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第一部
73.
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ロンの子供部屋に招かれる。
マーサの後をついていくと窓際に案内された。踏み台があるのはロン用だろうか。
彼女がカーテンを静かに開ける。
「何か見せたいものがあるの?」
私はそう言いながら視線を窓の向こうに向けた。
しかし人気のない庭に大きな木が生えているだけだ。
「木の所に兄様がいるでしょ」
ロンに後ろから声をかけられる。
木の根元を注視すると確かにレオが体育座りをしていた。
俯いている彼の近くに使用人は居ないようだ。
「確かにレオ君がいるわね」
「一時間ぐらい前からずっとああしているから、僕気になって……でも僕が行っても怒られるだけだし」
視線を移すとロンは申し訳なさそうな顔をしていた。
彼らは仲の良い兄弟では無い。レオはロンに対して攻撃的な態度を取っていた。
気軽に近づけなくても仕方がない。
「ここから様子を見ていると、偶に歩いたりしてらっしゃるので御具合が悪い訳ではないと思いますが……」
「わかったわ、私が今からレオ君に話を聞いてくる」
ロンとマーサの言いたいことはわかる。
体調不良では無いようだけれど一人で長く落ち込んでいるから心配という事だ。
私が会いに行くというと二人とも目に見えて安堵した。
「レオ兄様の為にもカーヴェルさんが早く元気になるといいね」
善良な笑顔でロンが言う。
彼は兄がカーヴェルの体調不良を心配して心を痛めているだけと思っている。
(私はそれだけではないと思っているけれど)
ロンとマーサに笑顔で別れを告げ私はレオのいる場所へと急いだ。
屋敷に囲まれるような形の庭は空が薄曇りなこともあってどこか空気が暗い。
大木以外に目立った物が無く、子供が一人で遊ぶのには適さない気がした。
適度に広い為兄弟の仲が良かったら二人でボール遊びでも何でも出来そうではあるけれど。
私は木の根元に腰を下ろし膝に顔をうずめている子供を見つけた。
こちらの気配に気づかないのかそれとも無視しているのかレオは顔を上げない。
「隣り、座るわよ」
私はそう言ってハンカチを敷くとレオの横に腰を下ろした。
大木が陰を作って少し肌寒い。夏ならば涼しくて過ごしやすいのかもしれない。
見上げると窓の向こうでロンが手を振っていた。私も小さく手を振り返す。
彼は嬉しそうな笑顔を浮かべていたがマーサに連れられて窓から離された。
カーテンを閉める際に礼をするマーサに私も軽く礼を返す。
ロンは侍女が一人だけだが、ああやってきちんと育ててくれる人が担当している。
もしロンが落ち込んで人気のない場所で膝を抱えたりしていてもマーサが迎えに来るのだろう。
今私の横にいるレオとは違って。
だからレオはカーヴェルに強く執着するのだ。
側に置く方法を選ばない程に。
「カーヴェルが目を覚まさないのは過労が理由じゃないと教えて貰ったわ」
私は独り言のように言う。レオの肩がびくりと震えた。
しかし彼は顔を上げない。いつものように噛みついても来ない。
「原因がわからないからレイン先生にも治せない、このまま眠り続けていたら命だって危ないかもしれない」
私は淡々と口にする。全部嘘だ。
こちらを見ないまま肩を震わせているレオは今恐怖に怯えて泣いているかもしれない。
でも今口にした嘘は有り得たかもしれない未来の一つだ。
「カーヴェルが居なくなるのはこの屋敷からだけじゃないかもしれない。それだけ知っていてね」
私はそう告げると立ち上がろうとする。するとドレスの裾を小さな手が掴んできた。
マーサの後をついていくと窓際に案内された。踏み台があるのはロン用だろうか。
彼女がカーテンを静かに開ける。
「何か見せたいものがあるの?」
私はそう言いながら視線を窓の向こうに向けた。
しかし人気のない庭に大きな木が生えているだけだ。
「木の所に兄様がいるでしょ」
ロンに後ろから声をかけられる。
木の根元を注視すると確かにレオが体育座りをしていた。
俯いている彼の近くに使用人は居ないようだ。
「確かにレオ君がいるわね」
「一時間ぐらい前からずっとああしているから、僕気になって……でも僕が行っても怒られるだけだし」
視線を移すとロンは申し訳なさそうな顔をしていた。
彼らは仲の良い兄弟では無い。レオはロンに対して攻撃的な態度を取っていた。
気軽に近づけなくても仕方がない。
「ここから様子を見ていると、偶に歩いたりしてらっしゃるので御具合が悪い訳ではないと思いますが……」
「わかったわ、私が今からレオ君に話を聞いてくる」
ロンとマーサの言いたいことはわかる。
体調不良では無いようだけれど一人で長く落ち込んでいるから心配という事だ。
私が会いに行くというと二人とも目に見えて安堵した。
「レオ兄様の為にもカーヴェルさんが早く元気になるといいね」
善良な笑顔でロンが言う。
彼は兄がカーヴェルの体調不良を心配して心を痛めているだけと思っている。
(私はそれだけではないと思っているけれど)
ロンとマーサに笑顔で別れを告げ私はレオのいる場所へと急いだ。
屋敷に囲まれるような形の庭は空が薄曇りなこともあってどこか空気が暗い。
大木以外に目立った物が無く、子供が一人で遊ぶのには適さない気がした。
適度に広い為兄弟の仲が良かったら二人でボール遊びでも何でも出来そうではあるけれど。
私は木の根元に腰を下ろし膝に顔をうずめている子供を見つけた。
こちらの気配に気づかないのかそれとも無視しているのかレオは顔を上げない。
「隣り、座るわよ」
私はそう言ってハンカチを敷くとレオの横に腰を下ろした。
大木が陰を作って少し肌寒い。夏ならば涼しくて過ごしやすいのかもしれない。
見上げると窓の向こうでロンが手を振っていた。私も小さく手を振り返す。
彼は嬉しそうな笑顔を浮かべていたがマーサに連れられて窓から離された。
カーテンを閉める際に礼をするマーサに私も軽く礼を返す。
ロンは侍女が一人だけだが、ああやってきちんと育ててくれる人が担当している。
もしロンが落ち込んで人気のない場所で膝を抱えたりしていてもマーサが迎えに来るのだろう。
今私の横にいるレオとは違って。
だからレオはカーヴェルに強く執着するのだ。
側に置く方法を選ばない程に。
「カーヴェルが目を覚まさないのは過労が理由じゃないと教えて貰ったわ」
私は独り言のように言う。レオの肩がびくりと震えた。
しかし彼は顔を上げない。いつものように噛みついても来ない。
「原因がわからないからレイン先生にも治せない、このまま眠り続けていたら命だって危ないかもしれない」
私は淡々と口にする。全部嘘だ。
こちらを見ないまま肩を震わせているレオは今恐怖に怯えて泣いているかもしれない。
でも今口にした嘘は有り得たかもしれない未来の一つだ。
「カーヴェルが居なくなるのはこの屋敷からだけじゃないかもしれない。それだけ知っていてね」
私はそう告げると立ち上がろうとする。するとドレスの裾を小さな手が掴んできた。
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