102 / 106
第二部
15.
しおりを挟む
その後ホルガーやレインとも話をしアイリ推薦のメイドを公爵家で雇う事にした。
ただ正式な契約はまだだ。レインの家を退職させて、その足でオルソン伯爵家へ勤めさせる。
当然面談はした。
コリンナという名前の娘はアイリが太鼓判を押した通り気配が薄かった。
気配が薄いというかその場の空気に混じるのが異常に上手いというか。
もし黙って公爵邸で働いていても私は気づかないかもしれない。
気配が薄いだけで質疑応答はまともに出来るし、メイドとしての技能も問題ない。
すぐにオルソン伯爵家が利用している使用人紹介所に私服姿のアイリと共に向かわせる。
案の定住み込みメイドの募集をしていた為コリンナに希望させる。
即日オルソン伯爵家での面接となり見事彼女は採用された。
後から聞いたところによるとメイド経験ありという部分しかろくに確認されなかったらしい。
まるで万年人材不足ののブラック企業のようだと思った。
そうやってスパイをオルソン伯爵家に潜入させている間にオルソン伯爵からの手紙を確認する。
内容は簡単に言えばリタは解雇しローズには反省させるから公爵に告げ口せず穏便に済ませてくれという物だった。
「解雇、出来るのかしらね」
私は一人呟く。
リタを解雇すれば伯爵夫人とリタを紹介した知人の関係が気まずくなる可能性がある。
それを彼女が許すだろうか。又伯爵相手にヒステリーを起こしメイドたちに当たり散らすかもしれない。
それが実行されたかもコリンナに確認すればいい。
私はオルソン伯爵にケビンを怒らせたくないなら面倒ごとにアベニウス公爵家を巻き込むなと返信した。
期待はそれ程していない。昔からずっと自分の妻に頭が上がらない男だった。
入り婿という訳でもないので立場の弱さが不思議だったが、どうせ婚前にも別の女に手を出すなどしていたのだろう。
こうして実家関連についてはひとまず手配を終えた。
次はロンの願いである買い物関連だ。
「画材商が来るのは今日の午後で合ってるわよね、カーヴェル」
「はい、応接室を抑えております」
私は若き家令に確認する。彼は手帳を取り出すことも無く答えた。
そうすると後二十分程だろうか。
アベニウス公爵家が利用している画材商にまず相談しようということになり、訪問を手配した。
店舗を構えているとは言え公爵夫人と子供たちが前置き無しで買い物に行くのもどうかと思ったのだ。
なので買い物可能か含め話をしたい旨を伝えると公爵邸に赴くと言われたのでこうやって待っている。
今回は子供たちは一緒ではない。
ただ事前にロンからどういう物を買いたいかは聞き取り済みだ。
私はそのメモを見ながら思う。
(これをそのまま発注できたら一番楽なのだけれど……)
でもそれは出来ない。ロンの買い物をしたいという願いを叶えると約束したのだから。
なのでこうやって画商の到着を待つ。しかし中々来ない。
結局彼らが公爵邸の呼び鈴を鳴らしたのは約束した時間を二十分程過ぎてからだった。
「申し訳御座いません奥様、いつもの道が事故で使えなくなっておりまして……」
そう身なりの良い中年男性が私に対して頭を下げる。
成程、理由は分かった。それが原因なら彼らに非は無い。
しかし画商はへらへらと笑っていた。
カーヴェルにこの部屋に通され私の顔を見るまでは緊張していたというのに。
まさかこちらを十七歳の小娘だと思って見縊っているのだろうか。
確かに彼と私には親子程の年齢差があるが実際親子な訳ではない。
「……笑いながらする謝罪って何の意味があるのかしら?」
私は静かに告げる。途端中年男の笑顔が固まるのが分かった。
ただ正式な契約はまだだ。レインの家を退職させて、その足でオルソン伯爵家へ勤めさせる。
当然面談はした。
コリンナという名前の娘はアイリが太鼓判を押した通り気配が薄かった。
気配が薄いというかその場の空気に混じるのが異常に上手いというか。
もし黙って公爵邸で働いていても私は気づかないかもしれない。
気配が薄いだけで質疑応答はまともに出来るし、メイドとしての技能も問題ない。
すぐにオルソン伯爵家が利用している使用人紹介所に私服姿のアイリと共に向かわせる。
案の定住み込みメイドの募集をしていた為コリンナに希望させる。
即日オルソン伯爵家での面接となり見事彼女は採用された。
後から聞いたところによるとメイド経験ありという部分しかろくに確認されなかったらしい。
まるで万年人材不足ののブラック企業のようだと思った。
そうやってスパイをオルソン伯爵家に潜入させている間にオルソン伯爵からの手紙を確認する。
内容は簡単に言えばリタは解雇しローズには反省させるから公爵に告げ口せず穏便に済ませてくれという物だった。
「解雇、出来るのかしらね」
私は一人呟く。
リタを解雇すれば伯爵夫人とリタを紹介した知人の関係が気まずくなる可能性がある。
それを彼女が許すだろうか。又伯爵相手にヒステリーを起こしメイドたちに当たり散らすかもしれない。
それが実行されたかもコリンナに確認すればいい。
私はオルソン伯爵にケビンを怒らせたくないなら面倒ごとにアベニウス公爵家を巻き込むなと返信した。
期待はそれ程していない。昔からずっと自分の妻に頭が上がらない男だった。
入り婿という訳でもないので立場の弱さが不思議だったが、どうせ婚前にも別の女に手を出すなどしていたのだろう。
こうして実家関連についてはひとまず手配を終えた。
次はロンの願いである買い物関連だ。
「画材商が来るのは今日の午後で合ってるわよね、カーヴェル」
「はい、応接室を抑えております」
私は若き家令に確認する。彼は手帳を取り出すことも無く答えた。
そうすると後二十分程だろうか。
アベニウス公爵家が利用している画材商にまず相談しようということになり、訪問を手配した。
店舗を構えているとは言え公爵夫人と子供たちが前置き無しで買い物に行くのもどうかと思ったのだ。
なので買い物可能か含め話をしたい旨を伝えると公爵邸に赴くと言われたのでこうやって待っている。
今回は子供たちは一緒ではない。
ただ事前にロンからどういう物を買いたいかは聞き取り済みだ。
私はそのメモを見ながら思う。
(これをそのまま発注できたら一番楽なのだけれど……)
でもそれは出来ない。ロンの買い物をしたいという願いを叶えると約束したのだから。
なのでこうやって画商の到着を待つ。しかし中々来ない。
結局彼らが公爵邸の呼び鈴を鳴らしたのは約束した時間を二十分程過ぎてからだった。
「申し訳御座いません奥様、いつもの道が事故で使えなくなっておりまして……」
そう身なりの良い中年男性が私に対して頭を下げる。
成程、理由は分かった。それが原因なら彼らに非は無い。
しかし画商はへらへらと笑っていた。
カーヴェルにこの部屋に通され私の顔を見るまでは緊張していたというのに。
まさかこちらを十七歳の小娘だと思って見縊っているのだろうか。
確かに彼と私には親子程の年齢差があるが実際親子な訳ではない。
「……笑いながらする謝罪って何の意味があるのかしら?」
私は静かに告げる。途端中年男の笑顔が固まるのが分かった。
1,082
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ
みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。
婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。
これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。
愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。
毎日20時30分に投稿
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる