惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

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夜が明ければ新しい朝が始まる14

「青少年の性癖を歪めて食べるご飯は美味しい?」

「料理は美味しいけれど……歪めてはいないわよ」

「自分に惚れてる男に美少女になった姿が好みって言ったのどこの誰でしたっけ?」

「それはその……ねぇ?」

「いやこれに同意を求められて共感できたら凄いわよ」


 私仮にもあの子の母親なんですけど?

 そうかなり本気で怒られて私は思わず視線を横に流した。

 今いる場所はマリアの私室で、わざわざ持ち込まれたらしい大きなテーブルには料理が並んでいる。

 一品ずつではなく纏めて複数の品が卓上に置かれ幾つかは湯気を立てている。給仕もいない。

 女王の晩餐としてはかなり型破りだ。貴族の食事としても有り得ない。ただ今回が初めてではない。

 この国で一番高貴な立場に座しながら王妃は時々昔を思い出したような振る舞いをする。それに巻き込まれるのは慣れた。

 マリアは平民ならこれが当たり前だと言う。こっちの方が楽だとも。

 給仕なしの食事が楽という感覚は生憎わからないが、ただ人がいない方が都合がいいのは確かだった。

 いや逆だ、他人に聞かれては都合が悪いのだ。  
 
 そしてここにはアレス王子もいない。


「食事に呼びに行ったら、アレス王子が真っ青な顔していて吃驚したわよ」

「それは本当に申し訳ないと……思っているわ」

「性癖がおかしい」

「繰り返し言わないで頂戴……」


 アレス王子が魔法道具を使って変身した少女の姿。

 それは何故か無性に私の心を惹きつけるものだった。恐らくそれは前世が起因しているものだろう。

 私はそれを彼に話した。前世からの因縁についてはアレス王子は笑って受け入れてくれた。ロマンチックだと。

 それに安堵をして、口を滑らせてしまったというのはあるかもしれない。
 
 けれどアレス王子は私の打ち明け話を聞いて、酷く悩んだ様子だった。

 拒むことも受け入れることもせず、苦悩していた。

 その場に自ら私を食事に誘いに来たマリアが訪れ、アレス王子は自室に戻ることを命じられたのだ。

 事情を聴き魔法道具を取り上げてきたと疲れた表情で戻ったマリアに首根っこを掴まれるように彼女の私室へ連れ込まれた。

 色々言いたいことはあるが食事が冷めてしまうのは嫌だと言われ気まずい空気の中で晩餐が始まった。


「性転換いちゃつきなんて高度なプレイ要求は、まず男の姿の時にキスして抱きしめて愛を囁いてからにしてくれますぅ?」


 てきぱきと食事をしながらもマリアは饒舌だ。

 色々順番すっ飛ばし過ぎなのよ。そう付け足すように言われて、返答できずにワインを口に運ぶ。

 アレス王子が悲しそうな表情をしたのはそれが原因か。母親であるマリアの聡さにディアナは内心感服した。

 いやこれは彼女が鋭いというよりも己が鈍感過ぎるのか。

 アレス王子に対し、感じたことを即話してしまったのは年長者として誠実な振舞いではなかった。

 彼からの好意を信じ切ったがゆえに、自分は傲慢に重しをかけてしまったのではないだろうか。

 前世からの繋がりを受け入れることと、性別の変化を望まれることはやはり違うだろう。

 そもそも自分の発言を彼が受け入れたとして、私はどうして欲しかったのか。  

 女性の姿の貴方が好きだ、だから女性の姿で自分と恋仲になって欲しい?

 成程、マリアに言われた通り倒錯している。そしてそれは恐らく『ディアナ』の本意でもないのだ。


「……男としてのアレス王子が嫌いなわけで決してはないのよ」

「そ、う、い、う煮え切らない回答しかできない相手に性転換させようとしないでくれますぅ?!」

「うう……そんなつもりはなかったけれど、確かにそう受け取られても仕方がないことだったわ」

「大体アレスが女になったとして、それを愛するのは本当にアンタなの?」


 前世に振り回され過ぎると、今の自分を潰すことになるわよ。

 そう冷静に言い放つマリアに私は曖昧に頷いた。

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