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17・まともな大人を連れてきてください
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シーツごと捕まえられて持ち運ばれてどれ位時間が経っただろう。
私がやっと解放された場所は薄暗い物置のような部屋だった。
机や棚など今は使われていなさそうな家具の数々が置かれている。
そこに私はいきなりシーツごと床に落とされた。
「ニャッ」
なんとか怪我をすることなく着地を決める。もぞもぞと苦労してシーツから抜け出した。
猫の姿なので床に沈んだ埃と距離が近くて嫌だ。
下に隙間がある家具が多いせいで掃除が行き届かないのかかなり埃が溜まっている。
私は解放された視界で誘拐犯の顔を見た。声から予想していた通り女性だ。
美人といえば美人かもしれない。ただ目つきがかなりきつい。二十歳は過ぎていると思う。
見覚えに関しては知っているような、知らないような……。
少なくともベアトリスちゃんの身の回りの世話をするメイドの内の誰かではない。
メイド服の女は腕を組みながら私を見下していた。
「本当、いつ見ても御令嬢が飼うような猫じゃないわね。ちびの上なんかみすぼらしいし」
世間知らずのお嬢様は趣味が悪いこと、そう皮肉気に笑われて思わず毛を逆立て唸った。
ベアトリスちゃんを馬鹿にするのは許さん!
「うるっさいわねえ」
「にょっ!」
靴の爪先で蹴られそうになり反射的に後ろに飛び下がる。
誘拐された当初も思ったが、この女暴力的過ぎない?
ベアトリスちゃんを世間知らずと馬鹿にしていたけれど、こいつはどんなドメスティックな世界で暮らしてきたんだ。
裏切りと略奪と死が満ちたイケF原作準拠の世界の住人か? なら今すぐそっちに戻ってくれ。
「本当、飼い主ぐらい馬鹿素直だったら可愛がってやるのに……まあ、いいわ。あんた、人間の言葉がわかってるんでしょ?」
この化け猫。こう冷たく言われて私は固まる。なぜこの女がそのことを知っているのだ。
私が人語を明確に理解できることを把握しているのは現状ではオーウェンとレックスだけの筈なのに。
もしかして裏庭での会話が聞かれたとか?
焦りながら考え込む私に対しにやにやと笑いながら女は懐から何かを取り出した。
「まさかあのメスガキが拾ってきた猫が、言葉もわかれば字も書ける化け猫だったなんてねぇ?」
そう女は取り出した紙を私に見せてくる。ご丁寧にしゃがみ込んで。
うん、おかげでそれが手紙だという事もわかる。その子供の書いたような字まではっきりと見える。
レックスの奴、代筆させた手紙をよりにもよって敷地内に捨てて帰ったわね。あの駄犬……駄狼!!
私が怒りでぷるぷる震えているのを怯えていると勘違いしたらしくメイド女は楽し気に笑い声をあげた。
いや完璧な下衆悪女しぐさですけど、あなた根本的に勘違いしていますよ。
そんなことを思っていたら先程までの上機嫌が嘘のように、女の顔が不快気に歪んだ。
「ったく、困るのよ。ガキにピアノ五時間弾かせたこととか手紙に書かれたらさあ……」
「に、にゃっ?」
「……あたしが嘘吐いてることがあの女にバレるだろ、このクソ猫がァッ!!」
ズダアン!!床を思いきり足で打ち鳴らして女が吠える。恐怖に私は失禁した。
そして思い出す。この女、ベアトリスちゃんのお母さんのおつきのメイドだ。
ベアトリスのいえの大人たち、ぜんいんおかしい。
あの日のレックスの発言に私は心から同意した。
まともな大人、今すぐ来てくれ。
いやお願いします、本当に来てください。
私がやっと解放された場所は薄暗い物置のような部屋だった。
机や棚など今は使われていなさそうな家具の数々が置かれている。
そこに私はいきなりシーツごと床に落とされた。
「ニャッ」
なんとか怪我をすることなく着地を決める。もぞもぞと苦労してシーツから抜け出した。
猫の姿なので床に沈んだ埃と距離が近くて嫌だ。
下に隙間がある家具が多いせいで掃除が行き届かないのかかなり埃が溜まっている。
私は解放された視界で誘拐犯の顔を見た。声から予想していた通り女性だ。
美人といえば美人かもしれない。ただ目つきがかなりきつい。二十歳は過ぎていると思う。
見覚えに関しては知っているような、知らないような……。
少なくともベアトリスちゃんの身の回りの世話をするメイドの内の誰かではない。
メイド服の女は腕を組みながら私を見下していた。
「本当、いつ見ても御令嬢が飼うような猫じゃないわね。ちびの上なんかみすぼらしいし」
世間知らずのお嬢様は趣味が悪いこと、そう皮肉気に笑われて思わず毛を逆立て唸った。
ベアトリスちゃんを馬鹿にするのは許さん!
「うるっさいわねえ」
「にょっ!」
靴の爪先で蹴られそうになり反射的に後ろに飛び下がる。
誘拐された当初も思ったが、この女暴力的過ぎない?
ベアトリスちゃんを世間知らずと馬鹿にしていたけれど、こいつはどんなドメスティックな世界で暮らしてきたんだ。
裏切りと略奪と死が満ちたイケF原作準拠の世界の住人か? なら今すぐそっちに戻ってくれ。
「本当、飼い主ぐらい馬鹿素直だったら可愛がってやるのに……まあ、いいわ。あんた、人間の言葉がわかってるんでしょ?」
この化け猫。こう冷たく言われて私は固まる。なぜこの女がそのことを知っているのだ。
私が人語を明確に理解できることを把握しているのは現状ではオーウェンとレックスだけの筈なのに。
もしかして裏庭での会話が聞かれたとか?
焦りながら考え込む私に対しにやにやと笑いながら女は懐から何かを取り出した。
「まさかあのメスガキが拾ってきた猫が、言葉もわかれば字も書ける化け猫だったなんてねぇ?」
そう女は取り出した紙を私に見せてくる。ご丁寧にしゃがみ込んで。
うん、おかげでそれが手紙だという事もわかる。その子供の書いたような字まではっきりと見える。
レックスの奴、代筆させた手紙をよりにもよって敷地内に捨てて帰ったわね。あの駄犬……駄狼!!
私が怒りでぷるぷる震えているのを怯えていると勘違いしたらしくメイド女は楽し気に笑い声をあげた。
いや完璧な下衆悪女しぐさですけど、あなた根本的に勘違いしていますよ。
そんなことを思っていたら先程までの上機嫌が嘘のように、女の顔が不快気に歪んだ。
「ったく、困るのよ。ガキにピアノ五時間弾かせたこととか手紙に書かれたらさあ……」
「に、にゃっ?」
「……あたしが嘘吐いてることがあの女にバレるだろ、このクソ猫がァッ!!」
ズダアン!!床を思いきり足で打ち鳴らして女が吠える。恐怖に私は失禁した。
そして思い出す。この女、ベアトリスちゃんのお母さんのおつきのメイドだ。
ベアトリスのいえの大人たち、ぜんいんおかしい。
あの日のレックスの発言に私は心から同意した。
まともな大人、今すぐ来てくれ。
いやお願いします、本当に来てください。
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