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第一部
46.
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ズカズカとレオの部屋に踏み入る。頭の中に「ガサ入れ」という単語が浮かんだ。
先程立ち寄らせて貰ったロンの部屋と比べると入り口の時点で違う。
広いし、豪華そうな調度品が飾ってある。
長子とそれ以外の子供で差を付け過ぎな気もするが、世襲制のこの世界ではそれが当たり前なのかもしれない。
それにロンの部屋だって物は少ないと感じたが粗末という訳では無かった。
(でも比較対象がエリカの居た屋根裏部屋だしね……)
前世の子供部屋とは何もかも違い過ぎて比べる気にはならない。
電化製品皆無の代わりにベッドや家具などはロンの物の方が豪華だなぐらいだ。
「やっぱりハンカチじゃ捕まえるのは無理だったわね~」
そう言いながら私は先程室内に投げ込んだハンカチをサッと拾った。
これは異母姉のローズが昔「捨てておきなさい」とエリカに投げつけたもので所々穴が開いて良く見ると染みもある。
けれどエリカにはシルクのハンカチなんて贅沢品なので大切に取っておいたのだ。
黒い上に艶光りしてるので丸めて投げると例の虫に見えないことも無い。
漫画の中でたまに登場していたのでこの世界にもアレがいるのを私は知っていた。
(でも少しでも冷静ならすぐ虫じゃないって気づく程度なのに)
そう思いながらハンカチをしまおうとしてギョッとする。
床に落ちたばかりなのに埃まみれだからだ。
ハンカチがシルクの黒なので逆に汚れが目立つ。
(よく見たら、部屋の隅に埃が固まっているわね)
箒などで目立つところだけ雑に掃いておしまいにするとこうなりやすい。
前世の実体験で私は知っている。
自宅なら幾らでも雑に掃除すればいいが、ここは公爵邸で掃除しているのは雇われた使用人の筈だ。
私は眉を顰めた。
もしオルソン伯爵邸でエリカ(私)がこのような掃除をしたと思われたら、再清掃を命じられた上食事抜きだろう。
継母や異母姉が知ったなら平手打ちもプラスされる。
私はハンカチの汚れた面を中にして畳みポケットに戻した。
そして視線を別方向に向ける。
割れた皿と床に散らばるクッキー。視線を上げると口に食べかすをつけたメイドが三人。
(こういうのってセラ……亜種っていうのかしら)
前世で息子たちがプレイしていたゲームの用語を浮かべる。類似、色違いそんな感じだ。
私が今日解雇したばかりの食い意地メイドセラ。あんな娘が二人も三人もいたら困ると思ったこともあった。
(セラ本人含めれば四人じゃない……!)
しかもセラは公爵夫人付きの侍女、そして目の前の三人は公爵家長男専属メイドだ。
掃除専門メイドのアイリが今のところ一番礼儀正しい気がする。何故だろう。
(食い意地張ってる使用人ばかりだからエリカのクッキーで誰も彼も懐柔できたのかしら)
じろじろと見ていると三人組の内の一人が声を張り上げた。
「か、勝手に入って来ないでください!!」
「……は?」
流石にその台詞は予想出来なかった。だってここは彼女たちの家じゃないのだ。
アベニウス公爵邸の一室で私は公爵夫人だ。
本当は許可なんて取らず、虫が入り込んだなんて嘘も吐かず問答無用で入っても良かった。
こちらに突然訪れたという負い目と、レオ付きメイドたちはどんな人間なのだろうという観察心が無ければ。
「こ、ここはレオ坊ちゃまのお部屋ですよ!」
「ええ、アベニウス公爵令息のお部屋ね。そして私はアベニウス公爵夫人。何か問題が?」
「も、問題がって……貴族が先触れも無しに!」
「そうね、だから出直すと何回も伝えたのだけれど待っていろという答えしか返ってこなかったのよ。そのように指示をしたのは貴方?」
私は先程から騒いでいるメイドの目を凝視する。よく見ると全員若い。十代後半ぐらいか。
この屋敷は中年以上の使用人があまりいないなと思った。マーサだって三十代ぐらいだろう。
漫画に出て来たメイド長もそれぐらいだった。
伯爵邸には四十代や五十代の年齢のメイドや使用人もいたが、サンプルが少なすぎてどちらが普通なのかはわからない。
(公爵邸はメイドの定着率が悪いのかもしれないわね)
それだと頼りになるメイドが余り育たなさそうだと思う。だからかと嫌な納得をした。
「だったら丁度良いわ、何故私を長々部屋の前で待たせたかったのか教えなさい。納得できる理由をね」
「わ、私じゃないです!」
「じゃあ貴方?」
「ち、違います!侍女長様が!」
「……侍女長?」
原作には出てこない単語だ。アベニウス公爵邸でメイドたちを取りまとめているのはメイド長の筈だ。
それとは別に侍女を取りまとめているものがいるのだろうか。その人物の顔も名前もわからなかった。
「じゃあその侍女長とやらに話を聞くわ。貴方たちはその間部屋に入った虫を隅々まで探してついでに部屋でも掃除しておきなさい」
「えっ、掃除は私たちの仕事じゃ……」
「貴方たちが食い散らかしたクッキーが床を汚しているの……わからない?」
「わっ、わかりました……」
「それで侍女長はどこ?この部屋の中にいるのかしら?」
「い、いますけどぉ……」
今、入浴中です。そうメイドに言われ私は開いた口が塞がらなかった。
先程立ち寄らせて貰ったロンの部屋と比べると入り口の時点で違う。
広いし、豪華そうな調度品が飾ってある。
長子とそれ以外の子供で差を付け過ぎな気もするが、世襲制のこの世界ではそれが当たり前なのかもしれない。
それにロンの部屋だって物は少ないと感じたが粗末という訳では無かった。
(でも比較対象がエリカの居た屋根裏部屋だしね……)
前世の子供部屋とは何もかも違い過ぎて比べる気にはならない。
電化製品皆無の代わりにベッドや家具などはロンの物の方が豪華だなぐらいだ。
「やっぱりハンカチじゃ捕まえるのは無理だったわね~」
そう言いながら私は先程室内に投げ込んだハンカチをサッと拾った。
これは異母姉のローズが昔「捨てておきなさい」とエリカに投げつけたもので所々穴が開いて良く見ると染みもある。
けれどエリカにはシルクのハンカチなんて贅沢品なので大切に取っておいたのだ。
黒い上に艶光りしてるので丸めて投げると例の虫に見えないことも無い。
漫画の中でたまに登場していたのでこの世界にもアレがいるのを私は知っていた。
(でも少しでも冷静ならすぐ虫じゃないって気づく程度なのに)
そう思いながらハンカチをしまおうとしてギョッとする。
床に落ちたばかりなのに埃まみれだからだ。
ハンカチがシルクの黒なので逆に汚れが目立つ。
(よく見たら、部屋の隅に埃が固まっているわね)
箒などで目立つところだけ雑に掃いておしまいにするとこうなりやすい。
前世の実体験で私は知っている。
自宅なら幾らでも雑に掃除すればいいが、ここは公爵邸で掃除しているのは雇われた使用人の筈だ。
私は眉を顰めた。
もしオルソン伯爵邸でエリカ(私)がこのような掃除をしたと思われたら、再清掃を命じられた上食事抜きだろう。
継母や異母姉が知ったなら平手打ちもプラスされる。
私はハンカチの汚れた面を中にして畳みポケットに戻した。
そして視線を別方向に向ける。
割れた皿と床に散らばるクッキー。視線を上げると口に食べかすをつけたメイドが三人。
(こういうのってセラ……亜種っていうのかしら)
前世で息子たちがプレイしていたゲームの用語を浮かべる。類似、色違いそんな感じだ。
私が今日解雇したばかりの食い意地メイドセラ。あんな娘が二人も三人もいたら困ると思ったこともあった。
(セラ本人含めれば四人じゃない……!)
しかもセラは公爵夫人付きの侍女、そして目の前の三人は公爵家長男専属メイドだ。
掃除専門メイドのアイリが今のところ一番礼儀正しい気がする。何故だろう。
(食い意地張ってる使用人ばかりだからエリカのクッキーで誰も彼も懐柔できたのかしら)
じろじろと見ていると三人組の内の一人が声を張り上げた。
「か、勝手に入って来ないでください!!」
「……は?」
流石にその台詞は予想出来なかった。だってここは彼女たちの家じゃないのだ。
アベニウス公爵邸の一室で私は公爵夫人だ。
本当は許可なんて取らず、虫が入り込んだなんて嘘も吐かず問答無用で入っても良かった。
こちらに突然訪れたという負い目と、レオ付きメイドたちはどんな人間なのだろうという観察心が無ければ。
「こ、ここはレオ坊ちゃまのお部屋ですよ!」
「ええ、アベニウス公爵令息のお部屋ね。そして私はアベニウス公爵夫人。何か問題が?」
「も、問題がって……貴族が先触れも無しに!」
「そうね、だから出直すと何回も伝えたのだけれど待っていろという答えしか返ってこなかったのよ。そのように指示をしたのは貴方?」
私は先程から騒いでいるメイドの目を凝視する。よく見ると全員若い。十代後半ぐらいか。
この屋敷は中年以上の使用人があまりいないなと思った。マーサだって三十代ぐらいだろう。
漫画に出て来たメイド長もそれぐらいだった。
伯爵邸には四十代や五十代の年齢のメイドや使用人もいたが、サンプルが少なすぎてどちらが普通なのかはわからない。
(公爵邸はメイドの定着率が悪いのかもしれないわね)
それだと頼りになるメイドが余り育たなさそうだと思う。だからかと嫌な納得をした。
「だったら丁度良いわ、何故私を長々部屋の前で待たせたかったのか教えなさい。納得できる理由をね」
「わ、私じゃないです!」
「じゃあ貴方?」
「ち、違います!侍女長様が!」
「……侍女長?」
原作には出てこない単語だ。アベニウス公爵邸でメイドたちを取りまとめているのはメイド長の筈だ。
それとは別に侍女を取りまとめているものがいるのだろうか。その人物の顔も名前もわからなかった。
「じゃあその侍女長とやらに話を聞くわ。貴方たちはその間部屋に入った虫を隅々まで探してついでに部屋でも掃除しておきなさい」
「えっ、掃除は私たちの仕事じゃ……」
「貴方たちが食い散らかしたクッキーが床を汚しているの……わからない?」
「わっ、わかりました……」
「それで侍女長はどこ?この部屋の中にいるのかしら?」
「い、いますけどぉ……」
今、入浴中です。そうメイドに言われ私は開いた口が塞がらなかった。
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