない」


 沢山食べて沢山眠れば数日で治るわよ。マリアが豪快に言い切る。

 昔の様にはいかないわよ。私が窘めると耳を塞いで聞こえない振りをした。

 マリアは自分の美に自信があり身を飾ることも好きだが、こういう所が昔から大雑把だ。

 だから強引にでも体の手入れをして貰える王妃の地位にいるのは良い事なのかもしれない。

 私も湯を汚さない程度に全身を洗うと、マリアと向かい合うようにして大きな湯船に入った。

 こうやって彼女と一緒に入浴するのは初めてではない。

 王妃特権で珍しい入浴剤が少量手に入った時などに呼びつけられてこうやって恩恵に与る時があった。

 馨しいが強すぎない花の匂いが心地よい。そこまで希少な物でなければ自宅でも使いたいぐらいだ。
 

「あ」


 私がそんなことを考えているとマリアが何かを思いついたように小さく叫ぶ。

 その両手で浴槽から湯を掬うと彼女は目を閉じて呪文を唱えた。


「心優しきネレイスよ、癒しの水を与え給え」


 その言葉が終わった瞬間、マリアの掌に満ちた湯が光り輝く。

 静かに目を開けた彼女はゆっくりと両手を離しそれを湯船へと戻した。

 マリアが裸体であることも関係してその一連の動作はまるで聖なる儀式のようだった。

 私は神聖な行為に立ち会ったようなときめきを僅かに覚え、彼女の次の動きを見守る。

 マリアは肩まで一気に湯に浸かると深く息を吐いた。


「ふお~めっちゃ治癒キュアされる~サイコ~~。前世の記憶取り戻して一番良かったの確実にこれ~~」


 落差に耐えきれず湯船に頭から沈む。

 その後湯から顔を出した私にマリアは呆れたように告げた。


「別に全身浸からなくても、普通に効果はあるわよ?」

「そういう理由ではないわ」


 髪の毛から大量の水を零しながら私は言う。

 その後手渡された布で顔を拭った。


「ありがとう」

『ドウイタシマシテ』


 マリアの声ではない、ガラスのベルを鳴らしたような可憐な声で返事をされる。

 不審に思いながら目を見開くと、湯と同色をした透き通った少女が私にむかってニコニコと微笑みかけていた。

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