惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

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夜が明ければ新しい朝が始まる11

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 自分の前世が今と逆だという事はユピテルの発言や態度などから何となく確信していた。

 ディアナの性別が男性のままだったら、もしかしたら彼女との関係も変わっていたかもしれない。

 いや、奔放に思わせて意外と繊細なユピテルのことだ。慕っていた本人でなければやっぱり無理なのかもしれない。

 本当に一途な女性だった。改めて消えた雷女神を想う。

 破壊による再生の神。暴虐の貴婦人。もっとも神らしい神。それが知識としてのユピテルだった。

 書物とは当てにならないものだと同時に感じたが、案外女神の意思でそのような印象が流布されていたのかもしれなかった。

 彼女が元は男の精霊だと書かれている資料が見つからなかったのが関係しているのかもしれない。

 当たり前だが現在まで残っている伝承が全部事実であるとは限らないし、残っているものだけが全てという訳ではない。

 現にマリアの前世である英雄マルスの情報については御伽噺になりつつあるとはいえ容易に手に入るのに、ディアナの前世については謎に包まれたままだ。

 上位精霊たちに箝口令が敷かれているようだが、それは人界にも有効なのだろうか。

 それともマルスと違い大した功績を残さなかった?

 もしくは……後世に存在を伝えてはいけないような人物だったのだろうか。

 恐らくマルスの記憶をそのまま引き継いだらしいマリアに尋ねればどんな人物だったかはわかる筈だ。

 けれどそれをすれば彼女にペナルティが下るだろう。

 それでもディアナが頼めば知恵を絞ってでも伝えてくれるかもしれないが、親友を痛めつけてまで聞き出そうとは思わなかった。

 別に、前世なんて知らなくても全く構わないのだ。現に今まで三十七年生きていて困ったことなど一度もなかった。

 いや、そうでもない。ディアナが長年不妊に悩まされていたのはそもそも前世の因縁が原因なのだから。知らなかっただけなのだ。

 迷惑な話だと思う。もしかしたらシシリーやロバートも自分の巻き添えを食ったのかと思うと非常に嫌な気分になる。

 ただもし二人が純然たる被害者ならユピテルの対応もあそこまで苛烈なものではなかったに違いない。

 そう考えることで、もやもやとした気分から逃げている。けれどそこから逃げても又次の鬱屈が迫ってくる。

 前世の存在を知ったことで、前世の記憶が蘇るような期待と不安がずっとしている。

 ちょっとしたことで既視感に惑わされ悩まされている。

 少女の姿のアレス王子への己が抱く強い好感に急に不安になった。


「ディアナさん?」 

「アレス王子、貴男、いえ貴女は……」


 もしかしたら前世の私とも深い繋がりがあるのかもしれない。

 それは運命的なものとして喜ばしいことなのだろうか、それとも仕組まれたようで不快なことなのだろうか。

 判断に迷い結局その疑いを告げることは出来なかった。 

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