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16・警察を呼んでください

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 それはいつもと変わらない晴れた日のことだった。
 
 屋敷の廊下をお散歩していたら突然上からシーツが降ってきた。

 状況を把握できないままシーツに包まれ、誰かに乱暴に持ち上げられた。

 その時点で硬直がとけた私は当然大暴れをしたが相手にダメージを与えることは出来ずそのまま連れ去られてしまった。

 子猫故の非力さが恨めしい。体に伝わる振動で私を抱き上げている相手が移動していることがわかった。

 せめて鳴いて助けを求めようとしたら、数回鳴いたところでシーツ越しに首を絞められた。この時点で確実に危険な相手だとわかる。

 死にたくないので黙ることにしたら「お利口さんね」と厭味ったらしく言われた。女性の声だった。

 いや、誰だよ。

 シーツの白に視界を奪われる直前の光景を思い出す。

 この家で働いているメイドたちが着用しているロングスカートと指定靴が前方に見えた。

 それで端に避けようかと思った瞬間にシーツが飛んできたのだ。

 つまり私を誘拐したのは十中八九この屋敷のメイドだと言っていいだろう。

 もしかしたらメイドに変装した別の人間の可能性もあるが。 

 しかし犯人の目星がついても、誘拐された理由については謎のままだ。

 考えられるとすれば、ベアトリスちゃんの愛猫である私を人質にして身代金をせしめるぐらいだが。

 うん、絶対マクシミリアンはびた一文出さないと思う。

 その場合、交渉決裂で私は犯人に殺されてしまうのだろうか……。

 ゲーム内でも兎や小鳥などの小動物が主に闇オーウェンのせいで結構殺されていたし。

 ただ登場人物もバンバン死んでいるからある意味平等ではあるのだけれど。

 でも前世では飛び降り自殺の下敷きになって死んで、ゲーム世界に転生したと思ったら今度は殺されて死ぬなんて不幸過ぎる。

 誰でもいいから助けて欲しい、私は恐怖にぶるぶる震えながらそう願った。

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