前世の記憶を取り戻したら貴男が好きじゃなくなりました

砂礫レキ

文字の大きさ
70 / 74

六十九話 好戦的で大袈裟な姫君

 久しぶりに屋敷に帰ってきた弟と色々あったりしたが、私は取り合えず登校してみた。

 アルとロゼに会って話をしたくて堪らなかったのだ。

 しかし一週間寝たきりで目覚めた翌日すぐ学校という訳にはいかなかった。

 体力や食事の関係もあり元通り通学できるまで眠っていた期間も含め二週間程経ってしまった。

 そしてその間に学園内では一つの変化が起きていた。

 アリオス殿下の新しい婚約者、ルイーダ王女が留学生としてやってきたのである。

 随分と行動的な女性だなと思ったが、そもそも婚約にこぎつけるまでの過程を思い出し納得する。

 ルイーダ・エル・サマリア。艶やかで波打つ黒髪と濃く青い瞳はエキゾチックさを感じさせる美女だ。

 女性にしては長身で豊かな胸部は制服越しでもわかる。彼女は学生でありながら既に完成された美貌を持っていた。

 実際化粧が濃いのもあり年上にしか見えない。

 化粧については文化の違いもあるかもしれないが彼女が美人だという認識はこの国でも有効だ。

 ルイーダ王女がアリオス殿下の婚約者でなければ男子学生たちは血眼になって彼女を口説いていたかもしれない。

 しかし彼女はなりたてといえこの国の王子の婚約者で


「貴男がアリオス様の元婚約者?随分貧相な体をしているのね。しかも病弱だとか。そんな体では世継ぎを産むなんて無理ね」


 更に初対面かつ隣国の公爵令嬢である私に正面から喧嘩を売る程、厄介な性格をしていた。
 
 これはもしかしなくても、女性版アリオス殿下では?

 そんなことを思いながら私は教室の扉の前に立ち塞がる彼女を見つめる。

 二百年前なら邪魔だと蹴り飛ばしていただろうか。身分の高い相手だから単純に無視して踵を返していただろうか。

 私が対応に迷い無言でいる間にルイーダ王女は私を気弱な人間だと判断したようだった。


「勘違いしないで頂戴ね、私弱い者虐めをする趣味は無くてよ。ただ元婚約者様に挨拶をしようと思っただけなの」

「気が合いますね。私も弱い者虐めは嫌いです。挨拶も今頂けたものだけで結構ですわ」


 だからそこをさっさと退いて私を女子教室の中に入れて貰えないだろうか。

 私がそう思っているとルイーダ王女は大袈裟に自らの口元に手を当てて嘆いた。


「まあ、なんて刺々しい言葉遣い!……私はただシュタイト公爵令嬢に挨拶をしただけだというのに!!」

「姫様、どうされたのですか!」

「姫様、悲しまないでください!」


 王女本人の体に隠れてよく見えないが教室の中には彼女の従者が数人いるようだ。益々自分の席に辿り着くのが困難になる。

 お供がいる分だけ、ある意味アリオス殿下より悪質かもしれない。そんなことを考えていた罰が当たったのだろうか。

 急に背後から肩を掴まれる。


「やっと見つけたぞ、エミア・シュタイト……」


 振り返らなくても分かる。前の姫、後ろの王子。

 私の背後には怒りを露にしたアリオス殿下が立っていた。


---
第14回恋愛小説大賞 に参加しています。
宜しければ投票頂けると大変嬉しいです。
   

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 お飾りの「領主の妻」になったフォスティーヌは、クライブが別邸に伯爵令嬢ブリジットを囲って優雅に暮らしていることを知る。 それでも領主の妻としての仕事をこなし、本邸のわずか3人の使用人たちと打ち解け、街の人々と関わっていく。 一方、ブリジットの大きな嘘を知ったクライブは──。 *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *10万字弱で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開しています(加筆修正が入る場合もあります) *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。