17 / 74
十六話 波乱の学校生活(2)
しおりを挟む
眼鏡の男子生徒もこちらと目が合って驚いた顔をした。彼の顔を近くで見て私は何かひらめくものがあった。
しかしお互い言葉は交わさなかった。器用に私を避けて彼は廊下に出た。
当然のように私に教室内の視線は集中する。アリオス殿下の反応を見守ることにした。
眼鏡の生徒の進行方向など途中からわかっていた。そこから避けることも可能だった。
それをしなかったのはアリオス殿下が取り巻きに逃がすなと指示をしていたのを見たからだ。
義憤にかられたという程でもないが一国の王子の余りにも情けない行為の邪魔をしたくなったのだ。
ついでに校内で彼が婚約者でなくなった私をどう扱うかも興味があった。
「あんたは、アリオス殿下の……」
取り巻きの一人の台詞に私は呆れる。先程から思っていたが貴族の言葉遣いとは思えない。
発言内容も行動も幼稚すぎて高等学院の名が泣くだろう。
しかもその親玉が創立者と同じ王族だというのだから。
だが流石というべきか、殿下から放たれた言葉は私の予想外のものだった。
「女が顔を出すな、この恥知らずが!!」
「え……?」
激高するアリオス殿下に対し私はぽかんした表情を返してしまう。
いや私だけでない、彼の取り巻きたちもだ。
だってアリオス殿下は今までは当たり前のようにエミアを学校でも召使のように扱っていたのだ。
料理や菓子の差し入れの為に婚約者をこのクラスまで毎回来させていた。エミアの記憶の中に残っている。
そういう扱いをされてきたからこそ公爵令嬢である私を取り巻きが「あんた」呼ばわりしたのだ。
男子の教室に女生徒は原則入室禁止である。生徒手帳にも書いてある。
だがそれを今まで平気で破らせていた側がルール違反を指摘し怒るのは。
「ぷっ、あははっ……」
滑稽すぎて思わず笑ってしまう。
アリオス殿下の取り巻きたちは化け物でも見るような目でこちらを見た。
ようやく笑いをおさめて怒り心頭の元婚約者にしずしずと頭を下げる。
「申し訳ございません、アリオス殿下。二度とこの教室に顔を出すことは致しませんのでお許しくださいませ」
そっちも私の教室に来たりするなよという願いを暗に込める。
彼の出方は大体わかった。人が変わったエミアの存在を取り巻きたちに知られたくないのだ。
エミアではない『私』に対して我儘に振る舞うことも威張り散らすことも彼はできない。
してもいいが私は絶対に反論するし言い負かすつもりもある。殿下もそのことはわかっている。
だから取り巻きたちから私を遠ざけようというのだ。自分のプライドを守る為に。
その子供のような卑小さと懸命さに今度は表情に出さず笑った。
しかしお互い言葉は交わさなかった。器用に私を避けて彼は廊下に出た。
当然のように私に教室内の視線は集中する。アリオス殿下の反応を見守ることにした。
眼鏡の生徒の進行方向など途中からわかっていた。そこから避けることも可能だった。
それをしなかったのはアリオス殿下が取り巻きに逃がすなと指示をしていたのを見たからだ。
義憤にかられたという程でもないが一国の王子の余りにも情けない行為の邪魔をしたくなったのだ。
ついでに校内で彼が婚約者でなくなった私をどう扱うかも興味があった。
「あんたは、アリオス殿下の……」
取り巻きの一人の台詞に私は呆れる。先程から思っていたが貴族の言葉遣いとは思えない。
発言内容も行動も幼稚すぎて高等学院の名が泣くだろう。
しかもその親玉が創立者と同じ王族だというのだから。
だが流石というべきか、殿下から放たれた言葉は私の予想外のものだった。
「女が顔を出すな、この恥知らずが!!」
「え……?」
激高するアリオス殿下に対し私はぽかんした表情を返してしまう。
いや私だけでない、彼の取り巻きたちもだ。
だってアリオス殿下は今までは当たり前のようにエミアを学校でも召使のように扱っていたのだ。
料理や菓子の差し入れの為に婚約者をこのクラスまで毎回来させていた。エミアの記憶の中に残っている。
そういう扱いをされてきたからこそ公爵令嬢である私を取り巻きが「あんた」呼ばわりしたのだ。
男子の教室に女生徒は原則入室禁止である。生徒手帳にも書いてある。
だがそれを今まで平気で破らせていた側がルール違反を指摘し怒るのは。
「ぷっ、あははっ……」
滑稽すぎて思わず笑ってしまう。
アリオス殿下の取り巻きたちは化け物でも見るような目でこちらを見た。
ようやく笑いをおさめて怒り心頭の元婚約者にしずしずと頭を下げる。
「申し訳ございません、アリオス殿下。二度とこの教室に顔を出すことは致しませんのでお許しくださいませ」
そっちも私の教室に来たりするなよという願いを暗に込める。
彼の出方は大体わかった。人が変わったエミアの存在を取り巻きたちに知られたくないのだ。
エミアではない『私』に対して我儘に振る舞うことも威張り散らすことも彼はできない。
してもいいが私は絶対に反論するし言い負かすつもりもある。殿下もそのことはわかっている。
だから取り巻きたちから私を遠ざけようというのだ。自分のプライドを守る為に。
その子供のような卑小さと懸命さに今度は表情に出さず笑った。
64
あなたにおすすめの小説
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる