惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

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夜が明ければ新しい朝が始まる12


 アレス王子が私を慕うのは前世からの因縁が原因ではないだろうか。

 そう考え始めた結果、彼を受け入れると決めた心に迷いが生じる。

 アレス王子を突き動かしている恋心は、彼自身の想いではないかもしれない。

 彼が親子ほどに年の離れた私に一途に焦がれ続けたのは。

 もしかしたら、前世の繋がりがそうさせているのかもしれないのだ。 
 
 そうならばそれはとても虚しくて、可哀そうなことだと思った。

 
「……もしかして、何か悩んでいませんか?」

「え……?」


 そんなことを考えていたら、本人から声を掛けられる。

 目の前の少女に確かにアレス王子の面影はあった。

 若いが強い眼差しをしている。いや、若いからこそ迷いがなく真っすぐなのか。

 なら己がすぐに疑って不安になるのは重ねた年齢のせいなのだろうか。

 同じ年の親友の存在が、即座にその考えを打ち消す。

 彼女なら、マリアならこの迷いをどう解消するのだろうか。


「ディアナさん」 


 名を呼ばれ、肩を軽く掴まれる。拗ねた少女の顔が近くにあった。

 彼の母親のことを頭に浮かべていたと気づかれたのかもしれない。

 はなしてください、そう言われて内心で首を傾げる。

 今自分を拘束しているのは寧ろアレス王子の方だというのに。


「俺たちのこと、考えていたのでしょう? 俺たちのことなら俺にも話してください」

「アレス王子……」

「流石にこの状況で他の人間のこと考えてたら怒りますけど」


 違いますよね?

 そう生真面目な顔で言われ慌てて首を縦に振る。

 人間のことは考えていないが雷女神のことは考えていたと口に出すことはしない。

 それぐらいの分別はディアナにもある。それもある意味年の功という奴かもしれない。


「ディアナさんが色々なことで悩んでいるのはわかります」


 ずっと見ていましたから。そうアレス王子は侍女の姿で告げる。

 確かにここ最近、城内でディアナに起こったことなら彼もある程度把握している筈だ。

 文字通り見ていたのだから。

 そして実際ディアナは彼の指摘通り悩んでいる。


「俺たちに関わることなら、俺にもそれを話してください」


 関係なくても悩んでいるなら打ち明けて欲しい。

 そう誠実な眼差しで言われて心が揺れる。

 この真っすぐな瞳を手放したくないと思ってしまう。

 けれど、それを理由に黙っていればそれこそが結局不実になるのだろう。

 ディアナはアレス王子に自分の考えを打ち明けることを決めた。 
 
 彼が己に惹かれているのは、前世が理由しているのかもしれないと。

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