惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

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夜が明ければ新しい朝が始まる16

 目が覚めた。見知らぬ天井が見えた。

 いや目を凝らしてみると見覚えがある。

 これはマリアの寝台の真上だ。つまり私は今王妃の寝床に仰向けになっているのだ。

 口の中が若干粘ついている。嫌な予感がして頬に触れた。よかった。恐らく化粧は落として貰えている。

 王妃の寝床に相応しいサイズのベッドから上半身を起こす。服は寝苦しくない様にか首の辺りが緩められていた。

 それを己の指で正しながら傍らを見る。部屋の主が豪快に寝息を立てていた。ワインを瓶ごとベッドに持ち込むなと言いたい。

 酒に飲まれて寝落ちるとは、いい年をして己は何をやっているのだろうか。

 恐らく私の化粧を落としここまで運んでくれたのはマリアだろう。

 長い髪の毛は乱れ過ぎないようにと軽く結われている。こういうところに気が付くのが彼女だ。

 だがこちらが完全に酩酊しきるまでしつこくワインを勧め続けたのも王妃様ご自身だった。

 己を律せず飲んでしまった己も己だが。私は自己嫌悪に陥る。
 
 マリアが抱えている瓶は幸か不幸か空だったのでシーツを汚さずに済んだようだ。彼女からそれを取り上げ平らな場所に置いた。

 カーテンの向こうから奇妙な明るさを感じた。朝の四時ぐらいだろうか。早い時間に空は明るくなるのはもうすぐ夏だからだろうか。 

 眠気はない。自分にかけられていた毛布を持ち主の王妃にかける。マリアの寝顔に付き合ってきた年齢を感じた。

 老いたとは思わないが最早少女ではない。そう感じたのは目の下の隈のせいかもしれない。

 こうやって気を抜いて眠っていなければ気づきもしなかった。これの原因は、恐らく私だ。

 さっきまで夢を見ていた。恐らく前世に関するものだった気がする。瞼を開ける直前までは鮮やかに覚えていたのに、理不尽な位に今は漠然としている。

 こういったもどかしさは前世の記憶を完璧に受け継いだマリアなら感じることはないのだろう。

 自分は前世ではかなり問題のある男性だったようだ。しかも身勝手とか我儘とか傲慢とか、恐らくそんなシンプルなものではなく。

 夢の中で彼を責めていた恐らく恋人か妻であろう女性に心から同情した。同情していい立場かはわからない。

 ただ己の前世について具体的なことはほぼ判らないに等しかった。せめて名前だけでも知りたかったのだが。

 離れた卓上に水差しがあるのを見つける。途端に喉の渇きを覚えた。

 私はふらりと立ち上がる。酒がまだ残っているのか若干よろめきながら目的の場所に到達した。

 水差しと、幸いなことに酒に汚れていないグラスがある。もしかしたら侍女が用意したものだろうか。

 これで渇きを癒せる。安堵の息を吐いた後、テーブルに置かれている別のものに気が付いた。指輪、だ。


「これは……マリアが言っていた変身できる魔道具?」


 大層な物なのに扱いが無防備すぎる。私は指輪に手を伸ばした。

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